翌日。美遥は気まずい思いをしながら朝食の支度をしたが、マカロはまったく気にしていないようだった。
 私がこんなに悩んでいるのに。

 悲しい気持ちは次第に怒りへと変わっていく。
 せっかく一緒に暮らしてるのに勝手に出ていくの決めるとか、なくない?
 むかむかしていると、笑子に話しかけられた。

「店長、なんかありました?」
「なんかっていうほどではないけど……同居人が出ていくかもしれなくて」

「いつのまに同居してたんですか? ってか彼氏ですか?」
 にやにやと聞かれて、慌てて手と首をふる。
「違うよ、住むところがないっていうから、しばらく置いてあげることにしたんだけど、情が移っちゃって」
 言いながら、ますます男性のことを言ってるかのようだな、と美遥は慌てて付け足す。
「猫なんだけど」

「猫ですか。そういえば預かってるって言ってましたね。同居人っていうからてっきり」
「ごめん」
 人間みたいな猫だから、なんて言えずに美遥は謝る。

「迷い猫の飼い主が見つかった感じですか?」
「そんな感じ」
「それは悲しいですねえ」
 笑子はうんうんと頷いてまた言った。

「私ならお別れの日まで猫かわいがりしちゃいます」
「そっかあ」
 美遥はため息をこぼした。