『守護神』に魅入られた俺。実は最強の守護神だった!?

「⋯⋯守護神は守護神と。マスターはマスターと」

「ただマスターが突っ立って、守護神に全てを任せる。
   無力な生身の人間が何も出来ないからって、
    超越した存在である守護神に頼る」

「もし、お前が教えてくれなかったら⋯⋯俺はきっと、その人間だった」

魔力を込めた拳を、再び相手のマスターである男にぶつける

『グシャッ』

鈍い音が、鳴り響く。非現実的な爆発の音とは違い、
日常や暴力を振るう時に出てくる、ごく普通に鈍い音

だが、生身の人間である俺と男にとっては⋯⋯
    とても馴染みのある音だろう

「⋯⋯っが⋯⋯お、お前ぇ⋯⋯!」

「おいおい、どうした名も知らない男。
守護神に殴られるよか全然痛くねぇはずだぞ?」


「まぁ、そう言っても⋯⋯今の俺達には守護神から貰った魔力がある」

「応用するのはお前の方が早かったが⋯⋯理解は俺の方が早かったな」

「⋯⋯っち、蹴り⋯⋯拳だけじゃなく、足にも魔力を纏って⋯⋯!」

す、凄い⋯⋯まだー時間も経っていないのに、
もう今の状況を理解して、魔力の応用に転じている⋯⋯

⋯⋯やっぱり、私の魅入ったマスターであるあまねは⋯⋯凄い!

「さて、折角だしもっと殴ろうぜ。
てめぇの顔面の原型がなくなるまでやってやる」

「⋯⋯なめるなよ、小僧。お前が出来るという事は、
俺にも出来るということ。ー方的な攻撃にはならない」

「それになにより、俺の人生がやっと最高潮に達したんだ⋯⋯
そんな俺の邪魔をするなら、お前もお前の守護神も、死ね!」

刹那、男もあまねに向かって攻撃を仕掛ける。
互いに魔力を込めて攻撃しているものの、所詮生身の人間

しかも互いに本気でやり合っている⋯⋯
数分も経てば、体力の限界ですぐ威力は落ちてしまう

しかし、ミロクはその事を知っている。
そして相手の体力が消耗するまで機会を見計らった

ミロクは現在、透明な守護神。いわば爆発の守護神を
      逃さないように掴んでいる

無論、その爆発の守護神も抵抗はしているが⋯⋯
ミロクの超越した力により、剥がす事が出来なかった

「⋯⋯っと、マスターばっかり見てないで⋯⋯
  私も私で爆発の守護神と戦いますか」

見えない、けど当たっている感触はちゃんとある。
なんなら私の手を引き剥がそうとしている感触すら感じる

⋯⋯ならば、片手で逃さないように⋯⋯もう片手で、殴るのみ

⋯⋯ミロク⋯⋯!そうか、そのままずっとあのままじゃ、
 いつ爆発の守護神が変な事をし始めるか分からない

何かしらのアクションが起きれば、すぐにミロクは
俺を庇うように言ったが⋯⋯それでも不安要素はある

「⋯⋯ってことは、やっぱ⋯⋯マスターかつ生身の人間の
俺がこの正気を失っている男をどうにかするしかないか」

「正気を失っている?っはっはっは、何を言っている?」

「今の俺はごく自然な行動をとっているだけ⋯⋯ただそれのみ」

「正常な奴は、得た力と守護神をこんな早くに、
そしてそんなむやみやたらに能力を使わねぇよ」

「⋯⋯だよな、ミロク!」

「ええ、そうです!マスターが全て正しいです!」

「⋯⋯この、マスター全肯定の守護神が⋯⋯」

「⋯⋯あ?」

ミロクはー瞬で男に近づき、その場で攻撃した

その時、爆発の守護神はミロクから解放されたが⋯⋯
爆発を使う前に、自身のマスターに危機が迫っている状態

故に、時間のない中で爆発を起こせるはずもなく⋯⋯
そのままミロクの拳と自身のマスターである男の間に入る

「⋯⋯ミロク!爆発の守護神を逃したのか!?」

「あまね!大丈夫ちゃんと掴んでる!今度はさっきよりも強く!」

⋯⋯攻撃したあと、素早くその透明の守護神を掴んだ⋯⋯ということか

⋯⋯ミロクという守護神⋯⋯!コイツ、
俺が俺の守護神に防御されると分かって、
あえて逃がして俺の守護神に俺を防御させた⋯⋯!

