その日の夜、寝る準備を終えたあと机に向かう。そしてパソコンを開いた。
ラストはなんだっけな。と、再び見返してみる。
『――実は、見知らぬ相手では、ないのだ。
(中途半端になってしまってはないだろうか。続きを楽しみにしております)』
と書いてある。
どうしようかな。中島……名前間違えた! キュン太さんはなかなか難しいところで区切ってきたな。
よし、最初から再び読んでみよう。
内容覚えている読者は***から***まで飛ばしてもオッケーだ。(俺は今、誰に話しかけたんだ?)
***
タイトル
優等生とヤンキーのボーイズラブでピュアラブな初恋物語
【第1話】俺たちの出会いだ
俺、冬見奏人、高校二年生。夏、学校に行くために乗る電車が目の前に止まった。
「あぁ、だるおも~」
混んでいる車内を眺め、これからこの人ごみの中でいつものように押しつぶされるのかと考えながら、そう呟いた。
人ごみに逆らい、隅の方に立つ。少しすると、めまいがしてきたから壁に寄りかかり、目を閉じた。朝ご飯食べなかったからかな……。次の駅に停車したから、いつものように押し寄せてくる人の波に潰される覚悟を決めた。
だけど、運命の日は違った。
潰されなかったから、目を開いてみた。するとなんと、隣の街にある高校の制服を着た、真面目な雰囲気が全身からだだ漏れな黒髪イケメン男子生徒が目の前にいたのだ。偶然か分からないけれど、セキュリティとなって俺のことを守ってくれていたのだった。彼は俺よりかなり長身のため、自分は安心安定なバリアに包まれているようだった。それにしても、距離が近い。近すぎるせいか、胸のあたりがなんか、変。
突然、トゥンクトクと心臓の音は乱れ、揺れた。
電車の揺れ以上に。もしやこれは――。
だけど、彼はどう見ても優等生な雰囲気で俺とは正反対だ。もしも関わることがあっても、いがみ合う仲となるだろうと予想はできた。だけど、奇跡は起こったのだ。
【第2話】春木視点、君が心配だ
毎日電車に乗り、高校へ向かう。その日は、汗が滴るほどに暑い日だった。
電車の中は人がぎゅうぎゅうであるから、乗り込む瞬間はいつも深く息を吐いてから、全身に力を入れて乗り込む。そしていつも隅に立っている君の生存確認をする。君は殺伐とした世の中にあるオアシスだ。君はいつも隅の方にいた。いつもと変わらぬ姿だと思ったが、いつもと違うのではないか?と、違和感が。いつもはツヤツヤで血色がよい色白美肌な君。だがしかし、よくよく観察を試みてみると、本日は顔色があまりよろしくない。次の駅に着いた時にはなだれのように人が乗り込んでくる。自分は人混みをかき分けて、君が潰されないように君の目の前に立った。そして見下ろした。
「まつ毛、長いな……」
「えっ?」
心の中で止めておこうとした言葉が。君は思わず呟いてしまった言葉に反応して見上げてきた。
「いや、なんでもない。それよりも、汗がすごい。これで拭くか?」
自分はローズ柄のタオルハンカチを君に差し出した。
「いや、いらないぜ」
君は受け取らなかった。断られるとなんだか悔しさのような気持ちが込み上げてきて「拭きなさい」と言いながら、自分が彼の顔から溢れ出る汗を拭った。
それから近距離のまま、自分たちは無言になった。チラリと君を見る。柔らかそうで触り心地の良さそうな君の茶色の髪。長い前髪は邪魔ではないのだろうか。目に悪影響がないか、心配だ。上から第三のボタンまで開いた白いシャツ。胸元がチラリしていて、下心ある者に狙われたりしないか、それもとても心配だ。今すぐに無理やり上までボタンをとめたい。
そんなことを考えている時だった。君はふらふらとして倒れそうになった。自分は君が倒れないように君の体を全力で支えた。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。立ちくらみがしただけだから」と、君は拒否するような勢いで離れようとした。だが、ちょうどいつも君が降りる駅に着いたから、支えながら電車から降り、駅の中にあるベンチに座らせ、自分の水筒のお茶を飲ませた。その時ギュルルと君のお腹が鳴った。自分の鞄の中から、毎日学校で二時間目の授業の後にささっと口に入れる空腹対策の饅頭を取り出した。
「これ、食べるか?」
質問形にすればまた拒否されるだろうか。自分は「これを食べなさい」と言い直し、袋から饅頭を出した。知らない人から食べ物をもらったらいけないと教わったから食べてはくれないだろうか?と予想したのだが「悪いな、ありがと」と言い、君は素直に食べてくれた。しばらくすると君の顔色はいつものように戻っていった。自分はほっと胸を撫で下ろす。
「ありがとな。見知らぬ相手にそこまでしてくれるなんて優しいな」
――実は、見知らぬ相手では、ないのだ。
***
キュン太さん、俺の第1話と比べてみると文字数多く書いてくれているな。俺も長く書いてみる意識をしてみよう。春木視点の実は見知らぬ相手ではないの件は置いといて、俺は俺視点で書けばいいのか?
