「…⋯マスター、起きてください⋯⋯」

「⋯⋯うん⋯⋯ううん⋯⋯」

「あ、あともうちょっとだけ⋯⋯寝かせて⋯⋯」

 あれ俺一人暮らしだよな?

「⋯⋯え、誰⋯⋯?」

「私は⋯⋯マスターの守護神ですよ」

「⋯⋯守護神⋯⋯?」

「はい!マスターの守護神です!」

「俺がマスター?」

「私のマスターは貴方です!」

「なるほどサッパリ分からん」

「まぁ、最初は⋯⋯マスターのような反応をしますよ」

「まて、待て待て⋯⋯とりあえず、ー旦状況を整理してもいいか?」

「ええ、いいですよ⋯⋯私はマスターの守護神。
マスターの選択、決定権は全て私ではなくマスターなのですから」

⋯⋯これは一体、どうゆうことだ⋯⋯?

っていうかそもそもこれは夢か?現実か?

それに今、目の前にいる子は⋯⋯俺の選択が全て、
みたいな言い方をしていなかったか⋯⋯?

「⋯⋯えっと、まず⋯⋯君は⋯⋯?」

「私はマスターの守護神⋯⋯マスターの言う事は
なんでも聞きます。それが守護神なのですから」

「な、なんでもってことは⋯⋯奴隷、みたいな?」

「まぁ、そうですね⋯⋯ニュアンス的には合ってますけど」

「⋯⋯それで、俺が⋯⋯マスター⋯⋯???」

まだ上手く状況を呑み込めていない⋯⋯
あまりにもいきなりすぎるからだ

「そうです!私のマスターは貴方⋯⋯!」

「⋯⋯えっと、色々聞きたい事があるんだけど⋯⋯
     まず、自己紹介から⋯⋯?」

「ほ、ほら⋯⋯最初だし⋯⋯」

正直、聞きたい事は山ほどあった。
なんならまずなんで俺の家にこの子が居るのか。

「それもそうですね⋯⋯マスターの守護神である私の名は、ミロク」

「マスターのお好きなように呼んでくださいね⋯⋯?」

「えっと、じゃあ⋯⋯ミロク。俺の名前は黒神周だ⋯⋯
普通に、あまね、か⋯⋯マスター、どっちでも良い」

「じゃあ、お言葉に甘えて⋯⋯ここはあえて、あまね、と呼びますね」

「そ、そっか⋯⋯それで次に、マスターと守護神について⋯⋯いいか?」

マジでー番の謎はそこだ。とりあえず、
この子の事はなんとなく分かった

名前も、ミロクっていうのは分かった⋯⋯あとは、今さっき聞いたマスターと守護神について

「そうですね⋯⋯あ、今の時間いいですか?」

「え?ま、まぁ⋯⋯え〜っと」

暗い中、時計を確認する

「⋯⋯あ、とりあえず⋯⋯電気つけてもいいか?」

「全部マスターの自由ですので、いいですよ」

ミロクが承諾してくれたので、俺は電気を付ける

「っわ!明るい⋯⋯!意外と明るかった⋯⋯」

「あ、ごめんミロク⋯⋯大丈夫だった⋯⋯?」

「全然大丈夫ですよ⋯⋯っと、時間確認しました?」

「あぁ、そうだった⋯⋯えっと、今は⋯⋯
ちょうど日をまたいだぐらい?」

「えぇ、ですね⋯⋯ちょうど今日、色々な所に守護神が出現しました」

「⋯⋯あ、ミロク以外にも⋯⋯他の守護神が居るってことか?」

「⋯⋯すみません、私もそれもに詳しくは分からないのですが⋯⋯」

「とりあえず、私の持っている今ある情報を全て
マスターに⋯⋯あ。あまねにお伝えしますね⋯⋯!」

「⋯⋯えっと⋯⋯全然俺には敬語じゃなくてもいいからね⋯⋯?
