「あー、くそっ……」
 悔しい。
 俺がもう少し高さがあれば上手くいくのか?
 そんなことさえ思ってしまう。
 サーブ自体はコートに入る。でも、狙ったところに100パーセントで入るわけではない。ミスだってする。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 だんだん息が上がって疲れも感じてきた。
 ひと休みしたら帰ろう。今日はもうダメだ。
 俺は壁に寄りかかって座り込む。

「……大吉創……」
 今日はもうダメだ。
 アイツのことが頭から離れないから。
 気になって仕方ない。
 バレーをしていれば落ち着くと思っていたのに。ずっと胸がモヤモヤして苦しい。
 こんなの初めてだった。

「なんなんだよ……これ……」
 俺はアイツのこと、知らないわけじゃないのに思い出せない。
 記憶に霧がかかっていてアイツの名前以外の情報が何も……。

「もう帰ろ……」
 俺は早く帰るために出したものを素早く片付けていく。
 今日は30分も練習していない。それなのに、いつもより疲れている。