ライナスが時の秘石を使ったことで、この日本も異界の門が開く前まで時間が巻き戻っていた。

 いつもと同じように任務をこなすサクラの目の前に、見たことのないからくりの弓矢が現れる。

「なんだこれは? 私の記憶の中にある、クロスボウという武器に似ているのようだが――。誰かが忍術で私の元へ転送したのか?」
 
 突然武器が出てきたことを不審に思いながらも、その弓矢に触れるサクラ。次の瞬間、カイトとの旅の記憶が頭の中に蘇ってくる。

 魔導騎士たちに襲撃された街での出会い。蜘蛛女のアリアを倒し、カイトと共に協力して勝利することができたオーガの三姉妹や人造人間との戦い。最後に、時の秘石を完成させて、時間を巻き戻したこと。

「……ああそうだ。私、あなたと一緒にこの世界を救ったんだった」

 カイトの顔を思い出し、涙が溢れ出すサクラ。ライナスが転送したクナイを受け取ったカイトも、同じようにサクラのことを思い出しているだろう。

「ありがとうカイト。今、会いに行くからね」

 涙を拭ったサクラは、静かに印を結ぶ。

「忍法――舞揚羽の術!」

 サクラの背後で、蝶の羽の形をした虹色のチャクラがはためいている。空を舞う揚羽蝶のように、サクラの姿は上空へと舞い上がった。

 月明かりが、サクラの身体を優しく照らしている。

 そのまま彼女は、カイトのいる村へと向かって、ゆっくりと飛んでいった。