初耳の話だったし、てっきり文化祭に関する会議でもしているのかと思っていたから、俺達は二人揃って驚いてしまった。
俺はキョロキョロと視線を動かし、光輝を探すと……光輝は花園さん達を完璧無視して、手元にある何かの書類の束に目を通している。
よく見れば、他に集まっている人たちも同じ様に書類を見たり、ペンで何かを書き込んだりしていて、どう見ても忙しそうに動いている様だった。
「……?」
なんだかそれに違和感を感じたのは俺だけではなかった様で、中野が神妙な顔で俺にヒソヒソと話しかけてきた。
「花園さん達変じゃね?理由があるかもなんだけど……この雰囲気で喋ってるのって、めちゃくちゃ目立つよな。」
「う〜ん……確かに。」
中野の言葉に頷いていると、突然花園さんと他の男子生徒達が大声で笑い出したため、俺達はビクッ!と大きく肩を震わせる。
多分なにかが面白かったんだと思うが、ちょ〜っとだけこの場に合わないかもしれない。
当事者でもなんでもない、ただ覗いているだけの犯罪者もどきの俺達が、なんとなくヒヤッとし始める空気に焦る。
そうしている間にも笑い続けている花園さん達だったが、やはり大丈夫ではなかったらしく、一人の女生徒が静かに立ち上がった。
長い髪の毛をポニーテールにした、背が高くキリッとした表情。
ゲームの中で例えると、決して人と群れない孤高の女騎士!みたいな、割とクールな印象を与えてくるこの女性は、この学校の副生徒会長、<紗良>さんだ。
「花園さん。悪いけど、やっぱり部外者には帰って貰っていいかな?
ボランティアだって言っていたけど、全然仕事してないし、花園さんも集中できないみたいだから。」
「えっ……?あ、あ……ご、ごめんなさ……っ。」
注意された花園さんは、ジワッ……と涙を滲ませ謝ったが、それで騒ぎ出したのは、周りにいる男子生徒達だった。
「紗良副会長!そんな言い方はないんじゃないですか?花園さんは、場を和ませようとしてくれているのに!」
「そうですよ!仮にも副会長ともあろう者が、後輩に対してそんな辛い当たり方していいんですか?最低ですね。」
「皆、止めて!私が全部悪かったんだから……。」
非難混じりの抗議をギャーギャーと言い出した男子生徒達を、花園さんは子犬の様に震えながら止めようとする。
それを見た紗良副会長は、大きなため息をついた。
紗良さんは今年三年生の副会長を務めている人で、直接話した事はないが、一生懸命生徒達のために動いてくれる人だと聞いている。
今言っている事も、俺としては間違いはない様に思えた。
「マジかよ〜。女子部員達が言ってた話ってもしかして……。」
「……う、うん。」
俺と中野は顔を見合わせ、汗をタラリと掻く。
噂話は自分の目で見て確認してからだと思って軽く考えていたが、実際目の前で同じ様な状況が起きてしまえば、それが本当だったのだと思うしかない。
目の前で、紗良さんを悪く者にして一斉に花園さんを慰める言葉を掛ける男子生徒達を見て、紗良副会長がもう一度口を開こうとしたその時────……。
「いい加減にしてくれないか?その変なパフォーマンスは、学芸会の時に是非披露してくれ。」
一人の男子生徒が、メガネをクイッと上げて静かにそう言うと、部屋の中の空気が更に冷え冷えと凍りついた感じがした。
大きく真ん中分けをしたストレートショートヘアーに、縁のないタイプのメガネ。
切れ長の目は涼しげで、パッと見ると冷たいイメージを抱いてしまう、この男子生徒はこの学校の生徒会長である<国丸>さんだ。
ちなみに、ゲームの中で例えるなら頭脳タイプの魔術師だと俺は思っている。
「国丸会長……。」
「いや、でも!今のは言い方が悪いと────。」
「手伝うなら手伝う。やらないなら出ていってくれないか?
皆、忙しい中集まって仕事をしているんだよ。お喋りは帰ってからしてくれ。」
ズバッ!と言い切るその姿勢は、カッコいい!
