多分、このシーンだけ見たら、俺が完全なる悪役、そして花園さんが完璧に正しい事を言っているヒロインだと思う。
しかし────何一つ覚えがなさすぎて、俺の頭の中では世にも奇妙なトンチ話になっている!
「あ、あの〜……は、花園さん。」
「────!前はこれを言ったら怒って私を突き飛ばしたんだよね!
凄く怖いけど、私は大事な友達のために謝るつもりはないから!」
とうとうワッ!と泣き出す花園さんを、周りにいる男子生徒達は慰めながら、全員が俺を蔑んだ目で睨みつけてきた。
「マジ最低だよな。図星さされて暴力とか……。」
「花園さんの言う通りだよ。そんなん友達じゃねぇじゃん。」
「人をなんだと思ってんだよ。乞食じゃん、やってる事。」
バシバシとぶつけられる言葉はとても攻撃的で……多分、完全な悪者にされている俺の話は聞いてもらえないと思ったが、一応反論する。
「あのさ、信じて貰えないかもしれないけど、俺は花園さんに嫌がらせなんてしたことないし、光輝の事もそんな風に思った事はないよ。」
とりあえずこの場を収めないと、皆がせっかくの文化祭が楽しめない。
そのため、ちゃんと自分はしてない事を伝えてみたが、花園さんはキッ!と睨みつけてきた。
「どうしてそんな嘘ばかり言うの?
黒井君、もう日野君に酷い事しないでってお願いした時言ってたじゃない。『お前が邪魔だから気に入らない。』って。
それから、私の教科書や体操着が汚されたり私物が失くなったり、疑いたくないけど……。」
「絶対お前が犯人だろ!ちゃんと全部弁償しろよな!」
「花園さんが優しいからって調子にのりやがって!!」
またギャーギャーと騒ぎ出して掴みかかってこようとする男子生徒達を、両手を前に出して落ち着く様に訴える。
「いや、本当に落ち着けって!俺、本当に一つも知らないよ!」
「だったら花園さんが嘘ついてるって事かよ!!この嘘つきがっ!」
怒った男子生徒の一人に、ガっ!!と肩を捕まれ、痛みに顔を歪めると、花園さんが「止めて!」と静止の声を叫んだ。
すると、俺の肩を掴んだ男子生徒は、チッ!と大きな舌打ちをして、手を離す。
一触即発の空気に、クラスメイト達は全員固まっている中、花園さんは静かに首を振った。
「黒井君にとって、日野君への日頃の扱いって普通なんだろうね。
でも、それって誰も普通だと思ってないと思うよ。
だって人を道具扱いするって変だもん。
日野君が、色々と気づき始めたから焦っているんだよね?
『影太は自分を人間だと思ってないんだ。いつも変な遊びに突き合わせられて面倒くさい』『お金もちだろ?って言われて全部自分がお金払っているし、毎日ご飯をタカられている』って、日野君、言ってた。
ねぇ、そんな歪んでいる関係で、本当に友達だって胸を張って言えるの?私はそうは思わない。」
「えっ?こ、光輝がそんな事言ってたの?」
光輝が言ったという言葉を聞いて、ビックリしてしまう。
いつも文句一つ言わずノリノリだったし、お金だって受け取って貰えないし……ご飯も無理やり拉致される勢いで連れてかれてたから。
思わず黙って考え込んでしまった俺を見て、花園さんは密かにほくそ笑んだ。
「うん、光輝君は私にコッソリ相談してくれたよ。
だから、もう洗脳しようとしても無駄じゃないかな。
これからは日野君を頼りにしないで、自分の力だけで生きていける様になった方がいいよ。
それは皆そう。当たり前の事なんだから。」
最後はコテンッ……と首を横に倒して、笑顔を浮かべる花園さん。
その口元は少し歪んでいて……まるでダークサイドに堕ちたヒロインの様だと思った。
「光輝は──。」
『そんな事言わない。』、そう言ってやろうと思ったが……フッ思ったのだ。
『確かに客観的に見れば、俺と光輝の関係って、そう見えるかもな』って。
こういう場合って全否定してもいいのかな?
う〜んう〜んと悩んでいた、その時────……。
「こらぁぁ!喧嘩はここかぁぁぁ!」
教室にダッ!!と駆け込んできたのは、俺達にクラスの担任である<岩田>先生だった。
どうやらクラスメイトの誰かが、直ぐに呼びに言ってくれた様だ。
岩田先生の出現に、男子生徒達はコロッと態度を変え、「遊びに来ただけで〜す。」「もう帰りま〜す。」と言って、笑顔まで見せてくる。
すると、岩田先生はジロジロと男子生徒達を見回した。
「お前ら、全員特進クラスの三年生だろう?