そして、一気に突っ込んだ分の反動を乗せて⋯⋯
一気に攻撃をする。そうすることで、俺にも軽減されたとは言え
ダメージを与えつつ、俺の守護神にもダメージを与える

そして、先ほどの状況に再び戻る⋯⋯
俺は目の前にアイツと向き合い、
ミロクという守護神が俺の守護神を掴んでいる状態

あまね⋯⋯そう、コイツも大概だ。あまりにも、狂ってる

「⋯⋯お前ら⋯⋯あまねとミロク⋯⋯!異常者だ⋯⋯!」

「異常者だからなんだ?今の戦いにおいて、
異常かつ狂った方の行動を取ったら勝ちなんだよ」

「そりゃあ、守護神の居る世界が当たり前だったら⋯⋯
    今よりももっと良い戦い方が見つかって、
異常な行動よりも更にいい戦いっつ〜もんがあるんだろうな」

「だが、今はどうだ?守護神という存在が
この世界に降り立ってから、ー時間も経ってねぇ」

「全てが謎、守護神も最低限の情報しか持ってないときた」

「⋯⋯なら、とにかく模索。そして狂え、それが俺とミロク」

「⋯⋯マスターと守護神だ⋯⋯!」

あまねは、マスターにおいて才能があった。
しかもまだ、あまねにはポテンシャルが秘められている

同時に、マスターのあまねに魅入っている守護神、
ミロクもまた⋯⋯守護神の中でも、異質な存在だった

しかし、何が異質かは⋯⋯まだこの時、誰にも分からなかった

「⋯⋯そのまま俺は、相手のマスターをとにかく殴って蹴って、折る」

「ミロクはそのまま、その爆発の守護神を掴んだままで⋯⋯!」

「了解です、マスター!隙あらば、
あまねの加勢に入りながら支援します!」

「あぁ、頼んだ!」

「⋯⋯おいおい、なんだよお前ら⋯⋯そんなに」

「そんなに、俺と俺の守護神をいじめて⋯⋯
そして挙句の果てには、正義を語ろうとするのか!?」

「⋯⋯正義を語る⋯⋯?っは、それはお前の妄想だろ」

「それに⋯⋯こんな爆発を起こして、お前には正義を語る資格はない」

「俺とミロクは生きているが⋯⋯他のー般人はどうなった?」

「この周辺で暮らしていた人は、どうなった?答えてみろ」

「そ、そんなの⋯⋯守護神に選ばれなかっただけの、
   ただの運命から見放された奴だろう!」

「だから!俺の爆発でみんな、死んだ!」

「でも俺は選ばれた者!何も悪くない!」

「お前もう黙れよ」

あぁ、なるほどね⋯⋯だから、無暗に超越した力を
   ただの一般人が持っちゃいけねぇんだ

もし、持ってしまったら⋯⋯今、俺の目の前にいる
  正気を失っているコイツみたいになっちまう

超常的な力を持っていて、それ使えばやりたい事が出来るって
   なった時、踏みとどまるのは中々に難しいだろう

「⋯⋯っち、ここまで爆発の影響を受けているのか⋯⋯」

俺の家から、少し歩いた場所も⋯⋯アイツの守護神によって、
炎に包まれている。夜中なのもあって、逃げ遅れた人もいるだろう

救い出したいが⋯⋯コイツをどうにかしないと、
      更に被害が広がるー方だ

「⋯⋯警察や消防団には⋯⋯いや、他の人がやってくれるだろ」

今の俺は、言い方が悪いが他のー般人とは違う

この場所で、唯一⋯⋯コイツに対抗できる存在!

「⋯⋯っは、凄いな⋯⋯ー回でも誰か知らねぇ奴を殺せば、
     その次は全然抵抗がなくなってくる」

「きっと、これが⋯⋯犯罪者の再犯に関係してくるんだろうな」

「お前はもう、再犯とかじゃねぇ⋯⋯死刑だ」

「罪のないー般人を殺した。ー人や二人じゃない、
数十人が死んでる。このまま行けば三桁もありえる」

「⋯⋯だからこそ、俺が⋯⋯俺とミロクが止めなくちゃいけないんだ!」

「⋯⋯さっきも言ったはずだ⋯⋯なめるなよ小僧、と」

その次の瞬間だった、また男が俺に向かってくる

さっきの攻撃より、断然重い⋯⋯!きっと、
爆発の守護神からかなり魔力を貰っているのだろう

「⋯⋯っつ〜ことは、つまり、だ⋯⋯」

俺はミロクを見て、アイコンタクトを取る

「⋯⋯マスター、了解です⋯⋯!」

ミロクが一気に拳に力を込めて、掴んでいる透明の守護神を⋯⋯

⋯⋯思いっ切り、ぶん殴った⋯⋯

爆発の守護神は、その行動に驚いた。
なぜなら今度の攻撃は完全にミロクの手から逃げられる形

つまり、再び爆発の守護神がどこにいるか分からない。
 最初の状況に戻る、と。爆発の守護神はそう考えた

⋯⋯しかし、あまねとミロクの考えは⋯⋯
正気を失っている男と爆発の守護神より一枚上手だった

あまねは即座に、残された魔力で自身を覆い⋯⋯
ミロクはあまねに余った残りの魔力を回収した

「⋯⋯マスター⋯⋯あとはこの私に任せてください」

「もとより、私はマスターの守護神⋯⋯
もうこの戦いが終わるまではあまねはただ自分を守ってください」

「あぁ、任せたぜミロク⋯⋯もう、体力の限界だ⋯⋯」

俺はその場で、倒れそうになる⋯⋯が
その直前でミロクが俺の身体を支えて、その場に座らせた

「⋯⋯また、自身を守った⋯⋯?これじゃあ、
最初に始まった戦況と同じになるぞ?」

男はそう言っているが、爆発の守護神は焦っていた

なぜなら、今回の状況は最初と違い⋯⋯
圧倒的に爆発の守護神側が不利だったからだ

「⋯⋯あまねは、攻撃される箇所だけを重点的に魔力で守った。
 対してお前は魔力を常に使って、無駄に消耗させていた」

「⋯⋯もう、そっちに⋯⋯残された魔力は少ない、よね?」

魔力消耗、そしてその応用⋯⋯理解するのに時間がかかったが、
       それ以上のリターンが帰ってきた。
      状況も、解釈も、何もかもがプラスだ

「⋯⋯よし、それじゃあ⋯⋯守護神のミロク、命令だ」

そうして、あまねは⋯⋯自身の守護神であるミロクに命令した

「⋯⋯あの二人を⋯⋯殺せ」

「マスター⋯⋯了解です、二人まとめて地獄に送りますね」