ないしょのお願い

ボクの予想通り、圭くんの受験が終わったあとも美月は毎日ここに来た。予想外だったのは、圭くんも一緒に来るようになったということだ。

「ネコさーん、今日はあったかいねぇ」

相変わらず話しかけてくる。

「あのね、私大学合格したの」

「これで一安心だな」

「圭くんの合格発表がまだでしょ」

「自己採点では合格だ」

なるほど、二人ともやるじゃないか。
四月からは晴れて大学生だな。

ふわっとあくびをする。
一気に肩の荷が下りた気がした。

「圭くんが第一志望に合格しますように!」

美月が祈っているのを圭くんはじっと見る。祈り終わった美月は圭くんと目を合わせると、わあっと声を上げボクの方を見た。

「毎日お参りしてるの圭くんにバレた!」

そりゃそうだろう、声に出してるんだから。ていうか、まだないしょにしてたのか。圭くんにはとっくにバレていたというのに。ないしょにしたいなら連れてくるなよ。

ああ、もう、美月はツッコミどころが多いな。

賑やかしい二人(主に美月)を眺めていると、ふいにクスクスと笑い声が聞こえた。そちらに顔を向ける。

『本当に賑やかしい』

その姿も声も、美月と圭くんには見えていないようだ。ボクだけが見えている、この神社の神様だ。

『ご利益はあったようだな』

ふむ、と神様は目を細めて頷いた。

そりゃご利益があってくれないと祈っている意味がない。美月は毎日圭くんが合格するよう祈っていた。圭くんも美月の受験が上手くいくよう祈っていた。そんな二人を応援したくてボクも祈ったのだから。

『ところでこれは秘密なんだが、この神社のご利益に学問成就はないよ。あるのは恋愛成就だ』

クスクスと神様が優雅に笑う。

ん?
な、な、な、なんだってー!