「鬼の親玉の登場だ。慌てるなよ魅躯。冷静に身体を撃ち抜くんだ」

「まかせてよ、玲司。全弾命中させる!」

 玲司たちは彼女にも弾丸を撃ち込んだ。弾丸は正確に女性の急所に命中した。
 しかし、彼女は何事もなかったかのように、二人に近付いてきた。

「それがどうした!」

 女性が腕を振りかざし、鋭い爪で玲司の身体を狙う。

「危ない!」

 咄嗟に魅躯が玲司を庇った。
 魅躯はそのままアオに腹を貫かれてしまった。

「魅躯!」

「私はいいから、あなたはこいつを倒すことに集中して!」

「くっ! こいつ、対魔の銃が効かないだと! 他の鬼とは違うのか!」

「お前たちは、また私から仲間を奪った! 許さない! 絶対に許さないよ!」

 おぞましいほどの殺気を放ちながら、再度玲司におそいかかるアオ。
 
「くっ、これはどうだ!!」

 玲司が咄嗟に爆弾のようなものをアオに投げつける。

 次の瞬間、周囲に強烈な光と爆音が響き渡る。
 
「ちっ、人間ごときが、ふざけた真似をして!!」

 玲司は対魔用の閃光弾を使い、彼女の視界と聴力を一時的に奪うことに成功した。その隙に魅躯をアオから引き離した玲司は、対魔の銃のエレメントチャンバーに火のエレメントカプセルを込めた。

 そして、炎を纏った弾丸を、アオに向かって撃った。

 アオは炎に弱いらしく、弾丸を受けたアオは苦しみ出した。

「人間どもが、調子に乗るなよ!!」

 怒り狂ったアオは、本来の鬼の姿へと変貌した。正体を現したアオが、玲司に襲いかかる。

 鬼になったアオは予想以上に素早く、玲司は彼女の攻撃に反応することが出来なかった。

 アオは玲司の右腕に噛みつき、そのまま食いちぎってしまった。

「ぐああああああっ!」

「さあて、次は左腕だ! その身体、全て食い尽くしてくれる!」

「玲司、離れて!!」

 その時、アオの背後から焼夷弾が飛んできて、アオの背中に直撃した。
 魅躯は、アオが炎の弾丸に苦しんでいたのを、見逃さなかった。炎がアオに有効だと気付いた魅躯が、最後の力を振り絞って、アオに向けて投げつけたのだ。

 そのまま、アオの身体は激しく燃え上がった。

「がああああああっ!」

 苦しみながらもがくアオ。

「今よ、玲司! 早く逃げて!」

「魅躯、お前も一緒に!」

「私はもう助からないわ! あなただけでも、早く!」

「くっ! すまない魅躯!」

 玲司は無我夢中で、洞窟の方へ走った。

「人間ごときに、ここまで深傷を負わされるとはな。とりあえず、この女を喰って、身体を再生させなくては……」

 アオは動かなくなった魅躯の身体を、貪るように食べ始めた。

 洞窟から出てきた玲司は血まみれで、重傷を負っていた。
 玲司はすぐに村人から手当を受けたが、この時の傷が原因で、後に玲司は亡くなっている。
 
 しかし、玲司は、彼の手帳に洞窟の奥で起きた出来事を詳細に記録していた。