イケメン転校生は平凡な俺を描きたい!?

「ひとりで花のスケッチをしていた時、いつもみたいにいじめっ子たちがからかいに来たんです。絵描くなんて女みたいだって」

 大吉の過去は、俺が思っているより辛かったのかもしれない。
 遠い昔を語るような言いぶりだが、当時かなり悩んだのだろうか。
 でも、今は曇りのないまっすぐな目で俺を見つめている。

「そんな時、ガキ大将みたいな背の高い男子の先輩が助けてくれたんですよ。『絵描くのに男も女も関係ねぇだろうが!』って言って追い返してくれて」
「……え、それが俺ってこと……?」
「はい。ははっ、実はそれっきりなんですけどね、満さんとの関わりって」

 創は鉛筆を動かす手を止めずに、少し照れたようにふっと小さく笑った。
 小学生の頃は、4月生まれということもあってか成長期もほかの人より早くて身長も高かった。
 そんなことを思い出す。

「でも、あの日の先輩が俺の中ではずっとヒーローで。あの一言で、絵を好きでいていいんだ、って思えたんです」
「……」

 言葉が詰まる。
 俺が……? 小学生の俺が、そんなことを?

 正直その時のことは記憶にはまったくない。
 でも、嘘をついているようには聞こえなかった。

「それからずっと、いつかまた会えたらって思ってて。でも顔は今と昔じゃ違うだろうし記憶は頼れないし。ただ名前は覚えていたからそれを頼りに……」
「……だから探してたのか? 俺のこと」
「はい。会って、ちゃんとお礼を言いたかった。それと……描きたかったんです。愛しいあなたを」

 大吉は視線を上げ、俺の目をまっすぐ見つめてくる。絡まるような視線から逃げたくなる。
 その瞬間、心臓が跳ねたような感じがした。