「私は瀧内美遥。美遥でいいよ。マカロはなにを食べるの?」
「地球の猫が食べるものなら我々も食べられる。キャットフードというのは完全栄養食だと聞いている」

「おなかすいてる? 今食べる?」
「いただこうか」
 彼がそう言うから使っていない皿にコンビニで買って来たキャットフードを載せて出した。

「もっとこじゃれた感じにできないのか」
「注文が多いなあ。どっかの料理店じゃないんだから」

「下僕のくせに生意気な」
 彼は器用に手でキャットフードを摘まんで食べる。実際の猫にはない動きだが、だからこそなんともキュートだった。

「刺身といううまいものもあるんだろ
う? 明日はそれを献上しろ」
「猫に刺身って良かったっけ?」
「種類によるらしいが。そもそも俺は猫とは違うからな、地球人が食べるものなら食べられる」

「地球に詳しいの?」
「観測するために来ていたから少しは調べた。故障のせいで軌道上から落ちてしまったが」

「地球人の人工衛星とかに見つかったりしないんだ?」
「我らのステルス技術、なめんな」
 口のまわりをべろべろと舐めながら彼は言う。
 その姿を見た美遥はうずうずとして、結局誘惑に勝てずにスマホのカメラを起動してかまえた。

「写真、いいよね?」
「ダメだ」
「ええ……? せっかくなのに」
 美遥はしょんぼりスマホのカメラを切り、唇を尖らせた。