「猫にしては巨大。ごまかせると思うけど、大丈夫かな」
「気にするな。最悪は忘れさせればいいだけだ」
「うわあ、怖い発想」
 美遥のつっこみなど気にする様子もなく、マカロはしっぽをぴんと立てて歩く。

「昼寝がしたくなるような陽気だな」
「そうだね」
 ずっと家の中だったから外出が嬉しいのかな、と思う。適当なところで一緒におやつを食べよう。
 これからも一緒にでかけるなら散歩用の紐があったほうがいいだろうか。普通の猫なら紐は必須だと思うが、マカロはそうじゃないから紐なんかつけたら傷付くだろうか。聞くだけでも怒られそうで、どうしようかと考えていたときだった。

 十字路の角から出て来た散歩中の犬と出くわした。
 犬は目をきらきらさせてマカロに近寄り、飼い主が慌てて紐を引っ張った。
 あ、と思ったときには遅かった。

「なんだお前、やるか!?」
 フー! とマカロが毛を逆立てる。しっぽがたぬきのように膨らんでいて、美遥は驚いた。耳を伏せて目はつりあがり、牙を見せて臨戦態勢だ。

「マカロ、落ち着いて」
 慌てて間に割って入ってマカロを抱き上げ……ようとして挫折した。
「重……」
 マカロの重さに、持ち上げることはできなかった。

「こら、ポチ、ダメ!」
 飼い主が慌てて犬を抑えようとするが、犬はなんだかはしゃいでわんわんと吠えている。
 マカロは美遥の手を逃れて木に登り、フー! ウー! シャー! と声にならない声を上げた。

「ほんとすみません。ポチ、ダメだってば!」
 おろおろする飼い主に、美遥は申し訳なくなる。
「大丈夫ですので行ってください。すぐに降りてきますから」
「でも……」