真帆さんが店を退店してから、一週間程が経った。
秋の深まりを感じる季節。
商店街の街路樹が、少しずつ色づき始めている。
朝晩は肌寒くなり、店に来るお客さんもカーディガンやジャケットを羽織るようになった。
私は今日も変わらず、「桐の香」のカウンターに立っている。
でも、一週間前の私とは、少し違う。
お客さんが来ると、以前よりも積極的に声をかけるようになった。
「何かお探しですか?」
「どんな香りがお好きですか?」
そんな、ささやかな言葉。
たったそれだけのことなのに、私にとっては大きな変化だった。
真帆さんとの出会いが、私を動かした。
人の話を聞くこと。
相手に寄り添うこと。
それが、どれだけ大切か。私は、ようやく気づき始めていた。
「和花、最近いい顔してるね」
誠一郎さんが、店の奥から顔を出してそう言った。
私は少し照れくさくて、笑って誤魔化した。
「そうですか?」
「ああ。客と話す時の君の表情が、柔らかくなった」
誠一郎さんは穏やかに笑った。
「それでいいんだ。それが、君らしい接客だよ」
その言葉が、胸に温かく染みた。
私らしい接客……か。
まだ、それが何なのか完全には分からない。
でも、少しずつ、見つけていけたらいい。
◇
土曜日の午後。
店は比較的混んでいた。
週末は、ふらっと立ち寄るお客さんが増える。
若いカップルや、友達同士の女性たち。
中には、一人で香りを選びに来る男性もいる。
カウンターで接客しながら、私は店内の様子を見渡した。
窓から差し込む秋の日差しが、棚に並ぶ精油の瓶を照らしている。
琥珀色、淡い黄色、透明……光を通して、瓶たちがキラキラと輝いている。
店の奥のカフェスペースでは、一人の女性が本を読みながらハーブティーを飲んでいた。
ラベンダーティー。彼女のお気に入りだ。
混んでいて店内がにぎわっていても、穏やかな時間が流れている。
こういう瞬間が、私は好きだった。
その時、カランカランとドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
私は顔を上げて、笑顔で迎えた。
入ってきたのは、若いカップルだった。
男性は20代半ば、黒縁メガネをかけた知的な雰囲気。
少し緊張した様子で、店内を見回している。
女性も同じくらいの年齢で、ショートカットが似合う活発そうな人。
彼女は男性の腕を掴んで、嬉しそうに店内を見ている。
二人は手を繋いでいた。
仲の良いカップル、という印象だった。
でも、どこか――少しだけ、不安げな表情も見える。
「ねえ、ここ素敵なお店じゃない?香りもいいし!」
女性が明るく言った。
「本当だ。すごくいい香りがするね」
男性も頷いている。
二人はしばらく店内を見て回った後、私のところに来た。
「あの、すみません」
女性が声をかけてきた。
「はい、何かお探しですか?」
「カップルで使える香りって、ありますか?」
女性は少し照れたように笑った。
カップルで使える香り?
私は少し考えた。
「お二人で同じ香りを、ということですか?」
「はい」
女性は頷いた。
「私たち、遠距離恋愛をしていて。なかなか会えなくて」
その言葉に、私は少しハッとした。
遠距離恋愛……。
会いたい時に会える距離にいない。
不安と寂しさで押しつぶされそうになる時もあるのだろう。
「同じ香りを持っていたら、離れていても繋がれる気がして」
女性の声に、ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。
隣の男性も静かに頷いた。
「お互いを感じられる、そんな香りがあれば」
二人の表情を見て、私は何かを感じた。
彼らは、お互いを大切に思っている。
でも、離れている時間が、二人を不安にさせている。
その気持ち、少しだけ分かる気がした。
「分かりました。一緒に探しましょう。お二人の香りを」
私の言葉に二人の顔が、パッと明るくなった。
◇
私は彼らを、カフェスペースに案内した。
「よかったら、まず少しお話を聞かせてもらえますか?」
二人は顔を見合わせて、頷いた。
私は彼らにハーブティーを出した。
今日もカモミールティーは心を落ち着かせる香りを漂わせている。
「お名前、聞いてもいいですか?私は柚木和花と申します」
「あ、私は小林彩花です」
彩花さんは明るく答えた後、隣の男性の方を見る。
「こっちは、高橋翔太」
「よろしくお願いします」
翔太さんが少し恥ずかしそうに頭を下げた。
「よろしくお願いします。さっそくですが、お二人は、どれくらい遠距離なんですか?」
「私が大阪で、翔太が東京です。新幹線で二時間半くらいかな」
「月に一回、会えたらいい方です」
