『ただいま、満月……』
満月に、その声は届かない。
そりゃそうだ。
俺のことが視えるのは、声が聴けるのは、雪宮だけだから。
『……大丈夫か?』
俺なんかに心配されても、嫌なだけかもな。
そう思いながら、リビングのソファで寝ている満月に近寄る。
パジャマのまま、目を閉じている。
「……兄ちゃん。戻って来いよ」
まさか、俺が視えたのかと思ったが、寝ている。
寝言のようだ。
「……兄ちゃんの欲しいもの買ってやるから」
満月の頬を、一筋の涙が伝う。
「だから、いなくなるなよ……」
『……満月……?』
「俺は、ほんとは、兄ちゃんのこと……」
その言葉を言い終わる前に、目を覚ます。
本当は、なんなんだよ……。
「……水飲も」
起き上がって、キッチンに向かう満月。
少しフラフラしていて、倒れてしまいそうに見える。
『満月……』
……と、突然、俺の体が光り始めた。
突然のことすぎて、固まってしまう。
「――え?」
ペットボトルが落ちる音がした。
「……兄、ちゃん?」
「満月……?」
視えている?
満月に、俺が……?
「兄ちゃん!」
満月がへたり込む。
力が抜けてしまったようだ。
「満月……」
ペットボトルを拾う。
物に、触れた……。
「ごめん……。ごめんな、兄ちゃん。俺……。兄ちゃんが死んでから気付いた。二人の前では、昔みたいに振舞ってるけどさ。寂しくて……。兄ちゃんがいない生活が。兄ちゃんに愚痴きいてもらいながらの買い物とか、兄ちゃんがつくる唐揚げとか。もう……」
「満月……」
「ほんとに、ごめん。……許されないと思うけど……」
泣きじゃくる満月を抱きしめる。
俺に酷いことをしてきたのは事実だ。
変わることはない。
……でも、俺にとって、たった一人の、大切な弟であることも、変わらない。
「あれ……。兄ちゃん?」
満月が泣き止む頃には、もう俺は視えなくなっていた。
体からの光も消えた。
「……夢?」
満月は立ち上がって、ペットボトルを冷蔵庫にしまいに行く。
『夢じゃないよ、満月』
姿は視えない。
声も聴こえない。
……でも、満月は、俺の方を振り向いて、驚いた顔をした。
確かに目が合った。
そんな気がした。
『……さよなら、満月。……もう、ここには来ないよ』
満月に、その声は届かない。
そりゃそうだ。
俺のことが視えるのは、声が聴けるのは、雪宮だけだから。
『……大丈夫か?』
俺なんかに心配されても、嫌なだけかもな。
そう思いながら、リビングのソファで寝ている満月に近寄る。
パジャマのまま、目を閉じている。
「……兄ちゃん。戻って来いよ」
まさか、俺が視えたのかと思ったが、寝ている。
寝言のようだ。
「……兄ちゃんの欲しいもの買ってやるから」
満月の頬を、一筋の涙が伝う。
「だから、いなくなるなよ……」
『……満月……?』
「俺は、ほんとは、兄ちゃんのこと……」
その言葉を言い終わる前に、目を覚ます。
本当は、なんなんだよ……。
「……水飲も」
起き上がって、キッチンに向かう満月。
少しフラフラしていて、倒れてしまいそうに見える。
『満月……』
……と、突然、俺の体が光り始めた。
突然のことすぎて、固まってしまう。
「――え?」
ペットボトルが落ちる音がした。
「……兄、ちゃん?」
「満月……?」
視えている?
満月に、俺が……?
「兄ちゃん!」
満月がへたり込む。
力が抜けてしまったようだ。
「満月……」
ペットボトルを拾う。
物に、触れた……。
「ごめん……。ごめんな、兄ちゃん。俺……。兄ちゃんが死んでから気付いた。二人の前では、昔みたいに振舞ってるけどさ。寂しくて……。兄ちゃんがいない生活が。兄ちゃんに愚痴きいてもらいながらの買い物とか、兄ちゃんがつくる唐揚げとか。もう……」
「満月……」
「ほんとに、ごめん。……許されないと思うけど……」
泣きじゃくる満月を抱きしめる。
俺に酷いことをしてきたのは事実だ。
変わることはない。
……でも、俺にとって、たった一人の、大切な弟であることも、変わらない。
「あれ……。兄ちゃん?」
満月が泣き止む頃には、もう俺は視えなくなっていた。
体からの光も消えた。
「……夢?」
満月は立ち上がって、ペットボトルを冷蔵庫にしまいに行く。
『夢じゃないよ、満月』
姿は視えない。
声も聴こえない。
……でも、満月は、俺の方を振り向いて、驚いた顔をした。
確かに目が合った。
そんな気がした。
『……さよなら、満月。……もう、ここには来ないよ』



