家に帰ってツイスタグラムのアプリを開くと、数千件の通知数が目に入ってくる。

「うわっ、なんだこの数字!」

 鍵アカにしてから見たことのない数字に、思わず声を上げてしまった。しかも「いいね」の数に負けず劣らず「コメント」数が多い。ずっとフォローしてくれていた人まで初めて「今回の写真、過去一で刺さった!」とコメントをくれていたりして、思わずにまにましてしまう。

 今回の写真は確かに自分でも自信作だったけれど、ここまで反応が大きいとは思わなかった。
 いつもはベッドの上に座ってだったり、コンクリートの壁を背景に立って写真を撮っていた。ぼかし加工はもちろんしているが、生活感が見えにくいからだ。

 腹チラで写真を撮るときは重力があるため自分で服の裾を持つ必要があり、構図がマンネリ化しがちだったのだ。
 だから今回は思い切って、シーツの上に寝転がって写真を撮った。三脚を傾けたりして上から撮る構図を作るのは大変だったものの、いつもと違う陰影が出て編集もわくわくしたんだよな。

 シーツも敢えて皺のあるままにした。我ながら「これはちょっとだけエロいかも?」と一瞬考えたことは認めよう。しかしこのために少しだけ鍛えている腹の縦線は間違いなく男のもので、「やっぱ気のせいだったわ」と首を振ったのだ。

「あ、ケイゾーさんのコメントみっけ。『ジーナがエロ美しすぎる』だって。はは、エロいのレパートリー謎に多すぎ」

 フォロワーの民度を上げてくれたケイゾーさんはいつも「エロい」と言ってくれるけど、下ネタを投げかけてくることもないから嫌な感じはしない。

「そういえば、桂も今日『エロい』って言ってたな~。って……あれ。もしかして桂がケイゾー?」

 まさかそんなはず、と思うも、名前だけ見れば森苑桂から簡単に連想できる。でも……もしそうだとしたら、わりと初期からの熱心なファンが桂だということになるのだ。ちょっとそれは想像できない。

「ま、まさかね。あはは……」

 その夜はこれまでケイゾーさんから貰ったコメントを読み返し、「まさかね……」を繰り返して眠れなくなった。