念のため一日休んで、土日を挟んで月曜日から学校に行った。
休んでいるあいだ桂からは何度も連絡が来ていたから、そのたびに喜びを噛みしめてしまった。桂は結構心配性で、そんなところも好きだ。
またご飯を作りに行こうかと提案されたけど、すごく心惹かれる提案だったけど、もう元気なのに家に呼んだら反則だろう。
代わりにというか、久しぶりにツイスタグラムへ写真を投稿してみた。腹チラで、元気だよって証明だ。桂が見てるのかわかんないけど。
なんだか久しぶりな気のする学校について教室へ入ると、クラスの男子生徒が僕の方をチラチラと見てきた。普段の存在感が空気なので、それだけでちょっと違和感がある。金曜休んでたからか?
そのあとはやり忘れた宿題や移動教室で忙しくて、朝の違和感も忘れてしまっていた。だから四限の終了を告げるチャイムが鳴ったとき、僕はいつも通り鞄を抱えて多目的室へ向かおうとした。
だが、僕が昼休みに消えようが全く気にしていなかったはずのクラスメイトは今日、なぜか僕の前に立ちはだかった。
「みくるべく~ん、このアカウント、知ってる?」
「……え?」
「いやなんか長野がさぁ、これ三廻部に似てね? って言いだしたんだよ」
長野の肩に腕を置いた山梨が、僕に向かって長野のスマホの画面を見せてくる。あの日のデジャヴのように、そこにはジーナのアカウントが表示されていた。
さあっと、顔から血の気が引く。
「し、知らない」
「そうだよなぁ、三廻部がキショイ女装して投稿なんてするわけないよなぁ。でもなーんか体の線が似てる気がしてくるっつーかさ」
「なあ三廻部、ちょっと腹か鎖骨見せてくれよ。写真でわかるのそこだけなんだよねー」
「い、いやだ……」
二人が僕を挟むようにして迫ってくる。どうすればいいんだろう。振り向く勇気もないけれど、教室中の視線が僕に刺さっている気がする。
「まじでこれ三廻部だったらヤバくね? 裏アカってやつじゃん。フォロワー数何気に多いしさぁ……地味モブくんに衝撃の裏の顔! あははウケる~」
「おい渋るなよ。違うなら見せられるだろ? 男の体なんて俺らだって見る趣味ねーっつーの!」
あとずさるも、机が僕を阻む。ついには山梨に腕を掴まれてしまって、長野が僕のシャツを引っ張った。
正直、見られたとしても特徴的な体型でもないからバレないと思う。しかし似てようが似てまいが、二人は僕が「ジーナだ」と断定してくる気がした。
桂のときだってかなりビビってたけど、こんな人前で、二人がかりで脱がされるなんてひどすぎる。抵抗しても拘束からは抜けられず、ついにシャツの裾が引き抜かれた。
なんで? どうしてこんなこと、されなきゃいけないの……?
「やめて……!」
絞り出した声は情けないほど小さかった。――でも。
「純那!! ……お前ら、何してんだよ!」
彗星のように金色が飛び込んできて、二人を薙ぎ払った。
二年の桂が突然三年の教室に登場したことに、山梨と長野はかなり驚いたようだった。
「いってぇ! って、森苑!?」
「なんだよお前……別にイジメじゃねーよ? これが三廻部じゃないかって、確認したかっただけだから」
「はあっ? 口で聞けよ馬鹿なの? どうせ違うって言われたんだろ? 二人がかりで掴みかかって……どう見ても暴力じゃねーか!」
山梨の言葉に、桂は完全に馬鹿にした口調で応戦した。輩のようにメンチを切っている。見たことのない態度だけど、金髪だからか恐ろしくしっくり来てしまう。
「森苑ぉ……お前年上の前でその態度なんなんだよ」
「三廻部先輩に暴力を振るった人への態度なんてこんなもんですけど???」
山梨は桂に突っかかり、近寄って桂の胸ぐらを掴んだ。お返しのように桂も山梨の胸ぐらを掴み、間近で睨み合っている。
ぼんやりと見てしまっていた僕は、一触即発の雰囲気にハッとして、ようやく声を上げた。
「桂っ、いいから!」
「でもこいつ純那のこと……」
完全にキレている桂は今にも山梨を殴ってしまいそうだ。さすがにそうなったらまずい。
僕は袖口を引っ張って、ようやく桂を引き剥がした。そのまま教室の出入口へと向かう。
「なんなのお前らホモなの?」
「そのアカウントは俺だ! ばーか」
「……桂」
長野が掛けてきた言葉に、桂が謎の返しをする。長野もポカンとして黙ってしまい、僕も声に嗜めるような響きを乗せた。
きっと長野たちは写真を見て「これが森苑……?」となるだろうし、改めて「なわけないだろ」と突っ込むに違いない。ある意味上手く煙に巻いたのか。
休んでいるあいだ桂からは何度も連絡が来ていたから、そのたびに喜びを噛みしめてしまった。桂は結構心配性で、そんなところも好きだ。
またご飯を作りに行こうかと提案されたけど、すごく心惹かれる提案だったけど、もう元気なのに家に呼んだら反則だろう。
代わりにというか、久しぶりにツイスタグラムへ写真を投稿してみた。腹チラで、元気だよって証明だ。桂が見てるのかわかんないけど。
なんだか久しぶりな気のする学校について教室へ入ると、クラスの男子生徒が僕の方をチラチラと見てきた。普段の存在感が空気なので、それだけでちょっと違和感がある。金曜休んでたからか?