彩花さんの言葉に、翔太さんが少し寂しそうに続けて言った。
「そうなんですね」
私が頷くと、彩花さんがカップに視線を落とした。
「最近、すれ違いが多くて」
「すれ違い……?」
「はい。メッセージのタイミングも合わないし、電話してもお互い疲れてて、ちゃんと話せなくて」
彩花さんの声が、少し沈んだ。
翔太さんも身を乗り出して必死な表情で続ける。
「会えない時間が長いと、不安になるんです」
「このまま、気持ちが離れていくんじゃないかって」
二人の表情には、確かに不安が浮かんでいた。
でも同時に、お互いを見つめる目には、深い愛情も感じられた。
私は少し考えて、言った。
「……お二人とも、ちゃんとお互いのこと、大切に思ってますね」
私の言葉に二人はきょとんとした。
「え?」
「だって……」
私は微笑んだ。
「こうやって一緒に香りを探しに来てくれています。それって、繋がりたいって思ってるからですよね」
彩花さんが少し顔を赤らめた。
「そう、ですね」
「気持ちが離れてるわけじゃない。ただ、物理的に離れてるだけ。……だから、不安になるのは当然です。でも、お二人の絆は、ちゃんとそこにあります」
翔太さんが、ほっとしたような表情を見せた。
「そう言ってもらえると、少し安心します」
「じゃあ、大丈夫です。お二人の絆を、香りで繋ぎましょう」
そう言って、私は微笑んだ。
◇
私たちは香りの棚の前に立った。
色とりどりの小瓶が並んでいて、それぞれに、異なる香りが秘められている。
「まず、お二人に知ってほしいことがあります」
私は話し始めた。
「香りって、記憶や感情と深く結びついているんです」
二人は静かに聞いていた。
「だから、同じ香りを嗅ぐことで、同じ気持ちを共有できる。離れていても、その香りを嗅げば、お互いを思い出せる……つまり香りが、二人を繋いでくれるんです」
彩花さんが目を輝かせた。
「素敵ですね」
「はい、私もそう思います。それでは、お二人にぴったりの香りを探しましょう」
私は最初の瓶を手に取った。
「まず、これを」
私はローズマリーの瓶を開けた。
清々しい、少しスッとする香り。
「ローズマリーは、『記憶のハーブ』って呼ばれています」
「記憶?」
翔太さんが首を傾げた。
「はい。昔から、大切な人や約束を忘れないために使われてきたんです」
私は説明を続けた。
「古代ギリシャでは、学生たちが試験の時に頭にローズマリーを巻いたそうです。記憶力を高めるために。……それに、中世ヨーロッパでは、結婚式で新郎新婦がローズマリーを身につけて、永遠の愛を誓ったそうです」
「わあ……っ!ロマンチック」
彩花さんが嬉しそうに目を輝かせた。
「だから、お二人にぴったりだと思います。離れていても、この香りで約束を忘れない。そんな香りです。ぜひ、嗅いでみてください」
私は瓶を差し出した。
彩花さんが先に嗅いで、それから翔太さんに渡す。
「爽やかですね」
「少しスッとする感じ。でも、嫌じゃない」
二人は顔を見合わせて、頷いた。
「そうですか。では、次は、これを」
私はオレンジスイートの瓶を開けた。
甘く、温かい香りが広がる。
「オレンジスイート。これは、温かさと絆を象徴する香りです」
「絆……」
彩花さんが呟いた。
「はい。家族や恋人との繋がりを感じさせてくれる香りなんです」
先ほどと同じように、私は瓶を差し出した。
二人が香りを嗅ぐ。
「これもいい香り!」
彩花さんが笑顔になった。
「温かくて、優しい」
翔太さんも頷いた。
「なんだか、ほっとする香りです」
「そうでしょう?」
私は微笑んだ。
「では最後に、これを。ラベンダーです」
私はラベンダーの瓶を開けた。
柔らかく、優しい香り。
「ラベンダーって……よく聞く香りですよね」
彩花さんが言った。
「そうですね。すごく有名な香りです。実は、ラベンダーという名前は、ラテン語の『洗う』という言葉が由来なんです」
「洗う?」
「はい。古代ローマでは、公衆浴場でラベンダーを使って、心と体を清めていたそうですよ」
「そうなんですね!奥が深いんですね」
「ラベンダーなんて身近に思ってたけど、そんな歴史があったとは……」
彩花さんの反応に、翔太さんも意外そうな表情で頷きながら同調する。
二人の反応を見ながら、私も笑顔で頷き説明を続けた。
「だから、ラベンダーは心を洗い流して、リラックスさせてくれる香りなんです。……不安な時、寂しい時に、この香りを嗅ぐと、心が安らぐんです」
二人が嗅いで、また顔を見合わせた。
「いい香り!」
「うん、そうかも。この香り、俺も好き」
彩花さんが嬉しそうに言うと、翔太さんも同調して頷く。
「じゃあ、この三つでブレンドを作りましょう。お二人だけの香りを」