こんな早い時間にわざわざ全員で見に来るなんておかしいぞ。
もしなにか問題起こしたら推薦は即、取り消しだからな?いいな?」
岩田先生が脅す様に言うと、男子生徒達は慌てて首を振って無害アピールをして教室から出ていく。
花園さんも同じ様に出ていこうとしたが、突然俺の方を振り向き、クスクスと笑った。
「じゃあ黒井君、これからは色々考えて行動してね?もう悪い事考えちゃ駄目だよ。
そうしないと……もっと困る事になるかもね。」
上機嫌で教室から出ていった花園さんが見えなくなると、中野や他のクラスメイト達は、『ハァ〜……。』と大きく息を吐き出したのと同時に床にへたり込む。
「?皆、大丈夫か?」
「いやいや、お前の方が大丈夫かって話だよ〜……。
あんなTHE・キラキラ一軍男子達に怒りをぶつけられて大丈夫か?」
中野が椅子に手を掛け立ち上がりながら、俺への気遣いを口にしたが、正直光輝のキラキラに慣れているので、そこまで恐怖はなかった。
「あ、うん。光輝が怒った時の方が怖いから。」
「えっ、あいつ、お前に怒る事あるんだ……。じゃなくて!花園さん怖すぎだろ〜。
だって黒井、言われている事一つも覚えがなかったんだろ?」
「うん。一個も言ってないしやってない。」
人違いだよね?と言いたくなるくらい、語られる全ての出来事に一つも覚えがなかった。
つまり、花園さんはまるで本当にあった出来事の様に、嘘を言っていたという事で……これはちょっとしたホラー映画よりよっぽど怖い。
「……怖すぎるな。」
「おいおい、何があったんだぁ〜?」
走って来てくれたらしい岩田先生は、ハンカチで汗を拭きながら俺達に尋ねてきた。
なんと説明したらいいか迷っていると、女子生徒達がワーワー!と口々に今あった出来事を説明し始める。
すると岩田先生は苦虫を潰した様な顔で唸りだした。
しかし────何一つ覚えがなさすぎて、俺の頭の中では世にも奇妙なトンチ話になっている!
「あ、あの〜……は、花園さん。」
「────!前はこれを言ったら怒って私を突き飛ばしたんだよね!
凄く怖いけど、私は大事な友達のために謝るつもりはないから!」
とうとうワッ!と泣き出す花園さんを、周りにいる男子生徒達は慰めながら、全員が俺を蔑んだ目で睨みつけてきた。
「マジ最低だよな。図星さされて暴力とか……。」
「花園さんの言う通りだよ。そんなん友達じゃねぇじゃん。」
「人をなんだと思ってんだよ。乞食じゃん、やってる事。」
バシバシとぶつけられる言葉はとても攻撃的で……多分、完全な悪者にされている俺の話は聞いてもらえないと思ったが、一応反論する。
「あのさ、信じて貰えないかもしれないけど、俺は花園さんに嫌がらせなんてしたことないし、光輝の事もそんな風に思った事はないよ。」
とりあえずこの場を収めないと、皆がせっかくの文化祭が楽しめない。
そのため、ちゃんと自分はしてない事を伝えてみたが、花園さんはキッ!と睨みつけてきた。
「どうしてそんな嘘ばかり言うの?
黒井君、もう日野君に酷い事しないでってお願いした時言ってたじゃない。『お前が邪魔だから気に入らない。』って。
それから、私の教科書や体操着が汚されたり私物が失くなったり、疑いたくないけど……。」
「絶対お前が犯人だろ!ちゃんと全部弁償しろよな!」
「花園さんが優しいからって調子にのりやがって!!」
またギャーギャーと騒ぎ出して掴みかかってこようとする男子生徒達を、両手を前に出して落ち着く様に訴える。
「いや、本当に落ち着けって!俺、本当に一つも知らないよ!」
「だったら花園さんが嘘ついてるって事かよ!!この嘘つきがっ!」
怒った男子生徒の一人に、ガっ!!と肩を捕まれ、痛みに顔を歪めると、花園さんが「止めて!」と静止の声を叫んだ。
すると、俺の肩を掴んだ男子生徒は、チッ!と大きな舌打ちをして、手を離す。
一触即発の空気に、クラスメイト達は全員固まっている中、花園さんは静かに首を振った。
「黒井君にとって、日野君への日頃の扱いって普通なんだろうね。
でも、それって誰も普通だと思ってないと思うよ。
だって人を道具扱いするって変だもん。
日野君が、色々と気づき始めたから焦っているんだよね?
