「お帰りなさい。お邪魔してます」
 礼儀正しくぺこりと頭を下げられて、美遥はきょとんとした。
「どちらさま?」
「おう、帰ったか! バーン、下僕の出迎えなんてしなくていいんだぞ」
 マカロの横柄な声が奥から聞こえる。

「でも……あ、荷物、お持ちしましょうか」
「大丈夫」
 猫の手だと受け取った直後に荷物を落としてしまいそうに見えて、美遥は断った。

「マカロ、勝手に人を呼んだの?」
「ここは俺んちでもあるんだからいいだろ」
 ソファに座るマカロはカクテルグラスにキャットフードを入れて、カクテルを飲むようにちびりとフードを食べた。

「勝手になにやってんのよ」
 いつの間に戸棚を開けられるようになったのか。ダイニングにはキャットフードが散らばっていて、美遥は荷物を床において額に手を当てた。また掃除から始めないといけない。

「すみません、先輩は僕をもてなそうとしてくれて。あ、初めまして、バーンといいます」
「瀧内美遥です」
 挨拶を返し、まずはほうきでちらばったキャットフードを集めた。雑菌などがついている可能性が高いから捨てた方がいいとネットで見たから、もったいないが捨てた。

 先にシャワーを浴びさせてもらい、それから買って来たものを広げる。
 広げられたものに、マカロとバーンは目を輝かせた。

 刺身に猫用鶏肉、猫用ケーキ、またたびなどなど。自分は半額のお弁当だから、マカロたちへのごちそうのほうがお金がかかっている。たくさん買っておいたおかげでバーンのぶんもあってよかった。