「満さん、こっち見て」
「……こうか?」
「そう、うん、いいね。そのまま遠くを見つめるようにして」
「うん」

 美術室に俺とコイツだけ。
 しん、と静まったここでは、迷いなく鉛筆がキャンバスの上を走る音がやけに大きく聞こえる。

「綺麗ですね、先輩の目」
「はっ、急に何」
「こら、動かないで」
「……お、お前のせいだろっ」

 俺は大吉創という男がどんなヤツだったのか思い出せなかった。
 相手は俺のことを探していたほどの思いを持っていたというのに。
 それがとてつもなく申し訳なくて、罪滅ぼしのためにここに来たのかもしれない。

 でも、それだけじゃない。
 俺は、この大吉創という男のことをもっと知りたくなってしまったのだ。