(なんだよこの感じ……)
 
 さっきまでモヤついていた胸の奥が、じん、と熱くなる。
 苦しくて、痛くて、辛い。
 心臓がドキドキして飛び出そうだ。

「……なんかさ。お前、変なヤツだな」
「変ですよ。満さんが思ってるよりずっとね」

 ニッと口角を上げてわざとらしく笑うと、いつものイケメンではなくてひとりの後輩として見ることができた。
 その笑顔が、なんでこんなに俺の胸をざわつかせるのか今の俺にはわからない。

「……ふーん」

 俺のちょっとした行動が、過去の大吉創を救って、今に繋がっているのだと知り、ほんの少しだけ自分を認められた気がした。
 何も取り柄がないと思っていた俺が、初めて誰かのためになれたのだと思えた。
 そう思うと、なんだか嬉しい。

「この学校を選んで良かったです。奇跡ですよ。ね? 満さん」

 不意打ちすぎて、呼吸が止まる。
 キャンバス越しの視線が熱い。
 まるで俺の心の奥まで覗き込むみたいで。

「……そうかよ」
「はい」

(……なんだよこれ、本当に……)

 大吉は機嫌よく鼻歌なんて歌いながら描き進めている。
 今までの俺はぼーっとしていただけだったのに、いつの間にか大吉が俺を夢中で描いているのをただ眺めていた。