「……また来てるよ、コバンザメ男。マジ気持ち悪よね〜。」
「空気読めよ、キモオタが。釣り合ってないのに、日野君に寄生してんじゃねぇよ、ブサイク。今直ぐ消えろ。」
「ありえなくな〜い?普通、隣に並んだら恥ずかしいとか思わないのかな?引き立て役にもなれないレベルだよww」
笑い混じりにぶつけられる言葉の数々は、今まで散々ぶつけられてきた言葉と全く同じ。
それを聞いて落ち込む────事はない。
寧ろ、悪役っぽくて悪くないと思ってる。
「……クックック。愚かなり、人間どもめぇ〜。」
ノリノリで独り言を呟いてやったものの、ただ、やはり光輝を巻き込むのは良くないとは思っている。
俺はチームメイト達と作戦会議らしきモノをしている光輝を眺め、しんみりとした気持ちになった。
キラキラ……。
キラキラ……。
光輝のいる場所は輝いていて……俺のいる影の様な場所は似合わない気がして、別に周囲の声に賛同するわけじゃないが、俺の世界観に光輝を付き合わせ続ける事が正解かどうか分からない。
「……そうなんだよなぁ〜。」
肩を落としてぼんやりしていると、周りの声は益々大きくなっていく。
『光輝君の邪魔をするお荷物。』
『光輝君の輝く様な人生を曇らせるゴミ男。』
『光輝君の光輝君の光輝君の────…………。』
沢山の声達がグルグルと頭の中を巡ると、突然パッ!と頭の中に浮かんだのは、真っ黒なダークサイドで佇む俺と、光で溢れる中、沢山の仲間たちやヒロイン達と一緒に立っている光輝の姿だった。
俺はこの場所が好き。
だけど、光輝は多分小さい頃、俺が言い放った言葉に縛られ、無理やりこっちにいようとしているだけだ。
『お前を今日から俺の配下にしてやる!
ちょっと外見がガイコツっぽいから、死者を操る不死の騎士団団長に任命してやろう。
よ〜し!正義のヒーロー達をぶっ飛ばすぞ────!!』
違う違う。
光輝は本当は、俺の相棒的な立場の騎士団長じゃなくて、勇者様の方なんだよ。
「そう考えると、幼少期の勇者を魔王が洗脳したみたいな感じになるのかな……。
ストーリー的にはそれはあり……でも現実じゃ逮捕案件……。」
頭の中では、魔王のコスプレをしてノリノリだった俺が、冷静な態度の警察に連行されていき、コンコンと説教される姿が……。
それを想像すると笑いが込み上げ、ブルブルと震えていると、突然背後から女性の話しかけてくる声が聞こえた。
「あの〜……ここ、試合中選手が集まる場所なんです。普通に考えて、部外者がいていい場所じゃなんですけど……。」
「えっ!……あぁ、ごめん!」
慌てて謝りながら振り返ると────そこには絶世の美少女がいた。
長くてサラサラのストレートヘアーは高めのポニーテールに。
大きくてぱっちりした目に、バサバサのまつ毛が生えていて、高い鼻筋と整っている顔立ちは、まるでフランス人形の様だ。
学校指定のダサい赤ジャージすら、最先端ファッションに見えるくらいグッドなスタイルと合わさると、テレビに映っているアイドルがそのまま出てきたのかと思うくらい、圧倒的な存在感を出していた。
「え……え〜と……。」
「私はバスケ部のマネージャーをしている<花園 凛>。今年入ったばっかりだから、日野君と同じ学年だよ。」
ニコッと微笑むその顔は、まるで天使の様。
こんな綺麗な女の子は初めて見たので、思わずまじまじと見つめてしまった。
めちゃくちゃ可愛い子だ!こんな子、いたっけ??
まだ高校に入って三ヶ月も経っていないためか、同級生の顔と名前も知らない人たちも多く、更にバスケ部のマネージャーはとても数が多いため、視線に入らなかったらしい。
ただ、名前を聞いて記憶の端に引っかかったのは、少し前に中野とした会話だった。
『なんかめちゃくちゃレベチの可愛い子が特進クラスにいるらしいぜ。中学生の頃から芸能事務所に何回もスカウトされているとか……。俺も見に行ったけど、レベチ過ぎるだろ〜って感じだった。』
『へぇ〜。そりゃ〜特進クラスの奴らはラッキーだったな。』
可愛い子が同じクラスにいれば、テンションも上がるってもんだ。
素直に羨ましい事を口にすると、中野はポ〜……と顔を赤らめ、天井に向かって祈りを捧げた。
『俺も特進クラス行きた〜い♡可愛い花園さんを毎日眺めながら勉強した〜い!』
そういえば、中野がそんな事言っていた様な……?その時話していた子はこの子か!