そして続きの物語を書いた。
***
【第3話】これはデートの約束か?
「お茶と饅頭代だ。受け取ってくれ!」
俺は財布から五百円玉を一枚キラリと出した。
「いや、いらない」
「受け取ってくれよ!」
「いらないと言っている」
「いや、受け取ってほしい」
無理やり渡そうとするも、手のひらをこっちに向けて跳ね返してきた。
「本当にいらない。それよりも学校に遅刻すると伝えなくては……」
頑なにお金を受け取ってくれない彼は学校に連絡するためにスマホを手に持った。そして遅刻連絡フォームに必要事項を入力すると送信した。
「入力はこれでいいのか……? 初めてこういうのを学校に送信したな……」
「遅刻したことはないのか?」
「あぁ、ない。では、次に来る電車に乗りたいから失礼する」
彼はさささと俺に背中を向けた。
なぜだろう。去ろうとする彼の腕を無意識に掴み、引き止めてしまった。
「……あっ、ごめん。急いでいるのに」
「いや、大丈夫だ。移動距離差し引いても、まだ八分三十秒の余裕がある。」
「じ、じゃあさ。お礼したいから……近いうちにおにぎりでも奢らせてくれ。連絡先交換しないか?」
彼は俺の顔をじっと真顔で見つめた後、軽く頷いた。
「とりあえず、こっちから送っとくから……いつでもいいから返事くれ」
「分かった!」
「今日は色々、ありがとな!」
そうして彼は去っていった。
返事はいつ来るのだろう。そわそわするぞ。なんて思っていたらすぐに『返事だ』と彼から来た。
さすが真面目っぽさ溢れる優等生だな。返事が早い。無駄な言葉もない。俺もスピード負けないぞと思いながら速攻質問を送る。
『放課後か休日に暇な日はいつだ?』
『今日の夜、塾が終わった後に時間はある』
『じゃあ塾の後、ご飯食べに行こうぜ。美味しくておすすめのおにぎりがあるんだ。それを奢らせてくれ』
『承知した』
あっさりと決まったな。なんか彼とふたりきりでご飯食べに行くの、ドキドキするな。なんだかデートに誘ったようなドキドキかな。彼女できたことないから誘う気持ち分からないけれど。いや、というか、ただお礼をするだけだよな……?
ドキドキするのは体調不良のせいにして、学校休んじゃえ~!
俺が通っている定食屋の大好きな塩昆布のおにぎり、彼はよろこんでくれるのか? あそこのおにぎりは昆布と海苔はもちろん、米も理由は分からないがツヤツヤしていてすごく美味しいんだよな。卵焼きと味噌汁も美味しくて、三角食べをこなすとより美味さが強調されて飛び出してくるんだ。
反応、ドキドキワクワクだな。
そして約束の時間がやって来た。
***
どうだろ。第3話も上手くまとめれたよな?
次はキュン太くんの番か。いや、別のユーザーが第4話を書く場合もあるのか。
俺はキュン太くんに書いてほしい、書いてくれますようにと願いながら寝た。
そして朝、確認すると第4話が投稿されていた。
まず始めに投稿者を確認した。無事にキュン太くんだった!!
