「俺、大吉創(だいきち はじめ)っていいます。先輩、俺のこと覚えてないですか?」

 覚えているはずがない。だって今日初めて顔を見たはずだった。
 だがしかし、そう言われてみるとなんとなく頭の中のどこかに『大吉創』という名前に聞き覚えがあった。
 でも、大吉創ってどんなヤツだったっけ……?

「あー、えーっと……すまん」 
「ははっ、いいですよ」

 爽やかに微笑む大吉創。眩しい。
 周りの女子たちはザワザワとし始める。ここで何か話されるのはマズイかもしれない。

「……ところで俺に何の用だ?」

 できるだけ小声でそっけなく聞くと、創はにこやかな目のまま口を開いた。

「先輩にお願いがあって」
「俺に?」
「はい。この後、美術室に来てもらえませんか」

 唐突すぎる。
 しかし大吉創は、人を振り回している自覚がなさそうな顔で続けた。