納得の可愛さに、ウンウンと頷いていると、花園さんは綺麗な笑顔のまま喋りだした。
「私、中学校の頃から日野君を知っていて……だから、この高校に入ったんだ。
頑張る日野君のお手伝いが少しでもしたいと思って、マネージャーにもなったの。」
「そうなんだ。そりゃ〜光輝も嬉しいだろうな!親友としても嬉しいよ。」
こんな可愛い子が、光輝のお手伝いをしたいと思っている。
それは仲良しこよしの俺としては、とても喜ばしい事だ。
素直な気持ちを口にしたのだが……なぜか花園さんの顔からは笑顔が消えた。
「……日野君、いつも練習も最低限で帰っちゃうし、特進クラスの勉強会とかイベントも全部不参加で帰っちゃうんだよね。
せっかく最高の環境でいい体験ができるチャンスなのに、全部自分からそれを手放そうとしてる……。それって、凄く勿体ないと思わない?」
「────えっ!そ、そうだったんだ。それは確かに勿体ないな。」
今までそんな事は、光輝の口から聞いた事がなかったため、一般クラス同様、『自分たちでガ〜ンバ☆』的な感じかと思っていたのだが……。
直ぐに帰りたがる光輝を思い出し、その無気力さにヤレヤレと肩を竦めてしまった。
花園さんは、そんな俺を見てまたニコッと笑みを見せる。
「『影太とゲームをするから。』『影太のおやつを作るから。』大体の理由はそれなんですけど……。もしかして、無理やり付き合わせてるんじゃないの?
おやつとか、普通同級生の、しかも明らかに自分より忙しい人に作らせないよ。申し訳ないとか思わないのかな?」
「────ハァ???」
とんでもない理由に吹き出しそうになったが、身に覚えがありすぎるため、俺の視線は下へと下がっていった。
勉強しない時は、ダラダラとゲームをしたり、外出しても俺の行きたい場所ばかり。
更に突然始まる魔王と臣下ごっこに、オヤツは毎回光輝の手作り……。
────あ、うん。間違いは一つもないね。
今も手元にあるレモン漬けを見下ろし、苦笑いが漏れる。
そりゃ〜特進クラスのバスケ部のエース様が、俺と同じく暇なわけないじゃん!
「空気読めよ、キモオタが。釣り合ってないのに、日野君に寄生してんじゃねぇよ、ブサイク。今直ぐ消えろ。」
「ありえなくな〜い?普通、隣に並んだら恥ずかしいとか思わないのかな?引き立て役にもなれないレベルだよww」
笑い混じりにぶつけられる言葉の数々は、今まで散々ぶつけられてきた言葉と全く同じ。
それを聞いて落ち込む────事はない。
寧ろ、悪役っぽくて悪くないと思ってる。
「……クックック。愚かなり、人間どもめぇ〜。」
ノリノリで独り言を呟いてやったものの、ただ、やはり光輝を巻き込むのは良くないとは思っている。
俺はチームメイト達と作戦会議らしきモノをしている光輝を眺め、しんみりとした気持ちになった。
キラキラ……。
キラキラ……。
光輝のいる場所は輝いていて……俺のいる影の様な場所は似合わない気がして、別に周囲の声に賛同するわけじゃないが、俺の世界観に光輝を付き合わせ続ける事が正解かどうか分からない。
「……そうなんだよなぁ〜。」
肩を落としてぼんやりしていると、周りの声は益々大きくなっていく。
『光輝君の邪魔をするお荷物。』
『光輝君の輝く様な人生を曇らせるゴミ男。』
『光輝君の光輝君の光輝君の────…………。』
沢山の声達がグルグルと頭の中を巡ると、突然パッ!と頭の中に浮かんだのは、真っ黒なダークサイドで佇む俺と、光で溢れる中、沢山の仲間たちやヒロイン達と一緒に立っている光輝の姿だった。
俺はこの場所が好き。
だけど、光輝は多分小さい頃、俺が言い放った言葉に縛られ、無理やりこっちにいようとしているだけだ。
『お前を今日から俺の配下にしてやる!