そ、それに守護神だし⋯⋯神が付いているんだから、
逆に俺が敬語で喋らないといけない気が⋯⋯」

 「いえいえいえ!マスター⋯⋯!
そんなに自分を下げないでください!」

「立場的には、私よりマスターであるあまねの方が格段に上です!」

「⋯⋯あ、もちろん⋯⋯あまねが敬語をやめろ、という
命令を私に出したら、私はやめますけど⋯⋯」

「⋯⋯あ、いや⋯⋯本当にもう、敬語でもなんでもいいから。
   とにかくラフな感じで居てくれたら助かる⋯⋯」

「⋯⋯分かりました。それじゃあ⋯⋯
マスター、は少し堅苦しいので、普通にあまねって呼びますね」

「あ、あぁ⋯⋯助かる」

⋯⋯って、やばい⋯⋯全然本題に入れてない

未だに俺がこの状況を受け入れていないからだ⋯⋯
それに加えて、今さっき俺は起きたばっかり

まだ意識とかがちゃんと覚醒していないのもーつの理由かもしれない

「⋯⋯まず、守護神はマスター―人に対して基本的に―人。
今のあまねと私のような関係がほとんどです」

「次に、守護神は自分が魅入った人物をマスターとして認識します」

「⋯⋯え?じゃあミロクは俺に魅入って⋯⋯
俺をマスターにして、俺の守護神になった。そういうこと?」

「ええ、そういうことですよマスター!
だから私はあまねに対してとても友好的なんです!」

「な、なるほど⋯⋯でも急に、なんで⋯⋯どんな理由が⋯⋯」

ここは現実世界。能力だとかそういう非常識な事は通用しない

⋯⋯そう思っていた時期が、今さっきまで俺にもありました⋯⋯

「守護神には、それぞれの能力があって⋯⋯
例えば炎の能力。氷の能力⋯⋯他にも色々あります。」

「自分、もしくは自身のマスターの身体能力を上げる能力だったり⋯⋯
        本当に色々な能力を持っています」

「その言い方からして⋯⋯守護神はかなり居るのか⋯⋯?」

「ええ、そうですね⋯⋯でも、そんな世間には広がりませんよ」

「⋯⋯世間には広がらない⋯⋯?それはー体、どういう⋯⋯」

(ドォーン)

なんだ、このけたたましい爆音は⋯⋯!?

「⋯⋯っぐ、熱い⋯⋯マジで次から次に何だよ⋯⋯!」

「マスター!大丈夫ですか⋯⋯!?」

ミロクが俺を庇って、爆風から守ってくれた⋯⋯
不思議な力かは分からないが、何かに包まれていた

「⋯⋯恐らく、他の守護神の能力⋯⋯!
マスター!ここは危険ですのでー旦離れますよ!」

「わ、分かった⋯⋯!くっそ、まだ何も理解出来ちゃいねぇのに!」

それでも、今ある目の前の状況を信じるほかない⋯⋯
これも守護神の仕業って⋯⋯や、やばすぎるだろ⋯⋯

平凡な日常が壊れる音が、俺には聞こえた。
ー歩間違えれば、死ぬ。そう思った

「マスター!運動神経は良い方ですか!」

「え!?急に何⋯⋯!?い、いやまぁ普通よりは良いけど!」

「ではマスター!私の魔力を与えるのでそれを使ってください!」

「⋯⋯もう何がなんだか分からないけど⋯⋯分かった!」

刹那、あまねの身体をミロクが与えた魔力が包みだす

⋯⋯もう何がなんだか分からないが⋯⋯
ミロクから与えられた魔力。それが俺を包んでいる⋯⋯のか?

