最初に聞こえたのは風の音。
気温の感じられない無機質な風の音。

目を開けると1面灰色の空が広がっていた。上も下も分からない霧がかった場所。
暫くぼーっと周りを眺めていたら手の甲に"ぷにっ"と柔らかい感覚がした。

(あれは?)

白い猫がこちらを見上げていた。薄暗いからか瞳だけが鮮やかに見える。

「やっと起きたね。叶多(かなた)

その猫は俺を元から知っていたかのように名前を呼んだ。

「ミルク...?」

僕が数年前まで飼っていた白猫にそっくり。

「会いたかったよミルク」



「さぁ、今日からぼくが君の案内人だよ」




ミルクは尾を揺らしながら微笑む。
その言葉で俺はやっと理解した。




----俺は、死んだのか