◇
その日の夕方、店が少し落ち着いた頃。
私は店の奥で、精油の在庫を確認していた。
一つ一つの瓶を手に取り、残量をチェックする。
この作業は、心を落ち着かせてくれる。
ジャスミン、イランイラン、ベルガモット。
今日、春菜さんに使った香りたち。
私は、ジャスミンの瓶を手に取った。
勇気の香り。
新しい恋への香り。
蓋を開けて、深く香りを嗅ぐ。
甘く、力強い香りが、鼻腔を満たす。
――新しい恋、か。
私にも、来るのだろうか。
蓮さんへの気持ち。
それが、恋なのだろうか。
まだ、はっきりとは分からない。
でも、確実に、彼への想いは大きくなっている。
それだけは、確かだった。
カランカラン。
ドアベルが鳴った。
私は瓶を棚に戻して、店の前に出た。
「いらっしゃい…」
言葉が、途中で止まった。
そこに立っていたのは、蓮さんだった。
「和花さん、今、大丈夫?」
蓮さんは少し照れたように笑った。
「あ、はい」
私は少し慌てて答えた。
「昨日、楽しかったから。また、少し話したくて」
その言葉に、私の心臓が跳ねた。
また、話したくて。
そう言ってくれることが、嬉しかった。
「はい、大丈夫です」
私は笑顔で答えた。
蓮さんは店の奥のカフェスペースに座った。
私はハーブティーを淹れて、彼の前に置いた。
オレンジとカモミールのブレンド。温かくて、優しい香り。
「ありがとう」
蓮さんはカップを手に取った。
「今日も、お客さんがいたみたいだね」
「はい。新しい恋に踏み出せない方が来られて」
私は言った。
「過去に傷ついて、もう一度恋をするのが怖いって」
蓮さんは静かに聞いていた。
「でも、最後は、勇気を出すって決められました」
「そうなんだ」
蓮さんは微笑んだ。
「和花さんの言葉が、背中を押したんだろうね」
その言葉を聞いて、私は少し考えた。
春菜さんに言った言葉。
『幸せになるチャンスを逃してしまう』
それは、私自身にも当てはまる。
蓮さんへの気持ち。
それと、ちゃんと向き合わないと。
でも、まだ怖い。
まだ、準備ができていない。
「和花さん?」
蓮さんが心配そうに声をかけた。
「あ、すみません。ぼーっとしてました」
私は慌てて笑顔を作った。
「大丈夫?疲れてる?」
「いえ、大丈夫です」
蓮さんは少し心配そうに私を見ていたが、それ以上は何も聞かなかった。
その優しさが、ありがたかった。
私たちは、しばらく他愛もない話をした。
蓮さんの仕事のこと、店のこと、最近の出来事。
そんな、何でもない会話。
でも、それが、とても心地よかった。
◇
その夜、店を閉めた後。
私は一人、ジャスミンの瓶を手に取った。
勇気の香り。
新しい恋の香り。
蓋を開けて、深く香りを嗅ぐ。
甘く、力強い香りが、心を包んでくれる。
――勇気を出すこと。
春菜さんは、勇気を出した。
結衣さんも、勇気を出した。
じゃあ、私は?
私も、いつか、勇気を出さなければならない。
蓮さんへの気持ちと、向き合わなければならない。
まだ、今じゃない。
でも、いつか。
そう遠くない未来に。
窓の外を見る。
冬の夜空に、星が冷たく輝いている。
風が吹いて、街路樹が揺れている。
私は瓶を棚に戻して、深呼吸した。
勇気を出すこと。
それが、私の次の課題。
少しずつでいい。
でも、確実に。
その時が来るまで、準備をしておこう。
その日の夕方、店が少し落ち着いた頃。
私は店の奥で、精油の在庫を確認していた。
一つ一つの瓶を手に取り、残量をチェックする。
この作業は、心を落ち着かせてくれる。
ジャスミン、イランイラン、ベルガモット。
今日、春菜さんに使った香りたち。
私は、ジャスミンの瓶を手に取った。
勇気の香り。
新しい恋への香り。
蓋を開けて、深く香りを嗅ぐ。
甘く、力強い香りが、鼻腔を満たす。
――新しい恋、か。
私にも、来るのだろうか。
蓮さんへの気持ち。
それが、恋なのだろうか。
まだ、はっきりとは分からない。
でも、確実に、彼への想いは大きくなっている。
それだけは、確かだった。
カランカラン。
ドアベルが鳴った。
私は瓶を棚に戻して、店の前に出た。
「いらっしゃい…」
言葉が、途中で止まった。
そこに立っていたのは、蓮さんだった。
「和花さん、今、大丈夫?」
蓮さんは少し照れたように笑った。
「あ、はい」
私は少し慌てて答えた。
「昨日、楽しかったから。また、少し話したくて」
その言葉に、私の心臓が跳ねた。
また、話したくて。
そう言ってくれることが、嬉しかった。
「はい、大丈夫です」
私は笑顔で答えた。
蓮さんは店の奥のカフェスペースに座った。
私はハーブティーを淹れて、彼の前に置いた。
オレンジとカモミールのブレンド。温かくて、優しい香り。
「ありがとう」
蓮さんはカップを手に取った。
「今日も、お客さんがいたみたいだね」
「はい。新しい恋に踏み出せない方が来られて」
私は言った。
「過去に傷ついて、もう一度恋をするのが怖いって」
蓮さんは静かに聞いていた。
「でも、最後は、勇気を出すって決められました」
「そうなんだ」
蓮さんは微笑んだ。
「和花さんの言葉が、背中を押したんだろうね」
その言葉を聞いて、私は少し考えた。
春菜さんに言った言葉。
『幸せになるチャンスを逃してしまう』
それは、私自身にも当てはまる。
蓮さんへの気持ち。
それと、ちゃんと向き合わないと。
でも、まだ怖い。
まだ、準備ができていない。
「和花さん?」
蓮さんが心配そうに声をかけた。
「あ、すみません。ぼーっとしてました」
私は慌てて笑顔を作った。
「大丈夫?疲れてる?」
「いえ、大丈夫です」
蓮さんは少し心配そうに私を見ていたが、それ以上は何も聞かなかった。
その優しさが、ありがたかった。
私たちは、しばらく他愛もない話をした。
蓮さんの仕事のこと、店のこと、最近の出来事。
そんな、何でもない会話。
でも、それが、とても心地よかった。
◇
その夜、店を閉めた後。
私は一人、ジャスミンの瓶を手に取った。
勇気の香り。
新しい恋の香り。
蓋を開けて、深く香りを嗅ぐ。
甘く、力強い香りが、心を包んでくれる。
――勇気を出すこと。
春菜さんは、勇気を出した。
結衣さんも、勇気を出した。
じゃあ、私は?
私も、いつか、勇気を出さなければならない。
蓮さんへの気持ちと、向き合わなければならない。
まだ、今じゃない。
でも、いつか。
そう遠くない未来に。
窓の外を見る。
冬の夜空に、星が冷たく輝いている。
風が吹いて、街路樹が揺れている。
私は瓶を棚に戻して、深呼吸した。
勇気を出すこと。
それが、私の次の課題。
少しずつでいい。
でも、確実に。
その時が来るまで、準備をしておこう。