だけど、すごく身体が軽い⋯⋯運動神経も良くなった⋯⋯

あまねはダッシュで、その場から離れる⋯⋯
その時のあまねの走る速度は異常なほど早かった

「⋯⋯おいおい、ミロク⋯⋯俺いまめちゃめちゃ早いぞ⋯⋯!」

「そういうものなんです!とりあえず、マスター!
今はこの場から離れますよ⋯⋯!自分の命を守ってください!」

守護神であるミロクからそう言われ、
あまねとミロクは共にその場から離れる

⋯⋯そして、あまねは見る⋯⋯先刻まで、
自分が居た場所が燃え盛っている状況を

「⋯⋯おいおい、マジかよ⋯⋯これは本当に、現実なのか⋯⋯?」

ミロクから魔力を得ていなければ、逃げ遅れて即死⋯⋯
   その世界線もあったと考えると、悪寒がする

「⋯⋯もう守護神の能力を操るものが現れた⋯⋯
   あまね、気をつけてください⋯⋯」

「もしかしたら⋯⋯そのまま、他の守護神と戦うかもしれません」

「⋯⋯え?おいおい⋯⋯戦う、って⋯⋯戦うってなんだよ⋯⋯」

「この爆発を起こした守護神、加えてその守護神のマスター⋯⋯
     その二人と戦う可能性があるってことです」

「⋯⋯おいおいおい待てよミロク⋯⋯俺は戦えないぞ?」

「ミロクからもらった、魔力とやらがあったとしても⋯⋯
さすがにこの規模の出来事をしでかす奴らとは戦えねぇ」

怖気づいてしまうあまね、無理もない。
まだあまねがミロクに起こされて7分しか経っていない

加えて、現実とはあまりにもかけ離れた言葉の羅列。
しかし今の状況は理解より先に身体を動かさなければ、死

⋯⋯しかしここで、あまねの守護神であるミロクが笑う⋯⋯

「大丈夫ですよ、あまね⋯⋯いや、マスター」

「⋯⋯こういう時のための、守護神がいるんですから⋯⋯!」

「⋯⋯ミロクは戦える⋯⋯って、ことなのか?」

「ええ、戦えますよ⋯⋯マスターの指示により、私は働きます」

「そして、マスターを守るためなら命令に背いてまでも
  マスターの命の身を守る⋯⋯それが守護神です」

「⋯⋯今は逃げよう、ミロク⋯⋯」

何も理解していない状況で。
戦えると言っているミロクを前にしても

⋯⋯この、燃え盛った俺の家⋯⋯そして、
周りの家も燃え盛っているこの状況を見て⋯⋯戦う気力が起きねぇ

だったらまず、逃げてから冷静に状況や言葉の意味を理解する

「⋯⋯分かりました、マスター⋯⋯私はあまねの守護神。
ならばその命令に従うまでです」

「よ、よし!それじゃあ逃げるぞ⋯⋯!
俺にはまだミロクから貰った魔力はあるよな!?」

「ええ、ありますよ⋯⋯なのでそのまま
 この場から離れる事は出来ます!」

(ドォーン)

「⋯⋯って、思ってましたが⋯⋯マスター。
どうやら逃げるのは諦めた方が賢明だと思ます⋯⋯」

ミロクの言葉を聞いて、俺は後ろを見る。
そこに居たのは⋯⋯―人の、影

「⋯⋯あまね。今から私は戦います。⋯⋯ですが、
もしあまねが命の危機になったならば、すぐにあまねを守ります」

「⋯⋯すっげぇ!こんなに爆発でぐちゃぐちゃに
   出来るなんて⋯⋯サイコーだな!」

⋯⋯あれが、爆発を起こした守護神のマスター⋯⋯!
   見た目は完全に、若い男性って感じだ⋯⋯

「あれ?君⋯⋯っふ、守護神が見えるタイプの奴か⋯⋯」

「⋯⋯守護神が見えるタイプ⋯⋯?」

思えば、あいつに守護神らしき人物はどこにも見当たらない。
     少なくても俺は、あいつしか見えなかった

「守護神にはいろいろなタイプが居ます。
そして彼の守護神はきっと、私たちから見えない守護神なんでしょう」

「じゃあ、ミロクは俺意外の奴にも見えるってことか?」

「簡単に言えば、そうですね⋯⋯詳しい事は後から説明します」

「マスター⋯⋯いや、あまね。さっき私があげた魔力で、
自分の身を守ってください。自分を包む程度で十分です」

「わ、分かった⋯⋯!出来る限り、自分を守る」

「こいつ等も、俺と同じか⋯⋯でも俺の邪魔をするなら」

「⋯⋯今、この場で⋯⋯殺すしかないよなぁ⋯⋯?」

次の瞬間、爆発を起こした男の手に⋯⋯小さな火花が飛び交う

「⋯⋯また、爆発を⋯⋯!そうはさせない!」

⋯⋯あまりにも、ミロクの動きは早かった⋯⋯
漫画とか、アニメでしか見たことのない速さ

「⋯⋯ミロク!無理だけはするな!俺はまだ、
 ミロクの実力だとかは全然分からないけど」

「無理だけは、絶対にするな!これは命令だ⋯⋯!」

あまねは、ミロクは強さに感心しながらもミロクの心配をする

「⋯⋯分かりました、マスター⋯⋯!」

「⋯⋯目で追えないぐらいの速さだったが⋯⋯
  俺の守護神が勝手に守ってくれたぞ?」

⋯⋯相手の守護神が見えないから、
どこにいるのかが分からない⋯⋯!

