蓮の屋敷・寝室(深夜)
ジジジ……。
庭の方から、寝苦しい夜を煽るような虫の声。
帝都の夏は、湿気が多くて重い。
ベッドの上。
和装の寝間着姿の沙羅は、不快感で目を覚ました。
沙羅(独白)「……暑い。ダメ、息が苦しい……」
ただでさえ平熱が37.5度と高い沙羅にとって、この猛暑は拷問に近い。
隣には、蓮が静かな寝息を立てている。
沙羅(独白)「私がこんなに熱かったら、蓮さんまで起きちゃう……」
少しでも距離を取ろうと、ベッドの端へ逃げようとした、その時。
スッ。
ひんやりとした腕が、沙羅の腰帯に伸びてきた。
蓮「……どこへ行く?」
沙羅「あ……蓮さん、起こしちゃいましたか?」
蓮「沙羅が隣にいないと、寒い」
蓮は寝ぼけた声で呟くと、沙羅を、背後からするりと抱き寄せた。
とぷん、と冷たい水に浸かったような感覚。
元死神である蓮の体温は、人間になった今でも異様に低い。
火照った沙羅の背中に、蓮の冷たい胸板が密着する。
沙羅「ひゃうっ……!」
あまりの冷たさに、沙羅の口から声が漏れる。
沙羅「だ、ダメです蓮さん。私、汗だくで……」
蓮「……ん」
蓮は答えず、沙羅のうなじに自分の額をぺたりと押し当てた。
汗ばんだ沙羅の首筋に、氷のような蓮の肌が触れる。
沙羅「……ぁ……」
蓮「熱くなってる」
蓮がくすりと笑う気配が、背中に伝わる。
彼は半身を起こすと、沙羅を仰向けにさせた。
月明かりの中、汗に濡れて乱れた浴衣の寝間着姿の沙羅を、涼しげな瞳で見下ろす。
(ゆ、浴衣の胸元、乱れてない、かな)
蓮「冬の間は、俺が君に温めてもらった。……夏は、俺が返す番だろう?」
沙羅「か、返さなくて、いい……」
蓮「俺の最愛は、奥ゆかしいな」
蓮の顔が近づく。
蓮の唇が、沙羅の汗ばんだ首筋――熱を持った頸動脈に、そっと落とされる。
ジュワッ……。
もう、音はしないはずなのに、皮膚の奥で熱が弾けた気がした。
熱帯夜の気だるさと、冷たい唇の感触。
相反する刺激が、沙羅を痺れさせる。
沙羅「つめた、い……っ」
蓮「いい子だ。……じっとしてろ。足先から唇まで、全身愛して、冷やしてやる」
ジジジ……。
庭の方から、寝苦しい夜を煽るような虫の声。
帝都の夏は、湿気が多くて重い。
ベッドの上。
和装の寝間着姿の沙羅は、不快感で目を覚ました。
沙羅(独白)「……暑い。ダメ、息が苦しい……」
ただでさえ平熱が37.5度と高い沙羅にとって、この猛暑は拷問に近い。
隣には、蓮が静かな寝息を立てている。
沙羅(独白)「私がこんなに熱かったら、蓮さんまで起きちゃう……」
少しでも距離を取ろうと、ベッドの端へ逃げようとした、その時。
スッ。
ひんやりとした腕が、沙羅の腰帯に伸びてきた。
蓮「……どこへ行く?」
沙羅「あ……蓮さん、起こしちゃいましたか?」
蓮「沙羅が隣にいないと、寒い」
蓮は寝ぼけた声で呟くと、沙羅を、背後からするりと抱き寄せた。
とぷん、と冷たい水に浸かったような感覚。
元死神である蓮の体温は、人間になった今でも異様に低い。
火照った沙羅の背中に、蓮の冷たい胸板が密着する。
沙羅「ひゃうっ……!」
あまりの冷たさに、沙羅の口から声が漏れる。
沙羅「だ、ダメです蓮さん。私、汗だくで……」
蓮「……ん」
蓮は答えず、沙羅のうなじに自分の額をぺたりと押し当てた。
汗ばんだ沙羅の首筋に、氷のような蓮の肌が触れる。
沙羅「……ぁ……」
蓮「熱くなってる」
蓮がくすりと笑う気配が、背中に伝わる。
彼は半身を起こすと、沙羅を仰向けにさせた。
月明かりの中、汗に濡れて乱れた浴衣の寝間着姿の沙羅を、涼しげな瞳で見下ろす。
(ゆ、浴衣の胸元、乱れてない、かな)
蓮「冬の間は、俺が君に温めてもらった。……夏は、俺が返す番だろう?」
沙羅「か、返さなくて、いい……」
蓮「俺の最愛は、奥ゆかしいな」
蓮の顔が近づく。
蓮の唇が、沙羅の汗ばんだ首筋――熱を持った頸動脈に、そっと落とされる。
ジュワッ……。
もう、音はしないはずなのに、皮膚の奥で熱が弾けた気がした。
熱帯夜の気だるさと、冷たい唇の感触。
相反する刺激が、沙羅を痺れさせる。
沙羅「つめた、い……っ」
蓮「いい子だ。……じっとしてろ。足先から唇まで、全身愛して、冷やしてやる」
