「俺はずっと満さんを描きたくて、頭の中であの時のことを思い出しながらキャンバスに向かっていたんです。でも……なかなか描けなくて。あなたのことをこんなに思っているのに、描き起こすことができなくて。それが寂しくて悔しくて……」

 俺だけじゃなかった。
 安心した。
 こんなに俺のことを思ってくれているのに思い出せないものもあったということか。
 当時の幼さから記憶が薄いのは俺だけじゃなかったんだ。
 
「……よし、できました」

 創が鉛筆を置いて、ふぅ、と肩の力を抜いてストレッチしながらキャンバスから離れてじっくり見ていた。

「どんな感じ?」
「見ますか?」

 創には俺の顔がどう映っているのだろう。
 胸の奥が、ほんの少しだけ疼く。

「ほら、こっち来て?」
「……あっ」

 創は俺の手を優しくとって、キャンバスの前に立たせる。
 その瞬間、俺は胸がじんわりと熱くなった。

 まるで写真に撮ったみたいな俺。
 でも俺が知っている俺じゃない。
 どこか少し寂しそうで、だけど真っ直ぐで、強さも感じさせる目。

 いろんな感情が混ざった複雑な顔なのに、全体で見るとふんわりと笑っているように感じる。
 優しさと、強さが感じられる絵だった。