◇
夜、蓮さんが迎えに来てくれた。
「和花さん、お疲れさま」
「お疲れさまです」
私は笑顔で答えた。
「今日は特別な日だね」
「はい」
私たちは、誠一郎さんと三人で、近くのレストランに向かった。
雪が積もった商店街を歩く。
真っ白な世界が、街灯の光を受けて輝いている。
「綺麗ですね」
私は呟いた。
「うん、綺麗だね」
蓮さんが答えた。
◇
レストランで、私たちは楽しい時間を過ごした。
誠一郎さんが昔話をして、蓮さんがツッコミを入れて、私が笑う。
そんな、温かい時間。
食事が終わった後、誠一郎さんが言った。
「僕は先に帰るよ。君たち、ゆっくりしておいで」
「え、でも…」
「いいから、いいから」
誠一郎さんは優しく笑った。
「メリークリスマス」
そう言って、彼は店を出ていった。
私と蓮さんだけが、残された。
「おじいちゃん、気を使ってくれたみたいだね」
蓮さんが照れたように笑った。
「そうですね」
私も笑った。
少し沈黙が流れた。
「和花さん」
蓮さんが口を開いた。
「今日、何かあった?」
その言葉に、私は少し驚いた。
「え?」
「なんか、表情が違う気がして」
蓮さんは言った。
「悲しいとか、辛いとかじゃなくて。なんていうか…吹っ切れたような」
その言葉を聞いて、私は少しだけ驚いた。
やっぱり、蓮さんは気づいてくれるんだ。
「…実は」
私は少し迷った後、話し始めた。
「今日、大学時代の先輩に会ったんです」
「先輩?」
「はい。私が、香りで傷つけてしまった人」
私は、瀬川さんのことを話した。
あの日のこと。
4年間引きずってきたこと。
そして、今日、ようやく和解できたこと。
蓮さんは、静かに聞いていてくれた。
「…そっか」
話し終わった後、蓮さんが言った。
「良かったね、和花さん」
「はい」
私は笑顔で答えた。
「もう、大丈夫です」
それを聞いて、蓮さんは優しく笑った。
「和花さん、本当に強くなったね」
その言葉を聞いて、私の胸が温かくなった。
少し沈黙が流れた後、蓮さんが真剣な表情を向けてきた。
「俺、和花さんのこと…好きなんだ」
その言葉を聞いて、私の心臓が止まりそうになった。
「ずっと、好きだった」
蓮さんは続けた。
「でも、和花さんは過去のことで苦しんでて。だから、言えなかった。和花さんが前を向けるまで、待とうって思ってた」
その言葉を聞いて、私の目に涙が浮かんだ。
「蓮さん…」
「和花さんは?」
蓮さんが尋ねた。
「俺のこと、どう思ってる?」
私は少し迷った。
でも、もう逃げない。
「私も…好きです」
その言葉を口にした瞬間、涙がこぼれた。
「蓮さんのこと、好きです」
蓮さんは優しく笑った。
「良かった」
彼は私の手を取った。
温かい手。
その温もりが、心に染みた。
「これから、よろしくね」
「はい」
私は笑顔で答えた。
レストランを出ようとした時、蓮さんが言った。
「ねえ、和花さん」
「はい?」
「店に寄ってもいい?」
その言葉に、私は少し驚いた。
「え?今から?」
「うん。和花さんに、渡したいものがあるんだ」
蓮さんは少し照れたように笑った。
「クリスマスプレゼント」
私の胸が、高鳴った。
◇
私たちは「桐の香」に戻った。
鍵を開けて、店の中に入る。
暖房は切れていて、少し冷たい空気が漂っている。で
も、木の温もりと、かすかに残る香りが、私たちを優しく包んでくれた。
「ちょっと待ってて」
蓮さんは店の奥に向かった。
私は入口で待ちながら、胸の高鳴りを抑えようとした。
クリスマスプレゼント。
蓮さんが、私に何を?
