ごはんを食べ終えて洗いものも済ませると、美遥は買い物袋をがさごそと漁った。
「なにしてるんだ?」
「じゃじゃーん! じゃらしを買ってきたよ!」
 美遥はびし! とそれを掲げる。棒に紐がついていて、その先にボールと羽がついている。

「ふざけるな、俺様がそんなものに喜ぶと思うのか」
「まあまあ、やってみようよ」
 左右に素早く振ると、マカロの顔が一緒に左右に動く。ささっと動かしていたじゃらしをピタッと止めた直後、マカロがハシっと飛びついた。

 再びさっと動かすとマカロが追う。
 美遥はにやにや笑いを止められずにさらに動かし、マカロは真剣にそれを追った。

 じゃらしをつかんでカミカミと噛んだマカロは、はっと我に返った。
「き、今日はこれくらいにしておいてやる」
 こほん、と人のように咳払いでごまかす姿がかわいかった。

 そういえば、液状おやつもあげたいけど、いつがいいだろうか。ごはんを食べたあとだと食べ過ぎになりそうだし。
 土日の昼間ならいいかな、と思った美遥は週末が楽しみになった。



 翌日、美遥はお店でバイトの雲井笑子(くもい えみこ)に話しかけられた。彼女はまだ二十代、気が合う上に頼りになるバイトだ。
「店長、なんだかうきうきしてません?」
「わかる? 事情があって猫を預かってて。憧れの猫生活なの」

「いいなあ。写真見せてください」
「写真、嫌がられて撮ってないの」

「嫌がる動物ってけっこういるらしいですね。カメラが目に見えるとかって説を聞いたことがあります」
「そうなんだ」
 実際には宇宙猫だから事情が違うが、美遥は頷いておいた。