――サクラたちが鉱山近くの村に到着する少し前。
 
 村の中央にある広場で、村の長が三人のオーガの女性と交渉していた。彼女たちの、女性とは思えない巨躯で筋骨隆々な見た目は、まさに鬼と呼ぶにふさわしいものだ。

「お前たちの要求を呑めば、この村を見逃してくれるのだな?」

 村長は恐怖を抑え込みながら、彼女たちに確認をする。

「そうよ。私たちはわざわざ翻訳魔法を使ってあなたとお話してあげてるんだから、感謝しなさい」

「――わかった。では、そちらの条件を聞こう」

「この村の子供たちを全て私たちに差し出してもらうわ」

「なんだと!」

 予想外の要求を出されたことで、淡々と話していた村長は思わず叫び、表情に怒りが現れた。

「私たちの身体は魔素っていう毒に侵されてるの。だから、この世界の若い子供を使って、毒の影響を受けていない子孫を残そうっていうのが、私たちのボスの考えなのよ」

 オーガたちは腕を前で組みながら、村長を脅すように、鋭い目つきで彼を見つめている。

「そんな要求が呑めると思っているのか!」

「呑めなければ、この村にいる人間を全員殺すことになるけど、それでもいいのかしら?」

「ふざけるな! 子供を犠牲にして生きたい親などいるものか!」

「残念ねえ。せっかくあなたたちに生きるチャンスをあげたっていうのに……」

「子供たちは、この村の未来そのものなんだ。何物にも代え難い、この村の宝なのだ。だから、お前たちのような鬼になど、渡すものか!」

「……仕方ないわねえ。それじゃあ、望み通りに殺してあげるわ」

 これ以上、村長と話しても解決しないと悟ったオーガは、風の魔法で高速回転する円盤状の刃を作りだして、村長の首をきれいに切り落とした。一瞬の出来事に、周りにいた村の大人たちは、何が起きたのかしばらく理解できなかった。次の瞬間、彼らの首も切り落とされて、次々と地面へ転がっていった。

「ふふ、苦しまないように風の刃できれいに首を落としてあげたわ。優しいでしょ、私」

 魔法を唱えたオーガは転げ落ちた首を見つめながら、不敵に笑っている。

「ディアナ、パメラ。とりあえず、子供以外はさっさと殺してしまいましょう」

 三人のオーガの中で最年長のジルが他の二人に提案する。彼女たちはジル、ディアナ、パメラの三姉妹だ。

「ねえ、ジル姉さん。かわいい子がいたら、私がもらってもいいでしょ?」

 三女のパメラがニヤニヤしながら問いかける。

「そうねえ。どうせ何人か私たちがもらっても上の連中にはわからないし、いいんじゃないかしら?」

「やったー。それじゃあ、早いとこ大人たちをぶっ殺して、かわいい子を見つけないとねえー」

 オーガたちは村中を移動しながら、風の魔法で大人たちの首を切り落として、子供たちを捕らえていった。