光輝の顔を真正面から見つめる羽目になり、背後にあるレモンパイへ体を向けようとしたのだが、その前に光輝がレモンパイが乗ったお皿を手に取った。
そしてフォークでサクサクと一口サイズに切り分けると、それを刺したフォークを俺の前へと差し出す。
「はい、あ〜んして?」
輝く様な王子様スマイルで言う光輝を見て、『本当にゲームの中の王子様みたいだ……。』と思いながら、素直に口を開けた。
その瞬間、口の中に突っ込まれるレモンパイをムシャムシャと食べながら、こういう仲良しこよしはいつまで続くんだろうと考える。
誰もが憧れる様な魅力がある光輝。
特に光輝と同じクラスである、【特進クラス】の奴らなんて、非常に分かりやすく光輝に憧れや好意を見せているし、俺みたいにアホな事に付き合わせたりしないから、凄く付き合いやすいだろうなとも思う。
「……光輝のクラスの奴らってどう?」
随分と抽象的な質問になってしまったが、光輝は気にする事なく、それに答えた。
「俺のクラスの奴ら?……う〜ん、どうだろうね?パッと言われて思い浮かぶ事はなにもないかな。」
「特進クラスは、ハイスペックな凄い奴らばっかりだから、全然こっちとはイメージが違うんだよな〜。選ばれし者達!みたいな……。
────あ、主人公サイドっぽいって言えばわかりやすいかも。勇者パーティー的な?」
途中から今考案中のゲームのネタに飛んで、真剣に考えていると、光輝まで色々考え始めた様だ。
「なるほど……。確かに言われてみれば、そういう雰囲気あるかもね。」
「だろだろ〜?」
特進クラスにいる奴らは、物語の主役の様な、外見も実力もある凄い奴ら。
その中でも、光輝は軍を抜いて凄いヤツ!
だから、光輝は光り輝く選ばれし勇者様だ。
俺みたいなフザケたモブ男とは全然違う……。
なんとなくズンッ!と心が重くなって、全身の力が抜けていくと、光輝がヨイショと俺の体を抱え直して横抱きにしてきた。
体格差のせいで、なんだか赤ちゃんになったような複雑な気持ちになって、眉を寄せる。
「……おいおい、止めてくれよ。この体勢って、赤ちゃんにミルクあげる時のじゃん……。」
「赤ちゃん……いや、もっと良い言い方があると思うんだけど。────ま、いっか。影太はそのままでいい。」
光輝は複雑そうな顔をした後、直ぐに表情を崩して俺の頭に頬ずりしてきた。
その動きは、なんだか低学年の女の子がヌイグルミに頬ずりするのと同じな気がして……心中はとてもとても複雑だ。
……ま、いっか。
そこまで嫌な気持ちはないので、俺はそのまま好きにさせ、残りのレモンパイを食べさせてもらった。
その後は、有り難い光輝の勉強指導を受け、宿題と復習、ついでに予習まで終わらせ、別々にお風呂へ入る……はずが、ここで毎回同じ言い合いが起きる。
「今日こそ一緒に入ろうよ。背中洗ってあげるからさ。────ね?その方がお得だよ。」
光輝は意外と公衆浴場大丈夫派なのか、毎回こうして一緒に入ろうと言い続けてきた。
確かに背中を洗って貰えるのは、メリットがデカいかもしれないが────ここで俺のちっぽけな男のプライドが悲鳴をあげる。
「いやだ。俺は一人で入る。絶対に!」
『こんな男の理想そのものの様な体の隣に、絶対立ちたくない!』
シャッ────!!と、猫の子の威嚇の様に断る俺に、光輝はムッと頬を膨らませた。
「いいじゃん。なんでいつも断るの?全身洗ってあげるんだから、影太はお得しかないよ。
頭も洗ってあげるし、全身のマッサージもしてあげるから。ほら、全部無料だよ。」
「頭……全身マッサージも……?全部無料……。
…………いやいや!そんな誘惑をかけてきても無駄だぞ!嫌なものは嫌だ!」
ギャーギャーと言い合いしながら、軽くポカスカと殴り合いを経て、いつも通り光輝が折れる。
「……仕方ないから諦めるけど、次は一緒に入るから。」
「だから嫌だってば……。中野とかだったら、一緒に入ってもいいけどさ。」
体格にさほど差がない中野なら、『一緒にお風呂に入ろうぜ!』『いいぜ!』と言って、全裸になって我先にお風呂に駆け出す映像が直ぐに浮かぶ。
その時、俺の男のプライドは無反応。
お互いどっちが象さんがデカいかとか、どうでも良いことで言い争う場面も直ぐに想像できた。
しかし光輝は全部デカい。
だから全然勝負にならない俺としては、そんな場面を想像するだけで、なんとなく悔しいというか……情けなさの様なモノがある。
どんなに情けないと言われても、俺はそんな可哀想な負け戦はしたくない!
