「今日は帰りが遅くなるから」
「なんでだ」

「友達と約束があって。言っておくけどマカロが来る前からの約束だからね」
「俺のごはんは?」
 ダメ夫みたいなセリフだな、と美遥は思う。

「置いておくから、夜になったら食べて」
 猫は我慢ができないと聞くが、マカロはどうだろうか。猫と一緒にするなと怒るくらいだから、ちゃんと夕飯の時間まで我慢してくれるだろう。ごはんは猫と同じ一日に二回にしているが、それで文句を言われたことはない。

「ちゃんと夜まで我慢できるよね?」
「バカにするな!」
 ぷんすか怒るマカロに、それなら大丈夫か、と美遥はほっとした。

***

 美遥が仕事に行ったあと、マカロは美遥のベッドで横になった。
 ソファでも猫ベッドでも彼には充分な大きさがあるし不都合はないが、人間のベッドのほうが寝心地がいい。

 二度寝から起きたら、皿に盛られたごはんを食べた。
 それからはっとする。これは夜ごはんだと言われていたような。
 まあいいか。帰ったらまたもらえばいいだけだ。

 べろべろと口のまわりを舐めたあとは毛づくろいをして、テレビをつけた。地球人向けの番組はなにも面白くない。
 退屈だな、と思って美遥がかってきた猫じゃらしを持ち出してつんつんとつついてみる。
 が、美遥が動かすとあんなに魅力的だったじゃらしが、今はなにも楽しくない。