俺と中野が二人揃って音が出ない様に拍手をする振りをしていると、花園さんが突然ペコッ!と頭を下げた。
「すみません!手伝いに来てくれた事が嬉しくて、ついお喋りしてしまいました。
皆、ごめんね。私のせいで、怒られちゃって……。」
頭をあげると、今度は取り巻きの男子生徒達へ可愛らしく謝る姿に、全員の目はハートになる。
「いいんだよ〜!俺達は全然気にしてないから!」
「ホント、花園さんってめちゃくちゃ優しいよ。それに比べて……なぁ?」
男子生徒達は、紗良副会長や国丸会長を睨みつけた後、渋々飾り付けの手伝いをし始める。
なんだか、結局花園さんが最後まで謝っていたせいで、すっかり会長コンビが意地悪で花園さん達が『正義』という雰囲気になってしまった。
「なんだか雰囲気わるぅ〜。」
中野がうんざりした顔で呟いたが、俺も同意だったのでコクリと頷いておく。
『凄く遠回しな言い方で、さり気なく相手を落として自分をあげるのが上手いの。
だから私の友達もそのせいで、いつの間にか悪者にされてて……』
先程、女子部員が言っていた言葉を思い出し、思わず頭を抱えてしまった。
……とりあえず光輝はどう思っているんだろう?
心配になって、光輝の方を見ると────無表情!無感情!完全無視!!の完全体である光輝の姿があった。
ただ一心不乱に、書類を読んでは片付けていっている!
「光輝って動じないヤツだよなぁ……。」
俺がボソッと呟くと、中野は光輝を見て渋い顔をしながら「あぁ、ストレスフリーな性格だよな。」と言っていた。
しかし、そんな完全無視の完全体な光輝へ、花園さんはチラチラと視線を送っていて……多分光輝の事が一番気になっているんだと思う。
……チクチク!!
胸を爪楊枝で突かれる様な……なんとも言えない嫌な感じが胸から体中に広がっていく。
光輝が花園さんを好きになって二人が付き合ったら……。
モヤモヤ〜と思い浮かぶのは、勇者の姿をしている光輝が悪の女帝である花園さんに跪いて愛を乞う姿だ。
俺はキョロキョロと視線を動かし、光輝を探すと……光輝は花園さん達を完璧無視して、手元にある何かの書類の束に目を通している。
よく見れば、他に集まっている人たちも同じ様に書類を見たり、ペンで何かを書き込んだりしていて、どう見ても忙しそうに動いている様だった。
「……?」
なんだかそれに違和感を感じたのは俺だけではなかった様で、中野が神妙な顔で俺にヒソヒソと話しかけてきた。
「花園さん達変じゃね?理由があるかもなんだけど……この雰囲気で喋ってるのって、めちゃくちゃ目立つよな。」
「う〜ん……確かに。」
中野の言葉に頷いていると、突然花園さんと他の男子生徒達が大声で笑い出したため、俺達はビクッ!と大きく肩を震わせる。
多分なにかが面白かったんだと思うが、ちょ〜っとだけこの場に合わないかもしれない。
当事者でもなんでもない、ただ覗いているだけの犯罪者もどきの俺達が、なんとなくヒヤッとし始める空気に焦る。
そうしている間にも笑い続けている花園さん達だったが、やはり大丈夫ではなかったらしく、一人の女生徒が静かに立ち上がった。
長い髪の毛をポニーテールにした、背が高くキリッとした表情。
ゲームの中で例えると、決して人と群れない孤高の女騎士!みたいな、割とクールな印象を与えてくるこの女性は、この学校の副生徒会長、<紗良>さんだ。
「花園さん。悪いけど、やっぱり部外者には帰って貰っていいかな?