プンスカ頭から湯気を出しながら、一番風呂は光輝に譲ろうと居間にあるソファーに行こうとしたその瞬間────……。
────ガっ!!
「────っ!!??い、痛っ!!」
突然手首を捕まれ引っ張られると、そのまま壁にドンッ!と叩きつけられた。
掴まれた手首とぶつけた背中が痛くて、ムッ!した俺は文句を言おうと、光輝を見上げたが……そこにあったのは、恐ろしい程『無』の表情をした光輝の顔であった。
「……へぇ〜?中野って、いつも影太にくっついているヤツだよね?そいつとはお風呂に入るのに、俺とは絶対嫌なんだ?…………へぇ〜。」
「??……え、だっ、だってそりゃ〜────……。」
男のプライドに触らないから!……というのも、何か恥ずかしくて俯くと、光輝は手首を掴んでいるのとは逆の方の手で、俺の顎を乱暴に掴む。
「……なんで……?……なんで俺が駄目で、そんな役に立たないヤツの方が良いの?
影太の側にいてもただ黙ってゲームしてるだけの役立たず。……そんなの絶対許さない。」
「……あひょ??」
そしてフォークでサクサクと一口サイズに切り分けると、それを刺したフォークを俺の前へと差し出す。
「はい、あ〜んして?」
輝く様な王子様スマイルで言う光輝を見て、『本当にゲームの中の王子様みたいだ……。』と思いながら、素直に口を開けた。
その瞬間、口の中に突っ込まれるレモンパイをムシャムシャと食べながら、こういう仲良しこよしはいつまで続くんだろうと考える。
誰もが憧れる様な魅力がある光輝。
特に光輝と同じクラスである、【特進クラス】の奴らなんて、非常に分かりやすく光輝に憧れや好意を見せているし、俺みたいにアホな事に付き合わせたりしないから、凄く付き合いやすいだろうなとも思う。
「……光輝のクラスの奴らってどう?」
随分と抽象的な質問になってしまったが、光輝は気にする事なく、それに答えた。
「俺のクラスの奴ら?……う〜ん、どうだろうね?パッと言われて思い浮かぶ事はなにもないかな。」
「特進クラスは、ハイスペックな凄い奴らばっかりだから、全然こっちとはイメージが違うんだよな〜。選ばれし者達!みたいな……。
────あ、主人公サイドっぽいって言えばわかりやすいかも。勇者パーティー的な?」
途中から今考案中のゲームのネタに飛んで、真剣に考えていると、光輝まで色々考え始めた様だ。
「なるほど……。確かに言われてみれば、そういう雰囲気あるかもね。」
「だろだろ〜?」
特進クラスにいる奴らは、物語の主役の様な、外見も実力もある凄い奴ら。
その中でも、光輝は軍を抜いて凄いヤツ!
