「まさか、いつも通りに……?」

俺達のカラオケは、アニソンとゲーム曲オンリーで、基本は俺が一人でヤッホ〜イ!と気持ちよく歌っている。
その間、光輝は曲の中に導入されている声優の声担当で、『必殺!バーニングアタッ〜ク!!』やら『負けないでぇ〜!♡』やら、そのストーリーを知らない人が聞いたらアレな声で盛り上げてくれる。
光輝はプロ顔負けの低音イケボイスで、毎回それを決めてくれるので、二人でノリノリで騒ぐのだ。
それをリア充の勇者パーティーでやってしまえば……。

「……ドン引きされた?」

恐る恐る尋ねると、光輝はやはり首を埋めたままブンブンと首を横に振った。

「流行りの曲を一緒に歌わされた。」

「あ、そう……。」

俺の様な陰キャ代表から言わせてもらえば、流行りの曲で盛り上がっている陽キャの集まりなんてどこかの異国の地にいる様な気分になると思う。
異世界に紛れ込んだと言ってもいいかもしれない。
そんな中で合わせられる光輝は、凄い!きっと陽キャの才能&適正ありのはず。

「そういえば、ほら、女子も沢山いただろう?そっちはどんな感じだったんだ?」

勇者ハーレムを支えし、沢山のハーレム女子達!
タイプの違う美少女達は、主人公の旅をより楽しく華やかにしてくれる大事な大事な存在である。
ニコニコしながら尋ねると、光輝は一瞬黙った後、話し始めた。

「……カラオケは人数が多かったから2つに別れたんだけど、何故か俺の方の部屋に男は俺一人だったよ。俺以外、皆、女……。」

「ほほ〜う?そりゃ、凄いな。」

男だったら一度は憧れるリアルハーレム!本当にしゅごい!!
目を輝かせる俺とは反対に、話を続ける光輝の雰囲気は暗い。

「……そしたら全員ジャージを脱ぎ始めたんだ。
下はTシャツと短パンだったから下着ではなかったけど……それに近かったよ。」

「へぁっ!!??」

まるで青年漫画にありそうな展開に驚き、思わず声が上がってしまった。

えっ、脱ぎだしたの……??マネージャー達が全員??

「それからは、入れ替わり立ち代わりずっと両腕に誰かがくっついてきて、殆ど動けなくて……歌は勝手に入れられて無理やり歌わされるし、いつの間にかあったポテトとか飲み物とかも食べさせられそうになったし……。」

「へ、へぇ〜……。」

俺の頭の中は、プリリ〜ン♡と揺れるオッパイで一杯だ!
光輝は既に100歩……いや、一万歩くらい、先に行ってしまったらしい。

「ま、まぁ、そんなのは普通だ、普通!大事なのは、光輝が楽しむ事だぞ!楽しかったんだろ?」

虚勢を張って、さも自分もそういう体験は知ってます風を装ってしまったが、あくまでゲームの中の話のみしか知らない。
ただ、ゲームでも現実でも楽しむという事は前提にあるはずなので、そう尋ねると、光輝は顔をゆっくりと上げ、俺の顔を間近で見下ろす。

「……そうだね。夢が一つ叶って嬉しい。────楽しみだな。」

「は、はぁ……。」

『ハーレムは俺の夢!それが今日叶って嬉しい!』って事??光輝ってば、男の子〜!

オッパイでプリンプリンな自分の頭の中と、殆ど同じと思われる光輝。
大きな共感を得て、俺は大きく頷いた。

「良かったじゃないか〜!羨ましいぞ!このこの〜!光輝は大きい方が好き?やっぱり王道がいいよな!」

俺は巨乳が好き。
だから自分の性癖を正しく口にすると、光輝は直ぐに首を横に振る。

「俺は小さいのが良いから。気にしないで大丈夫だよ。」

「へぇ〜。」

光輝はちっぱい派!よって、俺とは好みが被らない!

これはラッキーラッキー!と内心喜んでいると、光輝は今度俺のちっぱいにすら届かないナイナイな胸元に頬を付けてくる。
それが擽ったくて「うへへへ〜。」と笑うと、光輝はムクッと起き上がり、幸せそうに笑った。

「じゃあ、お風呂に入ろうか。自動で入っているからもう入れるよね。」

「お?……あぁ、そういえば、そんな約束したっけ。分かった。入ろう入ろう。」

早速お風呂に行くため、起き上がろうとしたのだが、それより先に起き上がった光輝に抱き起こされてしまう。
そしてそのまま高い高〜いされる様に持ち上げられて、ちょっと嫌だと思った。

「……おい。流石にこの子供扱いは……。」

「影太って、昔は俺よりこのくらい大きかったのにね。今じゃ、逆転しちゃった。……小さくて可愛いな。」

「はぁぁぁっ!??」

失礼無礼な失言に、ププンっ!と激怒していると、光輝は「ごめんごめん。」と軽く謝りながら、俺を横抱きにする。
突然のお姫様抱っこに、俺の目は点になった。

「あ、あの〜……光輝さん、光輝さん。ちょっと止めてもらえませんか?俺の男のプライドが死ぬので。」

「ん〜……これは影太が慣れるべきじゃない?
だって、ほら……偉い人って常に誰かに運んで貰ったり、身の回りの世話は臣下にやって貰ってるでしょ?移動もこうして運んで貰ってたと思うよ。」

「う〜ん……。」

冷静に言い返される言葉に、少し考え込む。
確かにゲームに出てくる悪役は、総じて『アレやれコレやれ!』と周りに命令しては、身の回りの世話をさせる事が多い。
もしかして魔王レベルになると、そうなのかもしれない。

「そっか。────よし!我が忠実なる臣下の騎士団長よ!我をお風呂場まで運ぶのだ〜。」

偉そうにそう言ってやれば、光輝は凄く嬉しそうに「承知しました。」と言って、そのままお風呂場まで連れて行ってくれた。
光輝の家のお風呂は、この豪邸に相応しき大きなお風呂で、多分10人くらい入っても余裕の広さがあって、だからこそ、寂しがり屋の光輝が一緒に入ろうと言っていたと思われる。

「はい、着いたよ。じゃあ、服を脱ごうか。」