そんなある日、美月はその圭くんとやらを連れてきた。二人共私服だ、今日は休日か。

いつもどおり美月は鈴を鳴らし柏手を打つ。

「神様、こちらが圭くんです。覚えてください」

「何を言っているの、美月?」

「神様に圭くんを紹介してる」

「何でまた……」

「いいの、覚えてもらってるの。ほら、お参りして」

美月に促されて圭くんとやらは静かに参拝していた。そんな様子を美月は満足そうに見ている。

「あ、ネコ」

圭くんがボクに気づいてつぶやく。

「このネコさんはね、いつもここにいるんだよー。近寄っても逃げないの。ねー、ネコさん」

にゃ、と小さく鳴いてやれば美月は嬉しそうに笑った。

「いつもって、美月いつもここに来てるの?」

「はっ!」

笑っていた顔が一変、美月はさーっと青ざめる。オロオロしながらボクに聞こえるだけの声で「ないしょだった」と呟いた。

美月はもしかして天然かドジっ子なのか?
「圭くんの受験が上手くいきますように。医学部合格しますように!」と毎日祈っていることを圭くんに知られたくないんだろう。

それなのに圭くんをここに連れてくるとか、なんでだよとツッコミたくなる。

「えっとーえっとー、そう、ネコさんに会いに来てるんだー。ね、ネコさん」

こら、ボクをダシに使うな。

美月があまりにも慌てているのでそれに付き合ってやった。にゃ、と小さく鳴けば圭くんはふーんと納得した様子。

よかったな、美月。

圭くんは神社の由緒を読んだり摂社と末社にも詣っていた。真面目さが滲み出ている。美月とは大違いだ。