ちょっと外見がガイコツっぽいから、死者を操る不死の騎士団団長に任命してやろう。
よ〜し!正義のヒーロー達をぶっ飛ばすぞ────!!』
違う違う。
光輝は本当は、俺の相棒的な立場の騎士団長じゃなくて、勇者様の方なんだよ。
「そう考えると、幼少期の勇者を魔王が洗脳したみたいな感じになるのかな……。
ストーリー的にはそれはあり……でも現実じゃ逮捕案件……。」
頭の中では、魔王のコスプレをしてノリノリだった俺が、冷静な態度の警察に連行されていき、コンコンと説教される姿が……。
それを想像すると笑いが込み上げ、ブルブルと震えていると、突然背後から女性の話しかけてくる声が聞こえた。
「あの〜……ここ、試合中選手が集まる場所なんです。普通に考えて、部外者がいていい場所じゃなんですけど……。」
「えっ!……あぁ、ごめん!」
慌てて謝りながら振り返ると────そこには絶世の美少女がいた。
長くてサラサラのストレートヘアーは高めのポニーテールに。
大きくてぱっちりした目に、バサバサのまつ毛が生えていて、高い鼻筋と整っている顔立ちは、まるでフランス人形の様だ。
学校指定のダサい赤ジャージすら、最先端ファッションに見えるくらいグッドなスタイルと合わさると、テレビに映っているアイドルがそのまま出てきたのかと思うくらい、圧倒的な存在感を出していた。
「え……え〜と……。」
「私はバスケ部のマネージャーをしている<花園 凛>。今年入ったばっかりだから、日野君と同じ学年だよ。」
ニコッと微笑むその顔は、まるで天使の様。
こんな綺麗な女の子は初めて見たので、思わずまじまじと見つめてしまった。
めちゃくちゃ可愛い子だ!こんな子、いたっけ??
まだ高校に入って三ヶ月も経っていないためか、同級生の顔と名前も知らない人たちも多く、更にバスケ部のマネージャーはとても数が多いため、視線に入らなかったらしい。
ただ、名前を聞いて記憶の端に引っかかったのは、少し前に中野とした会話だった。
『なんかめちゃくちゃレベチの可愛い子が特進クラスにいるらしいぜ。中学生の頃から芸能事務所に何回もスカウトされているとか……。俺も見に行ったけど、レベチ過ぎるだろ〜って感じだった。』
『へぇ〜。そりゃ〜特進クラスの奴らはラッキーだったな。』
可愛い子が同じクラスにいれば、テンションも上がるってもんだ。
素直に羨ましい事を口にすると、中野はポ〜……と顔を赤らめ、天井に向かって祈りを捧げた。
『俺も特進クラス行きた〜い♡可愛い花園さんを毎日眺めながら勉強した〜い!』
そういえば、中野がそんな事言っていた様な……?その時話していた子はこの子か!
納得の可愛さに、ウンウンと頷いていると、花園さんは綺麗な笑顔のまま喋りだした。
「私、中学校の頃から日野君を知っていて……だから、この高校に入ったんだ。
頑張る日野君のお手伝いが少しでもしたいと思って、マネージャーにもなったの。」
「そうなんだ。そりゃ〜光輝も嬉しいだろうな!親友としても嬉しいよ。」
こんな可愛い子が、光輝のお手伝いをしたいと思っている。
それは仲良しこよしの俺としては、とても喜ばしい事だ。
素直な気持ちを口にしたのだが……なぜか花園さんの顔からは笑顔が消えた。
「……日野君、いつも練習も最低限で帰っちゃうし、特進クラスの勉強会とかイベントも全部不参加で帰っちゃうんだよね。
せっかく最高の環境でいい体験ができるチャンスなのに、全部自分からそれを手放そうとしてる……。それって、凄く勿体ないと思わない?」
「────えっ!そ、そうだったんだ。それは確かに勿体ないな。」
今までそんな事は、光輝の口から聞いた事がなかったため、一般クラス同様、『自分たちでガ〜ンバ☆』的な感じかと思っていたのだが……。
直ぐに帰りたがる光輝を思い出し、その無気力さにヤレヤレと肩を竦めてしまった。
花園さんは、そんな俺を見てまたニコッと笑みを見せる。
「『影太とゲームをするから。』『影太のおやつを作るから。』大体の理由はそれなんですけど……。もしかして、無理やり付き合わせてるんじゃないの?
おやつとか、普通同級生の、しかも明らかに自分より忙しい人に作らせないよ。申し訳ないとか思わないのかな?」
「────ハァ???」
とんでもない理由に吹き出しそうになったが、身に覚えがありすぎるため、俺の視線は下へと下がっていった。
勉強しない時は、ダラダラとゲームをしたり、外出しても俺の行きたい場所ばかり。
更に突然始まる魔王と臣下ごっこに、オヤツは毎回光輝の手作り……。
────あ、うん。間違いは一つもないね。
今も手元にあるレモン漬けを見下ろし、苦笑いが漏れる。
そりゃ〜特進クラスのバスケ部のエース様が、俺と同じく暇なわけないじゃん!

