「まさか本当に描かせてくれるなんて思いませんでしたよ」
「……だってあんなこと言われたらな」
「そうですよね。すみません。それをエサにしたみたいで」
「いい。俺もお前のこと知りたかったし」

 あ。
 つい本音が漏れてしまう。
 俺は恥ずかしくて、つい口元を腕で隠そうとする。

「動かないで。ちゃんと見せて。その顔」
「はっ、え……ちょっ、と……」

 俺をじっと見つめるその顔は真剣そのもので、俺だけがこんなに恥ずかしがっているのかと思うと、さらに恥ずかしくなる。
 ザザ……とキャンバスに描かれていく感覚が、なんだかくすぐったい。
 急に鋭い目つきへと変わり、それがまるで狩りをしている獣のようで、今までの大吉創とは別人に思えた。

(そんなじっくり見られると、恥ずい……)

「照れちゃった? 先輩もそんなことあるんですね」
「からかうなよ」

 俺は座り直してまたさっきまでの表情を取り戻そうとする。