*
「いつケーキ作るの?」
洗濯物を取り込んだ後、リビングのコタツに入ってカップラーメンをすすっていると、白猫がまとわりついてくる。
「ねえ、いつ作るの?」
今やっと夕飯を食べているというのに、白猫は俺の都合なんて全く考えない。
「夕食ぐらいゆっくり食べさせろ」
「え、おやつじゃなくて、夜ご飯だったの!」
コタツの上に飛び乗った白猫が俺を見下ろす。ピンと上に伸びたカギ尻尾が白猫の驚きを表現しているようだった。
「彰、全然野菜がないじゃない。野菜もちゃんと食べな。それにカップラーメンばかり食べていたら体壊すわよ。私がいなくなってから、こんな偏った食事ばっかりなの?」
小言が完全に母さんだ。あー鬱陶しい。
俺はテレビのリモコンを掴み、バラエティー番組にチャンネルを合わせボリュームを上げた。
「彰、聞いてる?」
白猫は苛立ったような声で聞いてくるが、無視してカップラーメンをかき込んだ。スープも全部飲んで、空になったカップラーメンの容器を置くと、白猫はあちゃーと言わんばかりに前脚で自分の額を触っていた。
「野菜食べなさい。冷蔵庫に何かあるでしょ? 私が取ってくる」
コタツから飛び降りた白猫がキッチンに行こうとするのを阻止する為に後ろ脚を掴んだ。
白猫が顔だけでこっちを振り向く。
「せっかく片付けたのにまた汚すつもりか?」
「だって」
そう言った白猫のお腹がキューと鳴る。
「あら、お腹減ってるのね」
白猫は他人ごとのようにそう言うと、体ごと俺の方を向き、甘えるように「にゃー」とひと鳴きした。
「なんだよ。猫みたいに鳴いて」
「にゃーにゃー。お腹すいたにゃー。ご飯にゃー」
都合よく甘えてくる白猫に苦笑いが浮かんだ。
「カップラーメンしかないけど。そんな塩分の濃いもの猫にあげて大丈夫なのか?」
「そうね。人間と同じ物を食べるのはダメよね。これで大丈夫な食べ物、調べなさいよ」
白猫がコタツの上のスマホをツンツンと前脚で触れた。
指図の仕方が母さんみたいでムカッとする。
「コンビニ行ってくる」
スマホを掴み、コタツの前から立ち上がった。
「私も行く」
「ダメ。留守番」
「ケチ」
白猫は不貞腐れたように尻尾で俺の脚をバシバシと二度叩くが全く痛くない。
「余計な所は触らず大人しくしてろよ。キッチンがまた散らかっていたら、追い出すからな」
「サラダ買って来なさいよ」
「サラダが食べたいのか?」
「違うわよ。彰が食べるのよ。カップラーメンだけじゃバランス悪いから」
白猫になっても母さんはやっぱり口うるさい。だけど、そんな風に気遣ってもらえることが本当は嫌じゃない。母さんの小言を聞きながら実は何度か泣きそうになり、奥歯を噛みしめて我慢していた。今もちょっと泣きそうだ。
「ああ、わかったよ」
素直になれない俺はわざと面倒くさそうに返事をして家を出た。
「いつケーキ作るの?」
洗濯物を取り込んだ後、リビングのコタツに入ってカップラーメンをすすっていると、白猫がまとわりついてくる。
「ねえ、いつ作るの?」
今やっと夕飯を食べているというのに、白猫は俺の都合なんて全く考えない。
「夕食ぐらいゆっくり食べさせろ」
「え、おやつじゃなくて、夜ご飯だったの!」
コタツの上に飛び乗った白猫が俺を見下ろす。ピンと上に伸びたカギ尻尾が白猫の驚きを表現しているようだった。
「彰、全然野菜がないじゃない。野菜もちゃんと食べな。それにカップラーメンばかり食べていたら体壊すわよ。私がいなくなってから、こんな偏った食事ばっかりなの?」
小言が完全に母さんだ。あー鬱陶しい。
俺はテレビのリモコンを掴み、バラエティー番組にチャンネルを合わせボリュームを上げた。
「彰、聞いてる?」
白猫は苛立ったような声で聞いてくるが、無視してカップラーメンをかき込んだ。スープも全部飲んで、空になったカップラーメンの容器を置くと、白猫はあちゃーと言わんばかりに前脚で自分の額を触っていた。
「野菜食べなさい。冷蔵庫に何かあるでしょ? 私が取ってくる」
コタツから飛び降りた白猫がキッチンに行こうとするのを阻止する為に後ろ脚を掴んだ。
白猫が顔だけでこっちを振り向く。
「せっかく片付けたのにまた汚すつもりか?」
「だって」
そう言った白猫のお腹がキューと鳴る。
「あら、お腹減ってるのね」
白猫は他人ごとのようにそう言うと、体ごと俺の方を向き、甘えるように「にゃー」とひと鳴きした。
「なんだよ。猫みたいに鳴いて」
「にゃーにゃー。お腹すいたにゃー。ご飯にゃー」
都合よく甘えてくる白猫に苦笑いが浮かんだ。
「カップラーメンしかないけど。そんな塩分の濃いもの猫にあげて大丈夫なのか?」
「そうね。人間と同じ物を食べるのはダメよね。これで大丈夫な食べ物、調べなさいよ」
白猫がコタツの上のスマホをツンツンと前脚で触れた。
指図の仕方が母さんみたいでムカッとする。
「コンビニ行ってくる」
スマホを掴み、コタツの前から立ち上がった。
「私も行く」
「ダメ。留守番」
「ケチ」
白猫は不貞腐れたように尻尾で俺の脚をバシバシと二度叩くが全く痛くない。
「余計な所は触らず大人しくしてろよ。キッチンがまた散らかっていたら、追い出すからな」
「サラダ買って来なさいよ」
「サラダが食べたいのか?」
「違うわよ。彰が食べるのよ。カップラーメンだけじゃバランス悪いから」
白猫になっても母さんはやっぱり口うるさい。だけど、そんな風に気遣ってもらえることが本当は嫌じゃない。母さんの小言を聞きながら実は何度か泣きそうになり、奥歯を噛みしめて我慢していた。今もちょっと泣きそうだ。
「ああ、わかったよ」
素直になれない俺はわざと面倒くさそうに返事をして家を出た。