私はそう提案すると、二人は同時に頷いた。
秋の深まりを感じる季節。
商店街の街路樹が、少しずつ色づき始めている。
朝晩は肌寒くなり、店に来るお客さんもカーディガンやジャケットを羽織るようになった。
私は今日も変わらず、「桐の香」のカウンターに立っている。
でも、一週間前の私とは、少し違う。
お客さんが来ると、以前よりも積極的に声をかけるようになった。
「何かお探しですか?」
「どんな香りがお好きですか?」
そんな、ささやかな言葉。
たったそれだけのことなのに、私にとっては大きな変化だった。
真帆さんとの出会いが、私を動かした。
人の話を聞くこと。
相手に寄り添うこと。
それが、どれだけ大切か。私は、ようやく気づき始めていた。
「和花、最近いい顔してるね」
誠一郎さんが、店の奥から顔を出してそう言った。
私は少し照れくさくて、笑って誤魔化した。
「そうですか?」
「ああ。客と話す時の君の表情が、柔らかくなった」
誠一郎さんは穏やかに笑った。
「それでいいんだ。それが、君らしい接客だよ」
その言葉が、胸に温かく染みた。
私らしい接客……か。
まだ、それが何なのか完全には分からない。
でも、少しずつ、見つけていけたらいい。
◇
土曜日の午後。
店は比較的混んでいた。
週末は、ふらっと立ち寄るお客さんが増える。
若いカップルや、友達同士の女性たち。
中には、一人で香りを選びに来る男性もいる。
カウンターで接客しながら、私は店内の様子を見渡した。
窓から差し込む秋の日差しが、棚に並ぶ精油の瓶を照らしている。
琥珀色、淡い黄色、透明……光を通して、瓶たちがキラキラと輝いている。
店の奥のカフェスペースでは、一人の女性が本を読みながらハーブティーを飲んでいた。
ラベンダーティー。彼女のお気に入りだ。
混んでいて店内がにぎわっていても、穏やかな時間が流れている。
こういう瞬間が、私は好きだった。
その時、カランカランとドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
私は顔を上げて、笑顔で迎えた。
入ってきたのは、若いカップルだった。
男性は20代半ば、黒縁メガネをかけた知的な雰囲気。
少し緊張した様子で、店内を見回している。
女性も同じくらいの年齢で、ショートカットが似合う活発そうな人。
彼女は男性の腕を掴んで、嬉しそうに店内を見ている。
二人は手を繋いでいた。
仲の良いカップル、という印象だった。
でも、どこか――少しだけ、不安げな表情も見える。
「ねえ、ここ素敵なお店じゃない?香りもいいし!」
女性が明るく言った。
「本当だ。すごくいい香りがするね」
男性も頷いている。
二人はしばらく店内を見て回った後、私のところに来た。
「あの、すみません」
女性が声をかけてきた。
「はい、何かお探しですか?」
「カップルで使える香りって、ありますか?」
女性は少し照れたように笑った。
カップルで使える香り?
私は少し考えた。
「お二人で同じ香りを、ということですか?」
「はい」
女性は頷いた。
「私たち、遠距離恋愛をしていて。なかなか会えなくて」
その言葉に、私は少しハッとした。
遠距離恋愛……。
会いたい時に会える距離にいない。
不安と寂しさで押しつぶされそうになる時もあるのだろう。
「同じ香りを持っていたら、離れていても繋がれる気がして」
女性の声に、ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。
隣の男性も静かに頷いた。
「お互いを感じられる、そんな香りがあれば」
二人の表情を見て、私は何かを感じた。
彼らは、お互いを大切に思っている。
でも、離れている時間が、二人を不安にさせている。
その気持ち、少しだけ分かる気がした。
「分かりました。一緒に探しましょう。お二人の香りを」
私の言葉に二人の顔が、パッと明るくなった。
◇
私は彼らを、カフェスペースに案内した。
「よかったら、まず少しお話を聞かせてもらえますか?」
二人は顔を見合わせて、頷いた。
私は彼らにハーブティーを出した。
今日もカモミールティーは心を落ち着かせる香りを漂わせている。
「お名前、聞いてもいいですか?私は柚木和花と申します」
「あ、私は小林彩花です」
彩花さんは明るく答えた後、隣の男性の方を見る。
「こっちは、高橋翔太」
「よろしくお願いします」
翔太さんが少し恥ずかしそうに頭を下げた。
「よろしくお願いします。さっそくですが、お二人は、どれくらい遠距離なんですか?」
「私が大阪で、翔太が東京です。新幹線で二時間半くらいかな」
「月に一回、会えたらいい方です」
彩花さんの言葉に、翔太さんが少し寂しそうに続けて言った。