ボランティアだって言っていたけど、全然仕事してないし、花園さんも集中できないみたいだから。」
「えっ……?あ、あ……ご、ごめんなさ……っ。」
注意された花園さんは、ジワッ……と涙を滲ませ謝ったが、それで騒ぎ出したのは、周りにいる男子生徒達だった。
「紗良副会長!そんな言い方はないんじゃないですか?花園さんは、場を和ませようとしてくれているのに!」
「そうですよ!仮にも副会長ともあろう者が、後輩に対してそんな辛い当たり方していいんですか?最低ですね。」
「皆、止めて!私が全部悪かったんだから……。」
非難混じりの抗議をギャーギャーと言い出した男子生徒達を、花園さんは子犬の様に震えながら止めようとする。
それを見た紗良副会長は、大きなため息をついた。
紗良さんは今年三年生の副会長を務めている人で、直接話した事はないが、一生懸命生徒達のために動いてくれる人だと聞いている。
今言っている事も、俺としては間違いはない様に思えた。
「マジかよ〜。女子部員達が言ってた話ってもしかして……。」
「……う、うん。」
俺と中野は顔を見合わせ、汗をタラリと掻く。
噂話は自分の目で見て確認してからだと思って軽く考えていたが、実際目の前で同じ様な状況が起きてしまえば、それが本当だったのだと思うしかない。
目の前で、紗良さんを悪く者にして一斉に花園さんを慰める言葉を掛ける男子生徒達を見て、紗良副会長がもう一度口を開こうとしたその時────……。
「いい加減にしてくれないか?その変なパフォーマンスは、学芸会の時に是非披露してくれ。」
一人の男子生徒が、メガネをクイッと上げて静かにそう言うと、部屋の中の空気が更に冷え冷えと凍りついた感じがした。
大きく真ん中分けをしたストレートショートヘアーに、縁のないタイプのメガネ。
切れ長の目は涼しげで、パッと見ると冷たいイメージを抱いてしまう、この男子生徒はこの学校の生徒会長である<国丸>さんだ。
ちなみに、ゲームの中で例えるなら頭脳タイプの魔術師だと俺は思っている。
「国丸会長……。」
「いや、でも!今のは言い方が悪いと────。」
「手伝うなら手伝う。やらないなら出ていってくれないか?
皆、忙しい中集まって仕事をしているんだよ。お喋りは帰ってからしてくれ。」
ズバッ!と言い切るその姿勢は、カッコいい!
俺と中野が二人揃って音が出ない様に拍手をする振りをしていると、花園さんが突然ペコッ!と頭を下げた。
「すみません!手伝いに来てくれた事が嬉しくて、ついお喋りしてしまいました。
皆、ごめんね。私のせいで、怒られちゃって……。」
頭をあげると、今度は取り巻きの男子生徒達へ可愛らしく謝る姿に、全員の目はハートになる。
「いいんだよ〜!俺達は全然気にしてないから!」
「ホント、花園さんってめちゃくちゃ優しいよ。それに比べて……なぁ?」
男子生徒達は、紗良副会長や国丸会長を睨みつけた後、渋々飾り付けの手伝いをし始める。
なんだか、結局花園さんが最後まで謝っていたせいで、すっかり会長コンビが意地悪で花園さん達が『正義』という雰囲気になってしまった。
「なんだか雰囲気わるぅ〜。」
中野がうんざりした顔で呟いたが、俺も同意だったのでコクリと頷いておく。
『凄く遠回しな言い方で、さり気なく相手を落として自分をあげるのが上手いの。
だから私の友達もそのせいで、いつの間にか悪者にされてて……』
先程、女子部員が言っていた言葉を思い出し、思わず頭を抱えてしまった。
……とりあえず光輝はどう思っているんだろう?
心配になって、光輝の方を見ると────無表情!無感情!完全無視!!の完全体である光輝の姿があった。
ただ一心不乱に、書類を読んでは片付けていっている!
「光輝って動じないヤツだよなぁ……。」
俺がボソッと呟くと、中野は光輝を見て渋い顔をしながら「あぁ、ストレスフリーな性格だよな。」と言っていた。
しかし、そんな完全無視の完全体な光輝へ、花園さんはチラチラと視線を送っていて……多分光輝の事が一番気になっているんだと思う。
……チクチク!!
胸を爪楊枝で突かれる様な……なんとも言えない嫌な感じが胸から体中に広がっていく。
光輝が花園さんを好きになって二人が付き合ったら……。
モヤモヤ〜と思い浮かぶのは、勇者の姿をしている光輝が悪の女帝である花園さんに跪いて愛を乞う姿だ。

