「やっぱり猫ちゃんいたのね。ここはペット不可ですよ」
「いえ、あの……事情があってですね」
 うろたえる美遥に、マカロは不機嫌そうに髭をピンと上げる。

「俺は猫じゃない」
「猫がしゃべった!?」
「ちょっと黙れ」
 マカロはどこからか銃を出すと、バシュッと奥さんに撃つ。

「なんてことを!」
「意識を飛ばしただけだ。殺してない」
「え!?」
 美遥が奥さんを見ると、奥さんはその場で立ったまま固まっていた。

「で、なんだって?」
「ここはペット不可のマンションなの。だからマカロがいるのがバレるとまずいのよ」
「ペット扱いするな。しかし俺を認めさせたほうが楽だな」
 マカロは銃をしまうと懐中電灯のようなものを出して奥さんに光を浴びせた。

「俺は特別な存在だから公認しろ。住人が文句を言ってきたらお前がなんとかするんだぞ。俺がここにいていい理由はお前が考えること。お前は俺を普通の猫と認識していろ」
 光線を消すと奥さんははっと意識を取り戻し、にっこり笑って美遥を見る。

「入院された方の猫を預かっているのね。いいわ、特別に許可します。かわいい猫ちゃんだものねえ」
 にこにこする奥さんに、美遥は唖然とした。
 そのまま世間話をしてから帰った奥さんを見送って扉を閉めると、マカロに向き直る。