猫のことを生物兵器と言っていたことを思い出す。
 ライオンや虎も猫型なので、そっちの方が生物兵器っぽく思える。
 猫をいつ投入したのだろう。ライオンたちは彼らの兵器ではないのだろうか。

 聞いてみたい。が、聞いたらめんどくさい説明が帰って来そうで聞きたくない。いや、そもそも彼が説明をめんどくさがってしてくれないかもしれない。
 ライオン型や虎型の宇宙人もいるのだろうか。犬も宇宙から来たと言っていたが、では熊や鳥はどうなるのだろう。

「店長、今いいですか?」
 声をかけられて振り向くと笑子がいた。
「来月のシフトで連休をお願いしてましたけど、大丈夫そうですか?」
「大丈夫。実家に帰るんだっけ?」
「久しぶりに家族に会えるんです」
 嬉しそうに仕事に戻る彼女を見て、かわいいな、と思う。

 そういえば、母星と連絡が取れたということは、マカロも母星に帰るってことだよね。
 朝は驚きすぎて深く考えられなかったが、今更になって美遥は青ざめた。
 マカロと過ごした時間は短い。

 だが、すでにモフモフは美遥の胸に深く刻み込まれている。
 ブラッシングをしたら「ヘタクソ!」と怒られて、練習させてくれな
いと上手くなれないよ、と説得してブラッシングをさせてもらったり。液状のおやつをめぐってバトルをして、結局じゃらしでごまかしたり。またたびを知られたら大変なことになりそうだな、とその存在を言っていないものの、彼にあげてみたい誘惑にかられたり。

 そんなたわいもない記憶が強烈に頭の中をぐるぐると回る。
 美遥は仕事に集中できなくなり、レジを打ち間違えたりお客さんに話しかけられても気付かなかったりとミスをして、落ち込んだ。