お皿を持てるならスプーンも持てるのでは、と美遥は目をぱちぱちさせた。今までカトラリーを使いたいと言わなれかったから出していなかった。
 そういえば最初は銃を向けられたなあ、と懐かしく思う。あのときもどうやって持ってるのかな、と思っていた。そんなに前のことでもないはずなのに、かなり時間がたっているように思えてならない。

「うう……おいしそう……」
 バーンはマカロをうらやましそうに見る。マカロはしつこく皿をべろべろと舐めてからバーンに言う。
「いざとなったら下僕が『食べろって命令してきて命の危機を感じて逆らえなかった』って言えばいい」
「名案です!」
「ひどい濡れ衣ぶっかぶせてくるじゃん」
 あきれる美遥の前で、バーンは目をきらきらさせて美遥を見る。

 苦笑した美遥は新しいお皿に液状おやつを出して、スプーンを添えた。
 彼はスプーンを手に取って液状おやつを掬う。
 匂いをかぎ、どろっとしたそれをうっとりと眺めてからペロッと舌で舐めた。
 直後、全身の毛がピーンと立った。耳もしっぽもピーン! と立って目がまんまるに見開かれる。

「おいしい、なにこれおいしい!」
 バーンは夢中になって平らげ、またきらきらとした目で美遥を見た。
「すごくおいしいです!」
 おかわりがほしい、と言いたげなその口調に、美遥は苦笑した。

「うちでは一日に一本までなの。もうダメだよ」
「そうなんですか」
 しょげるバーンはひげまでしょんぼりと垂れる。