「仕方のない下僕だな。まだしばらくは一緒にいてやる」
「ツンデレ!」

「ツンデレとはなんだ」
「マカロみたいな人のこと言うの」

「イケてるやつってことか」
 マカロはどや顔で言うから、美遥は笑ってしまった。

「笑うってことは違うのか。本当はなんだ」
「内緒」

「下僕のくせに!」
「下僕にごほうびちょうだい」

 マカロに抱き付くと、
「やめろ」
 マカロはぎゅーっと前足で押して美遥を拒絶する。

「そんなことより、またたび酒をよこせ」
「それはだめ」

「ケチだな」
 マカロが不満そうに鼻をひくっとさせた。

「キャットタワー買ってあげるから。そっちのほうが高いけど」
「よくわからんが、今日はそれで勘弁してやる」

 マカロはそう言って片方の前足を差し出す。
 美遥はにっこり笑ってその手をつないだ。

「帰ると思ったからごはんもおやつもぜんぶバーンにあげちゃった。買って帰らないと」
「カツオ風味と鶏肉風味な。おやつは全種類」
「無茶言わないで」
 歩き出したふたりを、初冬の太陽が優しく見下ろしていた。