そのあとはやり忘れた宿題や移動教室で忙しくて、朝の違和感も忘れてしまっていた。だから四限の終了を告げるチャイムが鳴ったとき、僕はいつも通り鞄を抱えて多目的室へ向かおうとした。
だが、僕が昼休みに消えようが全く気にしていなかったはずのクラスメイトは今日、なぜか僕の前に立ちはだかった。
「みくるべく~ん、このアカウント、知ってる?」
「……え?」
「いやなんか長野がさぁ、これ三廻部に似てね? って言いだしたんだよ」
長野の肩に腕を置いた山梨が、僕に向かって長野のスマホの画面を見せてくる。あの日のデジャヴのように、そこにはジーナのアカウントが表示されていた。
さあっと、顔から血の気が引く。
「し、知らない」
「そうだよなぁ、三廻部がキショイ女装して投稿なんてするわけないよなぁ。でもなーんか体の線が似てる気がしてくるっつーかさ」
「なあ三廻部、ちょっと腹か鎖骨見せてくれよ。写真でわかるのそこだけなんだよねー」
「い、いやだ……」
二人が僕を挟むようにして迫ってくる。どうすればいいんだろう。振り向く勇気もないけれど、教室中の視線が僕に刺さっている気がする。
「まじでこれ三廻部だったらヤバくね? 裏アカってやつじゃん。フォロワー数何気に多いしさぁ……地味モブくんに衝撃の裏の顔! あははウケる~」
「おい渋るなよ。違うなら見せられるだろ? 男の体なんて俺らだって見る趣味ねーっつーの!」
あとずさるも、机が僕を阻む。ついには山梨に腕を掴まれてしまって、長野が僕のシャツを引っ張った。
正直、見られたとしても特徴的な体型でもないからバレないと思う。しかし似てようが似てまいが、二人は僕が「ジーナだ」と断定してくる気がした。
桂のときだってかなりビビってたけど、こんな人前で、二人がかりで脱がされるなんてひどすぎる。抵抗しても拘束からは抜けられず、ついにシャツの裾が引き抜かれた。
なんで? どうしてこんなこと、されなきゃいけないの……?
「やめて……!」
絞り出した声は情けないほど小さかった。――でも。
「純那!! ……お前ら、何してんだよ!」
彗星のように金色が飛び込んできて、二人を薙ぎ払った。
二年の桂が突然三年の教室に登場したことに、山梨と長野はかなり驚いたようだった。
「いってぇ! って、森苑!?」
「なんだよお前……別にイジメじゃねーよ? これが三廻部じゃないかって、確認したかっただけだから」
「はあっ? 口で聞けよ馬鹿なの? どうせ違うって言われたんだろ? 二人がかりで掴みかかって……どう見ても暴力じゃねーか!」
山梨の言葉に、桂は完全に馬鹿にした口調で応戦した。輩のようにメンチを切っている。見たことのない態度だけど、金髪だからか恐ろしくしっくり来てしまう。
「森苑ぉ……お前年上の前でその態度なんなんだよ」
「三廻部先輩に暴力を振るった人への態度なんてこんなもんですけど???」
山梨は桂に突っかかり、近寄って桂の胸ぐらを掴んだ。お返しのように桂も山梨の胸ぐらを掴み、間近で睨み合っている。
ぼんやりと見てしまっていた僕は、一触即発の雰囲気にハッとして、ようやく声を上げた。
「桂っ、いいから!」
「でもこいつ純那のこと……」
完全にキレている桂は今にも山梨を殴ってしまいそうだ。さすがにそうなったらまずい。
僕は袖口を引っ張って、ようやく桂を引き剥がした。そのまま教室の出入口へと向かう。
「なんなのお前らホモなの?」
「そのアカウントは俺だ! ばーか」
「……桂」
長野が掛けてきた言葉に、桂が謎の返しをする。長野もポカンとして黙ってしまい、僕も声に嗜めるような響きを乗せた。
きっと長野たちは写真を見て「これが森苑……?」となるだろうし、改めて「なわけないだろ」と突っ込むに違いない。ある意味上手く煙に巻いたのか。