だけど、爆発の能力だというのは分かる⋯⋯
そしてこの男は目的も何もない、ただのテロ行為!

早急に対処をしなければ、他の人にも被害が⋯⋯!

「せっかく、このつまらない人生を盛り上げてくれる
守護神や能力を手に入れたんだ⋯⋯!奪われるものか!!」

「⋯⋯っく、このままじゃまずい⋯⋯!」

「⋯⋯マスター!全力でジャンプして⋯⋯!!!」

俺が発動した爆発が炸裂したが、
同時にミロクが地面を思いきり殴り、
砕かれた地面が飛び交い、爆発の威力を防いだ

「⋯⋯マスター⋯⋯!怪我はありませんか⋯⋯?」

「あ、あぁ⋯⋯所々爆発のかけらが当たって
血が出てるが⋯⋯守護神やら能力やら、爆発やらの
  状況の方が凄すぎて全然痛くねぇぜ⋯⋯」

きっと、あまりにも非現実的な起きすぎて
今の俺の体内でアドレナリンがドバドバ出ているからだろう

でも、俺が守護神⋯⋯ミロクの強さも分かってきた。
   相手も爆発の守護神でかなり化け物だが

ミロクも、地面を割って爆発の威力を軽減⋯⋯?という、
    超越した力を持っていることが分かった

「⋯⋯っは、強引にでも⋯⋯脳を切り替えないとな⋯⋯」

「マスター!マスターはそのまま、魔力で自分の身を⋯⋯!
まだ何も分かっていない状態ではあまりにも危険ですので!」

「あ、あぁ⋯⋯分かった、ミロク」

「⋯⋯爆発の守護神である、あいつは⋯⋯任せた⋯⋯!」

「⋯⋯はっはっはっ、お前らも大概だな。
 俺と同じで、超越した力を持っている」

「まぁ、そのほとんどは⋯⋯守護神の力のおかげ、か」

ゆっくりと、こちらに近づく男⋯⋯まだ何も分からないが、
   そのまま野放しにするのはあまりにも危険すぎる

それに⋯⋯今の俺には、守護神であるミロクがいる⋯⋯!

⋯⋯爆発の守護神⋯⋯かなり厄介だけども、
まずはそのマスターであるあの男をどうにかしない限りは⋯⋯

⋯⋯あくまで、俺から見た感じではあるが⋯⋯
 多分ミロクは最強の守護神だと俺は思う

そして…⋯相手の爆発の守護神もまぁまぁ強い

でも、姿が見えない⋯⋯それがミロクが手こずっている原因

「⋯⋯って、さっきまでずっと驚いていた自分が
こんなに簡単にこの状況に適応してしまうなんてな⋯⋯」

「あまね、そっちの方がかえって好都合ですから⋯⋯
むしろ速攻で今の状況を理解した者が勝つ、それぐらい重要です」

「まだ守護神が、魅入ったマスターについてから
     全然時間が経ってない今」

「⋯⋯一刻も早く、今の状況を理解したものが⋯⋯勝ちます」

「⋯⋯折角、手に入れた力なんだ⋯⋯
今までのつまらない人生全て吹き飛ばすぐらいの力なんだ⋯⋯!」

「そんな力を持って⋯⋯簡単に死ねるわけ無いだろ⋯⋯!」

「私たちの他に、守護神を持つマスターらしき存在はいない⋯⋯
    いや、そもそももう死んでいる可能性すらある」

「他の目撃情報がないとするならば⋯⋯
 少しだけ実力を出してもいい、か」

「マスター!もう少し魔力をマスターにあげます⋯⋯
ここからはさっきよりも激しい戦いになると思いますので」

「⋯⋯あぁ、今の俺は⋯⋯自分の事を守り、
出来る限りミロクの邪魔をしない⋯⋯それでいいか?」

「⋯⋯さすがは私が魅入った存在⋯⋯あまね⋯⋯」

「お前らを殺して、俺はもっと最高な人生にするんだ⋯⋯!」

「そうはさせない⋯⋯絶対に、私たちが勝つ⋯⋯!」