ティッシュをひっぱりだして遊ぶのは禁止された上、前足が届かないところに移動されてしまった。ジャンプすれば届くが、そこまでして遊ぶ気にはなれない。
 母星から持ってきた端末を懐から取り出し、画面を眺める。母星にいる猫たちがあれこれとつぶやいていた。

『ネズミVSトリ、どっちがうまい!?』
『サカナ一択』
『空気読め』
『俺は地球に行ったときに食べた液状のおやつがいい。死ぬ前にもう一度食べたい』
 そんなうまいものがあるのか、とマカロは前のめりになって見た。

『名前を言っちゃいけないあれな。最高だよな』
『中毒患者続出で禁止になった惑星があるってよ』
地球(あっち)では合法だから』
 マカロの目がらんらんと輝く。合法だというなら、ぜひ味わってみたい。

「なあ」
 うきうきと美遥に呼びかけるが、返事はない。顔を上げると無人の部屋はしーんと静まり返っていて、彼のヒゲはしょんぼりと垂れた。
「早く帰って来ねーかなー」
 端末を懐にしまうと、彼は不貞腐れたように丸まった。



 夜。
 遠くから足音が聞こえて、丸くなっていたマカロの耳がぴくっと動いた。
 猫は耳がいい。だからそれが美遥の足音だということがわかってマカロは玄関に行く。
 がちゃ、と玄関の鍵が回る音がして、現れたのはやはり美遥だった。