コンビニで買ったお弁当が入ったビニール袋を手に、美遥は憂鬱な気持ちで自宅のドアを開ける。
「……ただいま」
「おう、帰ったか。メシくれ」
 玄関から見えるダイニングの奥のソファに、マカロはどでんと座っていた。

「あー、うん……その前にさ」
 玄関から上がった美遥はダイニングテーブルにコンビニの弁当を置くと、マカロの頭を後ろからがしっと捕まえた。
「猫吸いさせて」
「なんだそれは?」
 きょとんとするマカロにかまわず、美遥は彼の後頭部に顔を埋め、すううう! と吸った。

「わわ、なんだ、気持ち悪い!」
 マカロは慌てて逃げて、美遥は恨みがましい目で彼を見た。

「猫吸いは必要な栄養素を補給する大事な作業だよ」
「地球人は猫を捕食するのか!?」

「捕食じゃないよ、吸ってるだけ」
「なにを吸い取るんだ!」

猫分(ねこぶん)。大事な栄養素」
 聞いたマカロは目を真ん丸にして口をかぱーっと開けた。その後ろには宇宙が見えそうだった。

「猫を飼うのは、そんな目的があったのか!? これは危険だ、すぐに母星に連絡を」
「別に命が減るわけじゃないし、ケガもしないし、安全だし」

「そう……なのか?」
「なんていうの、コミュニケーション、心の栄養」

「なんだ、びっくりさせるなよ」
 マカロはほっとした顔で、取り出していた端末を毛皮の中にしまう。
 美遥は目を細めてそれを見た。毎度のことながら、どこにしまっているのだろう。