ただ、君に笑っていてほしかった。~30日の奇跡と、空白の19日の秘密~

「……おはよ、葉月(はづき)。……今日、なぜか授業が午前中だけなんだよね。だから、午後からは遊ぶよ!」
『あー……。梨桜(りお)さんが言ってた……』
 梨桜(りお)さんが消えてしまう日が、徐々に近づいてきていた。
「そっか。梨桜(りお)ちゃんが……」
『……誰と遊ぶの?』
「愛梨(あいり)ちゃんと、伊紗(いさ)ちゃんと、実来(みくる)。あと、果子(かこ)ちゃんと、好歌(このか)ちゃん」
 全員、聞いたことのある名前だった。
 愛梨(あいり)さん以外は、中学が同じだったから。
『そうなんだ……』
「葉月(はづき)はどうする?ついてくる?」
『うーん……。……やめとくよ』
 なんとなく、梨桜(りお)さんに悪い気がした。
 せっかく、小学時代の友達と過ごせる時間なのに……。
「そっか。……ま、来たくなったら、頑張って探してね」
『あ、うん……。あ!あとさ――』
 俺は、雪宮(ゆきみや)に、満月(みつき)に俺が視えたことを話した。
 雪宮(ゆきみや)は、少し難しい顔をしてから、ポツリ、と話し始めた。
「強い思い、かな……。人間の強い思い。……葉月(はづき)も、弟さんも、会いたいって思ったんじゃない?その強い思いが、願いを叶えた。…………強い思いは、運命を変えられるから」

『……人間ってさ、すごいよね』

『人間の誰かを思う強い気持ちは、運命さえも変えてしまうんだから……』

 この前、天音(あまね)さんが、そんなことを言っていた。
 ……強い気持ちは、強い思いは、運命を、変える?
 そんなこと、あり得るのだろうか。
「……じゃ、またね、葉月(はづき)」
『あ、うん……』
 雪宮(ゆきみや)について歩いているうちに、学校に着いていたようだ。
 仕方なく、教室に向かって歩く。
「……あ!葉月(はづき)!」
『ん?なに?』
「……学校、無理に行かなくても良いからね」
 気づいてたんだ……。
 なんとなく、学校が嫌いだということに。
 人も、学力も、俺には合っていなかった。