「ひゃっほーい!」
 マカロは再びドタドタと走り回ってティッシュに滑り込む。

「ダメ、走ったら下に響くよ!」
「なんだ、そんな安普請なのか?」
 ピタッと止まったマカロが言う。

「安普請なんてよく知ってるね」
「翻訳機が優秀なんだ」
 首輪を示し、マカロが言う。
 そういえば最初はにゃあ! と叫んでいたな、と思い出す。

 あきらめて部屋を片付けていると、ピンポーン、と音が鳴った。インターホンのモニターを見ると、大家の奥さんが映っている。
「なんでこのタイミング……。マカロ、しばらく隠れてて」
「なんでだよ」
「いいから!」
 美遥は慌てて玄関に行ってドアを開ける。

 お互いに挨拶をしたあと、奥さんが切り出した。
「あなた猫を飼ってる? 鳴き声がしたって連絡があったんだけど」
「か、飼ってないですっ!」
 嘘はついていない。彼は宇宙猫であって、地球の猫ではない。
 そこへ、マカロがとことこと歩いて来た。

「どうした?」
 聞かれた美遥はあんぐりと口を開けた。
 隠れててと言ったのに、どうして来るの!? しかも喋ったし!
 文句はしかし、言葉にならない。

 奥さんがマカロを見ていて、マカロは平然と彼女を見返す。
 万事休した美遥は、ただ冷や汗をかいておろおろしていた。