キュン太くん、夜中頑張って続きを書いてくれたのかな? 俺が書き終わって寝たのは二十三時ぐらい辺りだ。それから書いてくれたのか……しかも今回も俺のよりも長いぞ。早速読もう、わくわく。
***
【第4話】春木視点 君をもっと知りたい。
塾が終わるとすぐに待ち合わせ場所へ向かう。待ち合わせ時間は二十時に設定したが実際には待ち合わせ時間の三十二分前に着いた。
暗くなった風景の中に〝定食屋 純一郎〟という看板の文字が輝き浮かび上がっている。しばらく文字の下で待っていると「待たせたか、ごめんな!」と君は走ってきた。腕時計を確認すると二十時から四分二十秒過ぎていた。
「時間はしっかり守るように。もしも過ぎるのなら、遅れるのが分かった時点で連絡を入れなさい」
「あぁ、そうだよな。すまないな」
ほんの少し落ち込んだ表情を君は見せてきた。別に自分は怒っているわけではない。待ち合わせ時間の五分前辺りから心配していたのだ。道中何かHappeningなどが起こり、来れない状況に陥ってしまったのではないかと。
何はともあれ無事な姿を確認して安堵した。
ガラガラと音の大きい引き戸をスライドさせると祖母の家のような香りが鼻をくすぐった。こじんまりとして和風な雰囲気はなかなか落ち着く状況だな。
「あらまぁ、今日はお友達と一緒かい?」
雰囲気、皮膚などの総合的な分析を軽くした結果、四十代半ばだと思われる女性が君に話しかけてきた。
「店長、初めて友達を連れてきたぞ!」
と、友達だと?
もう知り合い以上の仲だと君は感じてくれているのか? しかも、初めてだと?
少しだけ変な期待をしてしまう。だが上辺だけの発言の可能性もある。簡単に人間を信用してはならない。
「座れよ、こっちだ!」
「おぅ」
自分は君に着いていく。座敷にあがり向かい合い、それぞれ座布団の上に座った。
「店長、いつもの頼むぜ! 今日は二人分な!」と、メニューを一切見ず、相手に意見も尋ねずに注文する君。
儚げな見た目なのに力強い部分が多くあり、そのギャップが自分の心を引きつける。周りにはなかなかいないタイプだし、できることなら一瞬も目を離さずにずっと見ていたい。
君を無言で見つめていると、注文した料理が来た。
「いやぁ、勝手に注文しちゃったけれど。好き嫌いとかはないか? 大丈夫だったか?」
「あぁ、大丈夫だ。好き嫌いの件に関しては幼少期の勉学プログラムに組み込まれていたからな」
「……勉学プログラムか。とりあえず大丈夫ってことだな?」
「あぁ、そうだ」
「良かった! どうぞ召し上がれ!」
君は自ら調理したかのような態度でそう言った。
「うん、なかなか美味しいな」と感想を軽く口にした。
その時だった!
ふいに見せてきた君の無邪気な笑顔。その笑顔に自分の心臓は射抜かれたのだ。こんなに誰かの笑顔に感情が揺さぶられるなんて経験は今までなかっただろう。
「卵焼きと味噌汁も美味しくてな、三角食べをこなすとより美味さが強調されて飛び出してくるんだ」
「そうなのか。やってみよう」
自分は指示にしたがったふりをして三角食べをした。ふりをしたのは、自分の食事方法は普段も三角食べが基本なので当たり前のようにこなしていたから。
「うん、美味いな!」
「だろ? 特にこの塩昆布のおにぎりがおすすめだ。昆布と海苔はもちろん、お米もツヤツヤしててすごく美味いんだよなぁ。どうしてだろう~」
自分は理由を探す意識を持ちながら米を口に入れた。
「炊く時に塩を入れているな……あとは、そうだなぁ白だし、酢、サラダ油辺りを少々ってところか……」
「正解! よく分かったね」
店長の声が背後からした。振り向くと彼女は腕を組み、ほうっと感心していた。
「すごいぞ。俺、米を炊いたってことしか分からなかったぞ!」
君も感心している。
と、そんな良き雰囲気のまま食事を終えると君は焦りだした。そして叫んだ。
「財布をわす」
***
俺が始めた小説がこんなふうに仕上がっていくなんて。これからどうなるんだろう。
ところで、第四話の締め方、ちょっと中途半端でないか?
「財布を忘れた」って書こうとしてたっぽいよな?
途中で寝ちゃったのかな……あとで加筆ありそうだから俺は様子見かな?