しばらくして、蓮さんが戻ってきた。
彼の手には、何も持っていなかった。
「あの…」
私が尋ねかけると、蓮さんが言った。
「和花さんのための香りを、作りたいんだ」
その言葉に、私は息を呑んだ。
「私の…香り?」
「うん」
蓮さんは頷いた。
「和花さんは、いつも他の人のために香りを選んでる。でも、和花さん自身の香りは?」
蓮さんは優しく笑った。
「俺が、和花さんのために選びたい。和花さんを表す、特別な香りを」
その言葉を聞いて、私の目に涙が浮かんだ。
「蓮さん…」
「手伝ってくれる?」
蓮さんが手を差し伸べた。
私はその手を取った。
「はい」
◇
私たちは香りの棚の前に立った。
色とりどりの小瓶が並んでいる。
それぞれに、異なる物語が秘められている。
「まず」
蓮さんが言った。
「俺が思う、和花さんらしい香りを選んでみるね」
彼は棚の前を歩きながら、一つ一つの瓶を見ていく。
その真剣な表情が、私の胸を温かくした。
やがて、蓮さんが最初の瓶を手に取った。
「ラベンダー」
彼は瓶の蓋を開けた。
優しく、柔らかな香りが広がる。
「和花さんって、人を癒す力があると思うんだ」
蓮さんは私を見た。
「お客さんの話を聞いて、寄り添って、心を軽くしてあげる。それって、ラベンダーみたいだなって」
私は少し照れながら、香りを嗅いだ。
確かに、ラベンダーは心を落ち着かせてくれる香り。
「ありがとうございます」
私は小さく言った。
「次は、これ」
蓮さんはベルガモットの瓶を開けた。
明るく、爽やかな柑橘系の香りが広がる。
「和花さんの笑顔って、すごく明るいんだ」
蓮さんは続けた。
「最初は不安そうだったけど、今は自信を持って笑える……その笑顔が、周りを明るくする。ベルガモットみたいに」
その言葉を聞いて、私の胸が熱くなった。
蓮さんは、そんな風に見てくれていたんだ。
「最後に、これ」
蓮さんはローズの瓶を手に取った。
蓋を開けると、甘く、優雅な香りが広がった。
「和花さんって、強いんだ」
蓮さんは真剣な表情で言った。
「過去のトラウマがあっても、逃げずに向き合った。そして、乗り越えた。その強さと優しさ、美しさ。それが、ローズみたいだなって」
私の目から、涙がこぼれた。
「蓮さん…」
「泣かないで」
蓮さんは優しく笑った。
「これから、和花さんの香りを作るんだから」
私は涙を拭いて、頷いた。
夜、蓮さんが迎えに来てくれた。
「和花さん、お疲れさま」
「お疲れさまです」
私は笑顔で答えた。
「今日は特別な日だね」
「はい」
私たちは、誠一郎さんと三人で、近くのレストランに向かった。
雪が積もった商店街を歩く。
真っ白な世界が、街灯の光を受けて輝いている。
「綺麗ですね」
私は呟いた。
「うん、綺麗だね」
蓮さんが答えた。
◇
レストランで、私たちは楽しい時間を過ごした。
誠一郎さんが昔話をして、蓮さんがツッコミを入れて、私が笑う。
そんな、温かい時間。
食事が終わった後、誠一郎さんが言った。
「僕は先に帰るよ。君たち、ゆっくりしておいで」
「え、でも…」
「いいから、いいから」
誠一郎さんは優しく笑った。
「メリークリスマス」
そう言って、彼は店を出ていった。
私と蓮さんだけが、残された。
「おじいちゃん、気を使ってくれたみたいだね」
蓮さんが照れたように笑った。
「そうですね」
私も笑った。
少し沈黙が流れた。
「和花さん」
蓮さんが口を開いた。
「今日、何かあった?」
その言葉に、私は少し驚いた。
「え?」
「なんか、表情が違う気がして」
蓮さんは言った。
「悲しいとか、辛いとかじゃなくて。なんていうか…吹っ切れたような」
その言葉を聞いて、私は少しだけ驚いた。
やっぱり、蓮さんは気づいてくれるんだ。
「…実は」
私は少し迷った後、話し始めた。
「今日、大学時代の先輩に会ったんです」
「先輩?」
「はい。私が、香りで傷つけてしまった人」
私は、瀬川さんのことを話した。
あの日のこと。
4年間引きずってきたこと。
そして、今日、ようやく和解できたこと。
蓮さんは、静かに聞いていてくれた。
「…そっか」
話し終わった後、蓮さんが言った。
「良かったね、和花さん」