『影太は自分を人間だと思ってないんだ。いつも変な遊びに突き合わせられて面倒くさい』『お金もちだろ?って言われて全部自分がお金払っているし、毎日ご飯をタカられている』って、日野君、言ってた。
ねぇ、そんな歪んでいる関係で、本当に友達だって胸を張って言えるの?私はそうは思わない。」
「えっ?こ、光輝がそんな事言ってたの?」
光輝が言ったという言葉を聞いて、ビックリしてしまう。
いつも文句一つ言わずノリノリだったし、お金だって受け取って貰えないし……ご飯も無理やり拉致される勢いで連れてかれてたから。
思わず黙って考え込んでしまった俺を見て、花園さんは密かにほくそ笑んだ。
「うん、光輝君は私にコッソリ相談してくれたよ。
だから、もう洗脳しようとしても無駄じゃないかな。
これからは日野君を頼りにしないで、自分の力だけで生きていける様になった方がいいよ。
それは皆そう。当たり前の事なんだから。」
最後はコテンッ……と首を横に倒して、笑顔を浮かべる花園さん。
その口元は少し歪んでいて……まるでダークサイドに堕ちたヒロインの様だと思った。
「光輝は──。」
『そんな事言わない。』、そう言ってやろうと思ったが……フッ思ったのだ。
『確かに客観的に見れば、俺と光輝の関係って、そう見えるかもな』って。
こういう場合って全否定してもいいのかな?
う〜んう〜んと悩んでいた、その時────……。
「こらぁぁ!喧嘩はここかぁぁぁ!」
教室にダッ!!と駆け込んできたのは、俺達にクラスの担任である<岩田>先生だった。
どうやらクラスメイトの誰かが、直ぐに呼びに言ってくれた様だ。
岩田先生の出現に、男子生徒達はコロッと態度を変え、「遊びに来ただけで〜す。」「もう帰りま〜す。」と言って、笑顔まで見せてくる。
すると、岩田先生はジロジロと男子生徒達を見回した。
「お前ら、全員特進クラスの三年生だろう?
こんな早い時間にわざわざ全員で見に来るなんておかしいぞ。
もしなにか問題起こしたら推薦は即、取り消しだからな?いいな?」
岩田先生が脅す様に言うと、男子生徒達は慌てて首を振って無害アピールをして教室から出ていく。
花園さんも同じ様に出ていこうとしたが、突然俺の方を振り向き、クスクスと笑った。
「じゃあ黒井君、これからは色々考えて行動してね?もう悪い事考えちゃ駄目だよ。
そうしないと……もっと困る事になるかもね。」
上機嫌で教室から出ていった花園さんが見えなくなると、中野や他のクラスメイト達は、『ハァ〜……。』と大きく息を吐き出したのと同時に床にへたり込む。
「?皆、大丈夫か?」
「いやいや、お前の方が大丈夫かって話だよ〜……。
あんなTHE・キラキラ一軍男子達に怒りをぶつけられて大丈夫か?」
中野が椅子に手を掛け立ち上がりながら、俺への気遣いを口にしたが、正直光輝のキラキラに慣れているので、そこまで恐怖はなかった。
「あ、うん。光輝が怒った時の方が怖いから。」
「えっ、あいつ、お前に怒る事あるんだ……。じゃなくて!花園さん怖すぎだろ〜。
だって黒井、言われている事一つも覚えがなかったんだろ?」
「うん。一個も言ってないしやってない。」
人違いだよね?と言いたくなるくらい、語られる全ての出来事に一つも覚えがなかった。
つまり、花園さんはまるで本当にあった出来事の様に、嘘を言っていたという事で……これはちょっとしたホラー映画よりよっぽど怖い。
「……怖すぎるな。」
「おいおい、何があったんだぁ〜?」
走って来てくれたらしい岩田先生は、ハンカチで汗を拭きながら俺達に尋ねてきた。
なんと説明したらいいか迷っていると、女子生徒達がワーワー!と口々に今あった出来事を説明し始める。
すると岩田先生は苦虫を潰した様な顔で唸りだした。