なんて思っていたのだけど、キュン太さんが深刻な心情になっていたなんて。そして、これがきっかけで俺たちリアルの方も発展するなんて――その時はまだ知らなかったんだ。
*
ラストはなんだっけな。と、再び見返してみる。
『――実は、見知らぬ相手では、ないのだ。
(中途半端になってしまってはないだろうか。続きを楽しみにしております)』
と書いてある。
どうしようかな。中島……名前間違えた! キュン太さんはなかなか難しいところで区切ってきたな。
よし、最初から再び読んでみよう。
内容覚えている読者は***から***まで飛ばしてもオッケーだ。(俺は今、誰に話しかけたんだ?)
***
タイトル
優等生とヤンキーのボーイズラブでピュアラブな初恋物語
【第1話】俺たちの出会いだ
俺、冬見奏人、高校二年生。夏、学校に行くために乗る電車が目の前に止まった。
「あぁ、だるおも~」
混んでいる車内を眺め、これからこの人ごみの中でいつものように押しつぶされるのかと考えながら、そう呟いた。
人ごみに逆らい、隅の方に立つ。少しすると、めまいがしてきたから壁に寄りかかり、目を閉じた。朝ご飯食べなかったからかな……。次の駅に停車したから、いつものように押し寄せてくる人の波に潰される覚悟を決めた。
だけど、運命の日は違った。
潰されなかったから、目を開いてみた。するとなんと、隣の街にある高校の制服を着た、真面目な雰囲気が全身からだだ漏れな黒髪イケメン男子生徒が目の前にいたのだ。偶然か分からないけれど、セキュリティとなって俺のことを守ってくれていたのだった。彼は俺よりかなり長身のため、自分は安心安定なバリアに包まれているようだった。それにしても、距離が近い。近すぎるせいか、胸のあたりがなんか、変。
突然、トゥンクトクと心臓の音は乱れ、揺れた。
電車の揺れ以上に。もしやこれは――。
だけど、彼はどう見ても優等生な雰囲気で俺とは正反対だ。もしも関わることがあっても、いがみ合う仲となるだろうと予想はできた。だけど、奇跡は起こったのだ。
【第2話】春木視点、君が心配だ
毎日電車に乗り、高校へ向かう。その日は、汗が滴るほどに暑い日だった。
電車の中は人がぎゅうぎゅうであるから、乗り込む瞬間はいつも深く息を吐いてから、全身に力を入れて乗り込む。そしていつも隅に立っている君の生存確認をする。君は殺伐とした世の中にあるオアシスだ。君はいつも隅の方にいた。いつもと変わらぬ姿だと思ったが、いつもと違うのではないか?と、違和感が。いつもはツヤツヤで血色がよい色白美肌な君。だがしかし、よくよく観察を試みてみると、本日は顔色があまりよろしくない。次の駅に着いた時にはなだれのように人が乗り込んでくる。自分は人混みをかき分けて、君が潰されないように君の目の前に立った。そして見下ろした。
「まつ毛、長いな……」
「えっ?」
心の中で止めておこうとした言葉が。君は思わず呟いてしまった言葉に反応して見上げてきた。
「いや、なんでもない。それよりも、汗がすごい。これで拭くか?」
自分はローズ柄のタオルハンカチを君に差し出した。
「いや、いらないぜ」
君は受け取らなかった。断られるとなんだか悔しさのような気持ちが込み上げてきて「拭きなさい」と言いながら、自分が彼の顔から溢れ出る汗を拭った。
それから近距離のまま、自分たちは無言になった。チラリと君を見る。柔らかそうで触り心地の良さそうな君の茶色の髪。長い前髪は邪魔ではないのだろうか。目に悪影響がないか、心配だ。上から第三のボタンまで開いた白いシャツ。胸元がチラリしていて、下心ある者に狙われたりしないか、それもとても心配だ。今すぐに無理やり上までボタンをとめたい。
そんなことを考えている時だった。君はふらふらとして倒れそうになった。自分は君が倒れないように君の体を全力で支えた。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。立ちくらみがしただけだから」と、君は拒否するような勢いで離れようとした。だが、ちょうどいつも君が降りる駅に着いたから、支えながら電車から降り、駅の中にあるベンチに座らせ、自分の水筒のお茶を飲ませた。その時ギュルルと君のお腹が鳴った。自分の鞄の中から、毎日学校で二時間目の授業の後にささっと口に入れる空腹対策の饅頭を取り出した。
「これ、食べるか?」
質問形にすればまた拒否されるだろうか。自分は「これを食べなさい」と言い直し、袋から饅頭を出した。知らない人から食べ物をもらったらいけないと教わったから食べてはくれないだろうか?と予想したのだが「悪いな、ありがと」と言い、君は素直に食べてくれた。しばらくすると君の顔色はいつものように戻っていった。自分はほっと胸を撫で下ろす。
「ありがとな。見知らぬ相手にそこまでしてくれるなんて優しいな」
――実は、見知らぬ相手では、ないのだ。
***
キュン太さん、俺の第1話と比べてみると文字数多く書いてくれているな。俺も長く書いてみる意識をしてみよう。春木視点の実は見知らぬ相手ではないの件は置いといて、俺は俺視点で書けばいいのか?
