深まりつつある秋の夜は、空気が澄んでひんやりと心地よい。
マグカップを持ってベランダに出た瀧内美遥は、はーっと息を吐いた。まだそこまで気温が低いわけではないので、息が白くなることはないし、コートを着ていれば充分に防寒できる。
白いマグカップはお気に入りの猫耳つき。中に入っているのもこれまたお気に入りのミルクたっぷりココア。
ひとり暮らしをしている彼女はマンションの三階に住んでいるので、二階建ての多い住宅街では充分に視界が開けている。深夜一時ともなると明かりのついている家も少なく、民家の屋根も公園の杉も、今は黒々と横たわっていた。
見上げた空にはところどころに星が見える。実家のほうではもっと星が見えたのにな、と少し寂しくなった。
「流れ星、見えるかな」
ニュースによると、今夜は流星群が見えるという。
毎日仕事をがんばっているし、今日もがんばってきた。
美遥は大型ショッピングセンターにテナントとして入っている雑貨店に勤めている。チェーン店なのでアラサーにしてすでに店長。接客をしながら若いバイトをしきり、売上や商品の管理などで疲れ果てる。
やってもやっても仕事があるなんて、と思う日もある。仕事がなくなったらイコールで生活できなくなるわけだが、終わった! という区切りがないのはなかなかにしんどい。
「ご褒美に流れ星くらい見たいな。ご褒美っていうなら、猫飼いたい。帰ったら猫のいる生活……きっと素敵」
マグカップを持ってベランダに出た瀧内美遥は、はーっと息を吐いた。まだそこまで気温が低いわけではないので、息が白くなることはないし、コートを着ていれば充分に防寒できる。
白いマグカップはお気に入りの猫耳つき。中に入っているのもこれまたお気に入りのミルクたっぷりココア。
ひとり暮らしをしている彼女はマンションの三階に住んでいるので、二階建ての多い住宅街では充分に視界が開けている。深夜一時ともなると明かりのついている家も少なく、民家の屋根も公園の杉も、今は黒々と横たわっていた。
見上げた空にはところどころに星が見える。実家のほうではもっと星が見えたのにな、と少し寂しくなった。
「流れ星、見えるかな」
ニュースによると、今夜は流星群が見えるという。
毎日仕事をがんばっているし、今日もがんばってきた。
美遥は大型ショッピングセンターにテナントとして入っている雑貨店に勤めている。チェーン店なのでアラサーにしてすでに店長。接客をしながら若いバイトをしきり、売上や商品の管理などで疲れ果てる。
やってもやっても仕事があるなんて、と思う日もある。仕事がなくなったらイコールで生活できなくなるわけだが、終わった! という区切りがないのはなかなかにしんどい。
「ご褒美に流れ星くらい見たいな。ご褒美っていうなら、猫飼いたい。帰ったら猫のいる生活……きっと素敵」



