「大丈夫かい?」
女性は優しく私に話しかけてくる。
「うん、なんとか。でもお姉さん、どうして私を助けてくれたの?」
「私はね、とにかく人間って奴らが大嫌いなんだ。だから、鬼の君が、あの穢らわしい人間どもに襲われているのが耐えられなくてね。君を助けずにはいられなかったのさ」
白面の女性がケラケラと笑った。
「ねえ、君はあの人間たちに復讐したいかい?」
私は小さくうなづいた。
「そうか。君の眼からは、本気で人間を憎む強い意志を感じる。それならば、奴らに復讐できるように、私が君に不死の力を授けよう」
私を助けてくれたお姉さんは、鱗のついている乾燥した肉を私に手渡してくれた。
「これは、とある人魚の肉なんだ。この肉を食べれば、君は大体あと二十年後に身体の成長が止まる。しかし、その代わりに君は不老不死の能力を手に入れて、永遠の時を手に入れることが出来るんだ。今の君なら、迷いはしないだろう?」
私は、彼女の問いに小さくうなづいた。そして、躊躇することなく、人魚の肉に齧り付いた。
その様子を見た、白面の女性は、またケラケラと笑った。
「それでいい、これで、君は不老不死になれるはずだ。これからはその不死の力を使って、君自身の手で、人間たちに復讐するといい。私の大嫌いな人間どもに復讐するのが、私への一番の恩返しだと思ってくれ」
私は、今度は力強くうなづいた。
「次は、私の血を飲ませてあげよう。私の血はね、その血を飲んだものに、私と同じ鬼の力を目覚めさせることができるんだ。今後、君の血を同じように人間に飲ませれば、その人間を鬼に変えることができる。それで、君の仲間を増やすといい」
白い仮面の女性は、指を噛んで血を流すと、私に飲ませてくれた。
「それと、この青い花の種を君にあげよう。君が気に入った土地を見つけたら、この種を植えるといい。きっと君の助けになるはずだ」
「あなたは、あなたは誰なんですか?」
私は、白い仮面の女性に尋ねた。
「私かい? 私は君たち鬼の始祖の一人だよ。わかりやすく言えば、君の御先祖さまだ」
「私たちの御先祖さまだったのですね。助けてくれて、ありがとうございました」
「ほう、きちんとお礼が出来るのか。偉いね君は。最後に一つだけ忠告しておこう。この先、君の作る集落に、両性具有のものが生まれたら、必ず殺せ。私たち鬼にとって、禍をもたらす存在となるからね。これはあの忌々しい光圀が、私たちの一族を滅ぼすためにかけた呪いなのだ。いいかい、生まれたら必ず殺すんだよ」
「わかりました。約束します」
その返答を聞いた白面の女性は、またケラケラと笑うと、いつの間にか私の前から姿を消していた。
白い仮面の女性と別れた私は、あてもなく走り続けた。
そして、目の前に現れた洞窟へと逃げ込んだ。
その洞窟の奥には、崖に囲まれた平原が広がっていた。
(ここなら、人間に見つからずに、生き延びることが出来るかもしれない)
私は、ここに自分たちの里を作ることを決めた。
はじめに、私は白い仮面の女性からもらった青い花の種を平原の中央に植えた。
そして、洞窟の近くの村へ赴くと、自分と年の近い子供を攫い、私の血を飲ませることで鬼に変えて、少しずつ仲間を増やしていった。
いつか自分たちを裏切った人間たちに復讐するために。
青い花が平原一面に咲き誇るようになった。
その頃には、この平原に集落が出来ていた。
そして私は、この集落の長となった。
女性は優しく私に話しかけてくる。
「うん、なんとか。でもお姉さん、どうして私を助けてくれたの?」
「私はね、とにかく人間って奴らが大嫌いなんだ。だから、鬼の君が、あの穢らわしい人間どもに襲われているのが耐えられなくてね。君を助けずにはいられなかったのさ」
白面の女性がケラケラと笑った。
「ねえ、君はあの人間たちに復讐したいかい?」
私は小さくうなづいた。
「そうか。君の眼からは、本気で人間を憎む強い意志を感じる。それならば、奴らに復讐できるように、私が君に不死の力を授けよう」
私を助けてくれたお姉さんは、鱗のついている乾燥した肉を私に手渡してくれた。
「これは、とある人魚の肉なんだ。この肉を食べれば、君は大体あと二十年後に身体の成長が止まる。しかし、その代わりに君は不老不死の能力を手に入れて、永遠の時を手に入れることが出来るんだ。今の君なら、迷いはしないだろう?」
私は、彼女の問いに小さくうなづいた。そして、躊躇することなく、人魚の肉に齧り付いた。
その様子を見た、白面の女性は、またケラケラと笑った。
「それでいい、これで、君は不老不死になれるはずだ。これからはその不死の力を使って、君自身の手で、人間たちに復讐するといい。私の大嫌いな人間どもに復讐するのが、私への一番の恩返しだと思ってくれ」
私は、今度は力強くうなづいた。
「次は、私の血を飲ませてあげよう。私の血はね、その血を飲んだものに、私と同じ鬼の力を目覚めさせることができるんだ。今後、君の血を同じように人間に飲ませれば、その人間を鬼に変えることができる。それで、君の仲間を増やすといい」
白い仮面の女性は、指を噛んで血を流すと、私に飲ませてくれた。
「それと、この青い花の種を君にあげよう。君が気に入った土地を見つけたら、この種を植えるといい。きっと君の助けになるはずだ」
「あなたは、あなたは誰なんですか?」
私は、白い仮面の女性に尋ねた。
「私かい? 私は君たち鬼の始祖の一人だよ。わかりやすく言えば、君の御先祖さまだ」
「私たちの御先祖さまだったのですね。助けてくれて、ありがとうございました」
「ほう、きちんとお礼が出来るのか。偉いね君は。最後に一つだけ忠告しておこう。この先、君の作る集落に、両性具有のものが生まれたら、必ず殺せ。私たち鬼にとって、禍をもたらす存在となるからね。これはあの忌々しい光圀が、私たちの一族を滅ぼすためにかけた呪いなのだ。いいかい、生まれたら必ず殺すんだよ」
「わかりました。約束します」
その返答を聞いた白面の女性は、またケラケラと笑うと、いつの間にか私の前から姿を消していた。
白い仮面の女性と別れた私は、あてもなく走り続けた。
そして、目の前に現れた洞窟へと逃げ込んだ。
その洞窟の奥には、崖に囲まれた平原が広がっていた。
(ここなら、人間に見つからずに、生き延びることが出来るかもしれない)
私は、ここに自分たちの里を作ることを決めた。
はじめに、私は白い仮面の女性からもらった青い花の種を平原の中央に植えた。
そして、洞窟の近くの村へ赴くと、自分と年の近い子供を攫い、私の血を飲ませることで鬼に変えて、少しずつ仲間を増やしていった。
いつか自分たちを裏切った人間たちに復讐するために。
青い花が平原一面に咲き誇るようになった。
その頃には、この平原に集落が出来ていた。
そして私は、この集落の長となった。