そして続きの物語を書いた。
***
【第3話】これはデートの約束か?
「お茶と饅頭代だ。受け取ってくれ!」
俺は財布から五百円玉を一枚キラリと出した。
「いや、いらない」
「受け取ってくれよ!」
「いらないと言っている」
「いや、受け取ってほしい」
無理やり渡そうとするも、手のひらをこっちに向けて跳ね返してきた。
「本当にいらない。それよりも学校に遅刻すると伝えなくては……」
頑なにお金を受け取ってくれない彼は学校に連絡するためにスマホを手に持った。そして遅刻連絡フォームに必要事項を入力すると送信した。
「入力はこれでいいのか……? 初めてこういうのを学校に送信したな……」
「遅刻したことはないのか?」
「あぁ、ない。では、次に来る電車に乗りたいから失礼する」
彼はさささと俺に背中を向けた。
なぜだろう。去ろうとする彼の腕を無意識に掴み、引き止めてしまった。
「……あっ、ごめん。急いでいるのに」
「いや、大丈夫だ。移動距離差し引いても、まだ八分三十秒の余裕がある。」
「じ、じゃあさ。お礼したいから……近いうちにおにぎりでも奢らせてくれ。連絡先交換しないか?」
彼は俺の顔をじっと真顔で見つめた後、軽く頷いた。
「とりあえず、こっちから送っとくから……いつでもいいから返事くれ」
「分かった!」
「今日は色々、ありがとな!」
そうして彼は去っていった。
返事はいつ来るのだろう。そわそわするぞ。なんて思っていたらすぐに『返事だ』と彼から来た。
さすが真面目っぽさ溢れる優等生だな。返事が早い。無駄な言葉もない。俺もスピード負けないぞと思いながら速攻質問を送る。
『放課後か休日に暇な日はいつだ?』
『今日の夜、塾が終わった後に時間はある』
『じゃあ塾の後、ご飯食べに行こうぜ。美味しくておすすめのおにぎりがあるんだ。それを奢らせてくれ』
『承知した』
あっさりと決まったな。なんか彼とふたりきりでご飯食べに行くの、ドキドキするな。なんだかデートに誘ったようなドキドキかな。彼女できたことないから誘う気持ち分からないけれど。いや、というか、ただお礼をするだけだよな……?
ドキドキするのは体調不良のせいにして、学校休んじゃえ~!
俺が通っている定食屋の大好きな塩昆布のおにぎり、彼はよろこんでくれるのか? あそこのおにぎりは昆布と海苔はもちろん、米も理由は分からないがツヤツヤしていてすごく美味しいんだよな。卵焼きと味噌汁も美味しくて、三角食べをこなすとより美味さが強調されて飛び出してくるんだ。
反応、ドキドキワクワクだな。
そして約束の時間がやって来た。
***
どうだろ。第3話も上手くまとめれたよな?
次はキュン太くんの番か。いや、別のユーザーが第4話を書く場合もあるのか。
俺はキュン太くんに書いてほしい、書いてくれますようにと願いながら寝た。
そして朝、確認すると第4話が投稿されていた。
まず始めに投稿者を確認した。無事にキュン太くんだった!!
