それからというもの、彼は、毎日のように僕のところへやって来ては、この歌のここの歌い方が好きだっただの、こういうのど飴もあるだの、色々話をしてくる。

 僕がもし他の人といたりするときは、少し遠慮してなのか、遠目で僕のことを見てるだけで、話しかけてはこない。
 周りから見れば、軽いストーカーに思われかねないのだけど……彼は気にしていないらしい。

(そういう姿は、ちょっと可愛いんだよな……)

 って、僕……彼の行動に一喜一憂してないか!?

 ついには、幼なじみのまほに「あの後輩くん、通い妻なの?」と言われる始末だ。
 まほとはクラスこそ別だが、バンドをしていない時でも色々話していたりする。
 バンドはほんと、学園祭が近づいてきた時だけ活動してたようなものだから。
 今後は今のところ活動予定は無い。メンバーの男子ふたりも、それぞれ進学するから、今後集まれるような時間もないだろう。
 二回きりのバンドだったけど、それなりに楽しかった。
 誘ってくれたまほには感謝しかない。大好きな歌も歌えたし。

 だけど、この二回がキッカケで、彼……白川くんとの接点が出来てしまった。

(出来てしまったというと、言い方悪いか……)

 良くも悪くも、彼は僕に対して全肯定で、なんでも褒めてくれる。
 その姿が何とも……愛くるしいというか、なんというか。

 僕は三年生だから、この学園にいる時間はもう少ない。
 それを知ってか、彼は日に日に僕に対する態度が甘くなっている。
 きっと、彼的に、僕が何も感じてないと思っているんだろうけど……。

 思いの外、くらってる自分がいる。
 彼の術中にハマってるというか……これは「効いている」ってやつか。

 正直、幼なじみのまほといるときより彼といるときのほうが、ドキドキしているのだ。

(これってつまり……そういう、こと?)