ひと気のないそこには、二トンのトラック程度の大きさのマグロのようなものが地面に突き刺さっていた。あちこちから煙が出て、しゅうしゅうと音が鳴っている。
 胴体の一部がぱかっと開いて、光でできた階段が伸びた。中から出て来た何者かがよろよろと降りて来て、地面に到達すると同時にばたっと倒れた。

 美遥はスマホのカメラを起動して、そーっと寄っていく。

 見た目はまるで短毛種の猫だった。大きさはノルウェージャンフォレストキャットくらいだが、あれは長毛種だけだったはず。
「なにこれ……」
 もしかして宇宙船と宇宙人?
 そんなばかな、と思いながらも猫を見る。
 いわゆるサバ白と言われる柄だった。全体的にグレーの縞模様だが手足が白く、靴下を履いているみたいだ。黄色い首輪をしている。

「大丈夫?」
 声をかけると、猫ががばっと顔を上げた。
 その目は金色。鼻先は白く、ピンクの鼻がかわいい。

「にゃああ!」
 叫び声に、一瞬たじろいだ。
 猫は首輪に手を当てて、それからまた口を開いた。

「原住民か! 俺の姿を見たからには生かしておけない!」
 どこから出したのか、銃を構えている。どうやって持っているのかも美遥にはわからない。
「猫がしゃべった!」
 美遥は思わず両手を上げていた。