キュン太くん、夜中頑張って続きを書いてくれたのかな? 俺が書き終わって寝たのは二十三時ぐらい辺りだ。それから書いてくれたのか……しかも今回も俺のよりも長いぞ。早速読もう、わくわく。
***
【第4話】春木視点 君をもっと知りたい。
塾が終わるとすぐに待ち合わせ場所へ向かう。待ち合わせ時間は二十時に設定したが実際には待ち合わせ時間の三十二分前に着いた。
暗くなった風景の中に〝定食屋 純一郎〟という看板の文字が輝き浮かび上がっている。しばらく文字の下で待っていると「待たせたか、ごめんな!」と君は走ってきた。腕時計を確認すると二十時から四分二十秒過ぎていた。
「時間はしっかり守るように。もしも過ぎるのなら、遅れるのが分かった時点で連絡を入れなさい」
「あぁ、そうだよな。すまないな」
ほんの少し落ち込んだ表情を君は見せてきた。別に自分は怒っているわけではない。待ち合わせ時間の五分前辺りから心配していたのだ。道中何かHappeningなどが起こり、来れない状況に陥ってしまったのではないかと。
何はともあれ無事な姿を確認して安堵した。
ガラガラと音の大きい引き戸をスライドさせると祖母の家のような香りが鼻をくすぐった。こじんまりとして和風な雰囲気はなかなか落ち着く状況だな。
「あらまぁ、今日はお友達と一緒かい?」
雰囲気、皮膚などの総合的な分析を軽くした結果、四十代半ばだと思われる女性が君に話しかけてきた。
「店長、初めて友達を連れてきたぞ!」
と、友達だと?
もう知り合い以上の仲だと君は感じてくれているのか? しかも、初めてだと?
少しだけ変な期待をしてしまう。だが上辺だけの発言の可能性もある。簡単に人間を信用してはならない。
「座れよ、こっちだ!」
「おぅ」
自分は君に着いていく。座敷にあがり向かい合い、それぞれ座布団の上に座った。
「店長、いつもの頼むぜ! 今日は二人分な!」と、メニューを一切見ず、相手に意見も尋ねずに注文する君。
儚げな見た目なのに力強い部分が多くあり、そのギャップが自分の心を引きつける。周りにはなかなかいないタイプだし、できることなら一瞬も目を離さずにずっと見ていたい。
君を無言で見つめていると、注文した料理が来た。
「いやぁ、勝手に注文しちゃったけれど。好き嫌いとかはないか? 大丈夫だったか?」
「あぁ、大丈夫だ。好き嫌いの件に関しては幼少期の勉学プログラムに組み込まれていたからな」
「……勉学プログラムか。とりあえず大丈夫ってことだな?」
「あぁ、そうだ」
「良かった! どうぞ召し上がれ!」
君は自ら調理したかのような態度でそう言った。
「うん、なかなか美味しいな」と感想を軽く口にした。
その時だった!
ふいに見せてきた君の無邪気な笑顔。その笑顔に自分の心臓は射抜かれたのだ。こんなに誰かの笑顔に感情が揺さぶられるなんて経験は今までなかっただろう。
「卵焼きと味噌汁も美味しくてな、三角食べをこなすとより美味さが強調されて飛び出してくるんだ」
「そうなのか。やってみよう」
自分は指示にしたがったふりをして三角食べをした。ふりをしたのは、自分の食事方法は普段も三角食べが基本なので当たり前のようにこなしていたから。
「うん、美味いな!」
「だろ? 特にこの塩昆布のおにぎりがおすすめだ。昆布と海苔はもちろん、お米もツヤツヤしててすごく美味いんだよなぁ。どうしてだろう~」
自分は理由を探す意識を持ちながら米を口に入れた。
「炊く時に塩を入れているな……あとは、そうだなぁ白だし、酢、サラダ油辺りを少々ってところか……」
「正解! よく分かったね」
店長の声が背後からした。振り向くと彼女は腕を組み、ほうっと感心していた。
「すごいぞ。俺、米を炊いたってことしか分からなかったぞ!」
君も感心している。
と、そんな良き雰囲気のまま食事を終えると君は焦りだした。そして叫んだ。
「財布をわす」
***
俺が始めた小説がこんなふうに仕上がっていくなんて。これからどうなるんだろう。
ところで、第四話の締め方、ちょっと中途半端でないか?
「財布を忘れた」って書こうとしてたっぽいよな?
途中で寝ちゃったのかな……あとで加筆ありそうだから俺は様子見かな?
なんて思っていたのだけど、キュン太さんが深刻な心情になっていたなんて。そして、これがきっかけで俺たちリアルの方も発展するなんて――その時はまだ知らなかったんだ。
*



