「なんというごちそう! またたびまであるなんて!」
「またたびがあるならなんで今まで出してなかったんだよ!」
 バーンは喜んでくれたのに、マカロンは文句を言う。が、そのしっぽはピンと伸びて嬉しそうだ。

 同じ猫でもこんなに違うのかと美遥はふたりをまじまじと見た。
 バーンはマカロを迎えに来たのだろうか。このまま帰ってしまうのだろうか。思いがけず訪れた迎えに、覚悟を決めたはずの胸が痛む。
 だけどマカロを笑顔で見送りたい。
 いざ、もてなしてみようじゃないの! 地球での最高の思い出を作る!

 彼らは本当の猫ではないから酒を飲むこともできる。またたび酒で乾杯をして、食事をつまんだ。
「下僕さんは下僕になってから長いんですか?」
「美遥でいいよ。下僕になったのは最近。マカロの宇宙船が墜落してからだよ」

「先輩、いい人を下僕にしましたねえ」
「まあな」
 マカロは自慢げに刺身をつまむ。しょうゆもわさびもつけていない。

「救難信号が届いてなかったみたいで、マカロ先輩はしばらく行方不明扱いだったんですよ。僕のとこに連絡が来てびっくりしたんです」
「太陽風が悪影響してたみたいだな」
「ふうん?」
 太陽風とか聞いたことあるけど覚えてないな、と美遥は思う。

「恩返しに異世界に連れて行くとかやめてね」
「俺が? お前が恩返しするところだろうが」
「どうして?」
「俺と一緒にいられてお前は幸せだろ」
 美遥は苦笑した。あながち間違っていないから否定ができない。

「おい、猫缶が出てないぞ」
 マカロに言われ、美遥ははっとした。