「そうなんですね」
私が頷くと、彩花さんがカップに視線を落とした。
「最近、すれ違いが多くて」
「すれ違い……?」
「はい。メッセージのタイミングも合わないし、電話してもお互い疲れてて、ちゃんと話せなくて」
彩花さんの声が、少し沈んだ。
翔太さんも身を乗り出して必死な表情で続ける。
「会えない時間が長いと、不安になるんです」
「このまま、気持ちが離れていくんじゃないかって」
二人の表情には、確かに不安が浮かんでいた。
でも同時に、お互いを見つめる目には、深い愛情も感じられた。
私は少し考えて、言った。
「……お二人とも、ちゃんとお互いのこと、大切に思ってますね」
私の言葉に二人はきょとんとした。
「え?」
「だって……」
私は微笑んだ。
「こうやって一緒に香りを探しに来てくれています。それって、繋がりたいって思ってるからですよね」
彩花さんが少し顔を赤らめた。
「そう、ですね」
「気持ちが離れてるわけじゃない。ただ、物理的に離れてるだけ。……だから、不安になるのは当然です。でも、お二人の絆は、ちゃんとそこにあります」
翔太さんが、ほっとしたような表情を見せた。
「そう言ってもらえると、少し安心します」
「じゃあ、大丈夫です。お二人の絆を、香りで繋ぎましょう」
そう言って、私は微笑んだ。
◇
私たちは香りの棚の前に立った。
色とりどりの小瓶が並んでいて、それぞれに、異なる香りが秘められている。
「まず、お二人に知ってほしいことがあります」
私は話し始めた。
「香りって、記憶や感情と深く結びついているんです」
二人は静かに聞いていた。
「だから、同じ香りを嗅ぐことで、同じ気持ちを共有できる。離れていても、その香りを嗅げば、お互いを思い出せる……つまり香りが、二人を繋いでくれるんです」
彩花さんが目を輝かせた。
「素敵ですね」
「はい、私もそう思います。それでは、お二人にぴったりの香りを探しましょう」
私は最初の瓶を手に取った。
「まず、これを」
私はローズマリーの瓶を開けた。
清々しい、少しスッとする香り。
「ローズマリーは、『記憶のハーブ』って呼ばれています」
「記憶?」
翔太さんが首を傾げた。
「はい。昔から、大切な人や約束を忘れないために使われてきたんです」
私は説明を続けた。
「古代ギリシャでは、学生たちが試験の時に頭にローズマリーを巻いたそうです。記憶力を高めるために。……それに、中世ヨーロッパでは、結婚式で新郎新婦がローズマリーを身につけて、永遠の愛を誓ったそうです」
「わあ……っ!ロマンチック」
彩花さんが嬉しそうに目を輝かせた。
「だから、お二人にぴったりだと思います。離れていても、この香りで約束を忘れない。そんな香りです。ぜひ、嗅いでみてください」
私は瓶を差し出した。
彩花さんが先に嗅いで、それから翔太さんに渡す。
「爽やかですね」
「少しスッとする感じ。でも、嫌じゃない」
二人は顔を見合わせて、頷いた。
「そうですか。では、次は、これを」
私はオレンジスイートの瓶を開けた。
甘く、温かい香りが広がる。
「オレンジスイート。これは、温かさと絆を象徴する香りです」
「絆……」
彩花さんが呟いた。
「はい。家族や恋人との繋がりを感じさせてくれる香りなんです」
先ほどと同じように、私は瓶を差し出した。
二人が香りを嗅ぐ。
「これもいい香り!」
彩花さんが笑顔になった。
「温かくて、優しい」
翔太さんも頷いた。
「なんだか、ほっとする香りです」
「そうでしょう?」
私は微笑んだ。
「では最後に、これを。ラベンダーです」
私はラベンダーの瓶を開けた。
柔らかく、優しい香り。
「ラベンダーって……よく聞く香りですよね」
彩花さんが言った。
「そうですね。すごく有名な香りです。実は、ラベンダーという名前は、ラテン語の『洗う』という言葉が由来なんです」
「洗う?」
「はい。古代ローマでは、公衆浴場でラベンダーを使って、心と体を清めていたそうですよ」
「そうなんですね!奥が深いんですね」
「ラベンダーなんて身近に思ってたけど、そんな歴史があったとは……」
彩花さんの反応に、翔太さんも意外そうな表情で頷きながら同調する。
二人の反応を見ながら、私も笑顔で頷き説明を続けた。
「だから、ラベンダーは心を洗い流して、リラックスさせてくれる香りなんです。……不安な時、寂しい時に、この香りを嗅ぐと、心が安らぐんです」
二人が嗅いで、また顔を見合わせた。
「いい香り!」
「うん、そうかも。この香り、俺も好き」
彩花さんが嬉しそうに言うと、翔太さんも同調して頷く。
「じゃあ、この三つでブレンドを作りましょう。お二人だけの香りを」
私はそう提案すると、二人は同時に頷いた。

