「なんで!? お前もひっぱるにゃ!」
「痛がってるし、嫌だよ」
 私が断るとルナの口元が不機嫌そうにひくひくした。

「僕が困ってもいいのかにゃ!? 僕がかわいくないのかにゃ!? かわいいだろ!? 僕を助けるにゃ!」
 彼ってこんなんだったんだ。最初とずいぶんキャラが違う。いや、これが本性で猫かぶっていたに違いない……って猫そのものだった。

「ところで、語尾に「にゃ」がつくようになったけど、どうして?」
「そんなことないにゃ……にゃ!?」
 ルナは気が付いたようで、両前足で口を押えた。

「猫化が始まった!? 早く返せにゃ!」
 またしっぽをひっぱるルナに、マロンが体をひいた。
「やめてくれよ、痛いよ!」
「なんで抜けないにゃ!」
 ひっぱるのをやめて、ルナは恨みがましくマロンを見る。

「とりあえず女の子のところにに行ってみようか」
「え!?」
「めんどくさいにゃ」

「ひとりじゃ勇気がでないけど、ってことはよくあるじゃんね。急がば回れだよ」
 私が言うとルナは不満そうに目を細めた。人間なら口をとがらせているだろうな、と思ってくすっと笑った。

「マロン、一緒なら行けるよね?」
「うん……がんばる」
 マロンは自信なさげにそう答えた。