「はい」
私は笑顔で答えた。
「もう、大丈夫です」
それを聞いて、蓮さんは優しく笑った。
「和花さん、本当に強くなったね」
その言葉を聞いて、私の胸が温かくなった。
少し沈黙が流れた後、蓮さんが真剣な表情を向けてきた。
「俺、和花さんのこと…好きなんだ」
その言葉を聞いて、私の心臓が止まりそうになった。
「ずっと、好きだった」
蓮さんは続けた。
「でも、和花さんは過去のことで苦しんでて。だから、言えなかった。和花さんが前を向けるまで、待とうって思ってた」
その言葉を聞いて、私の目に涙が浮かんだ。
「蓮さん…」
「和花さんは?」
蓮さんが尋ねた。
「俺のこと、どう思ってる?」
私は少し迷った。
でも、もう逃げない。
「私も…好きです」
その言葉を口にした瞬間、涙がこぼれた。
「蓮さんのこと、好きです」
蓮さんは優しく笑った。
「良かった」
彼は私の手を取った。
温かい手。
その温もりが、心に染みた。
「これから、よろしくね」
「はい」
私は笑顔で答えた。
レストランを出ようとした時、蓮さんが言った。
「ねえ、和花さん」
「はい?」
「店に寄ってもいい?」
その言葉に、私は少し驚いた。
「え?今から?」
「うん。和花さんに、渡したいものがあるんだ」
蓮さんは少し照れたように笑った。
「クリスマスプレゼント」
私の胸が、高鳴った。
◇
私たちは「桐の香」に戻った。
鍵を開けて、店の中に入る。
暖房は切れていて、少し冷たい空気が漂っている。で
も、木の温もりと、かすかに残る香りが、私たちを優しく包んでくれた。
「ちょっと待ってて」
蓮さんは店の奥に向かった。
私は入口で待ちながら、胸の高鳴りを抑えようとした。
クリスマスプレゼント。
蓮さんが、私に何を?
しばらくして、蓮さんが戻ってきた。
彼の手には、何も持っていなかった。
「あの…」
私が尋ねかけると、蓮さんが言った。
「和花さんのための香りを、作りたいんだ」
その言葉に、私は息を呑んだ。
「私の…香り?」
「うん」
蓮さんは頷いた。
「和花さんは、いつも他の人のために香りを選んでる。でも、和花さん自身の香りは?」
蓮さんは優しく笑った。
「俺が、和花さんのために選びたい。和花さんを表す、特別な香りを」
その言葉を聞いて、私の目に涙が浮かんだ。
「蓮さん…」
「手伝ってくれる?」
蓮さんが手を差し伸べた。
私はその手を取った。
「はい」
◇
私たちは香りの棚の前に立った。
色とりどりの小瓶が並んでいる。
それぞれに、異なる物語が秘められている。
「まず」
蓮さんが言った。
「俺が思う、和花さんらしい香りを選んでみるね」
彼は棚の前を歩きながら、一つ一つの瓶を見ていく。
その真剣な表情が、私の胸を温かくした。
やがて、蓮さんが最初の瓶を手に取った。
「ラベンダー」
彼は瓶の蓋を開けた。
優しく、柔らかな香りが広がる。
「和花さんって、人を癒す力があると思うんだ」
蓮さんは私を見た。
「お客さんの話を聞いて、寄り添って、心を軽くしてあげる。それって、ラベンダーみたいだなって」
私は少し照れながら、香りを嗅いだ。
確かに、ラベンダーは心を落ち着かせてくれる香り。
「ありがとうございます」
私は小さく言った。
「次は、これ」
蓮さんはベルガモットの瓶を開けた。
明るく、爽やかな柑橘系の香りが広がる。
「和花さんの笑顔って、すごく明るいんだ」
蓮さんは続けた。
「最初は不安そうだったけど、今は自信を持って笑える……その笑顔が、周りを明るくする。ベルガモットみたいに」
その言葉を聞いて、私の胸が熱くなった。
蓮さんは、そんな風に見てくれていたんだ。
「最後に、これ」
蓮さんはローズの瓶を手に取った。
蓋を開けると、甘く、優雅な香りが広がった。
「和花さんって、強いんだ」
蓮さんは真剣な表情で言った。
「過去のトラウマがあっても、逃げずに向き合った。そして、乗り越えた。その強さと優しさ、美しさ。それが、ローズみたいだなって」
私の目から、涙がこぼれた。
「蓮さん…」
「泣かないで」
蓮さんは優しく笑った。
「これから、和花さんの香りを作るんだから」
私は涙を拭いて、頷いた。