だから、光輝は光り輝く選ばれし勇者様だ。
俺みたいなフザケたモブ男とは全然違う……。
なんとなくズンッ!と心が重くなって、全身の力が抜けていくと、光輝がヨイショと俺の体を抱え直して横抱きにしてきた。
体格差のせいで、なんだか赤ちゃんになったような複雑な気持ちになって、眉を寄せる。
「……おいおい、止めてくれよ。この体勢って、赤ちゃんにミルクあげる時のじゃん……。」
「赤ちゃん……いや、もっと良い言い方があると思うんだけど。────ま、いっか。影太はそのままでいい。」
光輝は複雑そうな顔をした後、直ぐに表情を崩して俺の頭に頬ずりしてきた。
その動きは、なんだか低学年の女の子がヌイグルミに頬ずりするのと同じな気がして……心中はとてもとても複雑だ。
……ま、いっか。
そこまで嫌な気持ちはないので、俺はそのまま好きにさせ、残りのレモンパイを食べさせてもらった。
その後は、有り難い光輝の勉強指導を受け、宿題と復習、ついでに予習まで終わらせ、別々にお風呂へ入る……はずが、ここで毎回同じ言い合いが起きる。
「今日こそ一緒に入ろうよ。背中洗ってあげるからさ。────ね?その方がお得だよ。」
光輝は意外と公衆浴場大丈夫派なのか、毎回こうして一緒に入ろうと言い続けてきた。
確かに背中を洗って貰えるのは、メリットがデカいかもしれないが────ここで俺のちっぽけな男のプライドが悲鳴をあげる。
「いやだ。俺は一人で入る。絶対に!」
『こんな男の理想そのものの様な体の隣に、絶対立ちたくない!』
シャッ────!!と、猫の子の威嚇の様に断る俺に、光輝はムッと頬を膨らませた。
「いいじゃん。なんでいつも断るの?全身洗ってあげるんだから、影太はお得しかないよ。
頭も洗ってあげるし、全身のマッサージもしてあげるから。ほら、全部無料だよ。」
「頭……全身マッサージも……?全部無料……。
…………いやいや!そんな誘惑をかけてきても無駄だぞ!嫌なものは嫌だ!」
ギャーギャーと言い合いしながら、軽くポカスカと殴り合いを経て、いつも通り光輝が折れる。
「……仕方ないから諦めるけど、次は一緒に入るから。」
「だから嫌だってば……。中野とかだったら、一緒に入ってもいいけどさ。」
体格にさほど差がない中野なら、『一緒にお風呂に入ろうぜ!』『いいぜ!』と言って、全裸になって我先にお風呂に駆け出す映像が直ぐに浮かぶ。
その時、俺の男のプライドは無反応。
お互いどっちが象さんがデカいかとか、どうでも良いことで言い争う場面も直ぐに想像できた。
しかし光輝は全部デカい。
だから全然勝負にならない俺としては、そんな場面を想像するだけで、なんとなく悔しいというか……情けなさの様なモノがある。
どんなに情けないと言われても、俺はそんな可哀想な負け戦はしたくない!
プンスカ頭から湯気を出しながら、一番風呂は光輝に譲ろうと居間にあるソファーに行こうとしたその瞬間────……。
────ガっ!!
「────っ!!??い、痛っ!!」
突然手首を捕まれ引っ張られると、そのまま壁にドンッ!と叩きつけられた。
掴まれた手首とぶつけた背中が痛くて、ムッ!した俺は文句を言おうと、光輝を見上げたが……そこにあったのは、恐ろしい程『無』の表情をした光輝の顔であった。
「……へぇ〜?中野って、いつも影太にくっついているヤツだよね?そいつとはお風呂に入るのに、俺とは絶対嫌なんだ?…………へぇ〜。」
「??……え、だっ、だってそりゃ〜────……。」
男のプライドに触らないから!……というのも、何か恥ずかしくて俯くと、光輝は手首を掴んでいるのとは逆の方の手で、俺の顎を乱暴に掴む。
「……なんで……?……なんで俺が駄目で、そんな役に立たないヤツの方が良いの?
影太の側にいてもただ黙ってゲームしてるだけの役立たず。……そんなの絶対許さない。」
「……あひょ??」

