「なんて都合のいい道具があるの。未来から来たの?」
「宇宙からだと言ってるだろうが」

「簡単に洗脳できる道具……いくらでも悪さができそう」
「そこらへんの法整備はきちんとできているし、解除の道具もある。地球人と一緒にするな」

「宇宙猫、怖い」
 そもそも宇宙を越えてきたのだから技術は地球人より優れているはずだ。
 人を支配しに来たというが、武力でならあっという間にできるはずなのに、猫を使って懐柔するとは、なんとのんびりした侵略だろう。

「それを私に使わなかったのは? 記憶を消せるんだよね?」
「しばらく地球で過ごすには、事情を知る下僕がいたほうが便利だからな」
「そっか……」
 特別扱いしてくれたわけじゃないんだ、と美遥は落胆した。

「それより早くごはんを出せ」
「はいはい」
 ごはんの催促だけは最速だな、と美遥は苦笑した。



 翌日、金曜日。
 目覚めた美遥は一緒に寝ていた猫の抱き枕が床に落ちているのを見た。
「なんで落ちてるんだろう」
 眠い目をこすり、抱き枕をベッドに引き上げる。

 それからカーディガンを羽織ってダイニングへ行った。冬が近付いているから寒い。そろそろ暖房を入れようか、でもまだ早いだろうか。
「やっと起きたのか。早くメシにしろ」
 催促されて、美遥は顔を洗う間もなくマカロにごはんをあげた。